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第64話


side:国王


「これでなんとかなってくれれば良いが………」


 そう余が呟いたのだがそれに反論の言葉が帰ってきた。


「いいえ、これでは駄目です………むしろ事態は更に悪化しました」


「なんと………」


 余の指示で軍部である騎士団を動かす事にしたがより悪い未来になってしまったと言うのか………。


「ハミルトン!直ぐに中止の命令を………」


「貴方がこの事を認識した時点で未来は確定しています。

ですので中止の指示を出しても未来は変わりません………」


「………………ではどうすれば」


 ここまでの事態になってしまっては余にはもうできる事が無い………せいぜい国民を逃がすのが精一杯か………。

そんな我等に女神様は「その事でここへ降りて来たのです」とおっしゃった………。

本当にどうにか出来るのだろうか………いや、女神様の事だ………出来るのだろう。

何せ女神様の中には未来すら見通すお方が居られるのだから………。


「先ず私がここへ降りて来たのはこの事態がどれ程切迫してるのかを認識してもらう為です。

これには大部分が成功と言えるでしょう………」


 確かに危機を認識するにはうってつけの行動であるな………何せ女神様が直接動く等人類が産まれてから2度しか無いのだから………。

1度目は人類史最大と言われる自然災害でそしてもう1つは他世界より来たとされる邪神戦争の時だ。


 1度目の災害の時はこの大地の中心にある大きな山が噴火し近くの村や国は焼かれ他の国には灰が降り注いだと言われておる………それも10年にも渡って………。

この時は女神様達の御力でなんとか壊滅した地域のみに被害が抑えられた為に事なきを得たと言うがあのまま女神様の御力も無く灰が降り注いだら世界は終わっておっただろうと言われておる…………。


 2つ目の邪神戦争の時は自然災害の時よりももっと酷かったと言われておる。

何せ人類の約7割がその邪神の眷属に殺されたと言うのだから………。

その当時の事は資料としてこの国に残っておる。

しかも、それを書いたのはこの国の建国王で余の祖先にあたる初代国王三國みくに連夜れんや様が書かれているのだ。

今のこの世界を知る余達はアレは本当に起こった事なのか疑問を持つ程だが事実として語られておる………。

しかもアレを元に書かれておる本は子供から大人まで読む程の人気のあるモノで余等はアレを読んで育っており余も大変好きでよく読んだ。

アレは何度読んでも心が踊る程…………っと!いかんいかん!思考がズレておる………とにかくそれ程までに女神様自身が動く事は大変な事であると言う事なのだ。


「女神様………今回の事がどれ程のモノかと言う認識はさせて頂きました………それで?我々はどうすれば良いのですか?」


 余の質問を聞いて女神様はその質問を待っていたと………そう告げる程の笑顔をして余等にこう提案した。


「貴方方にはこの世界を救う力を持つ者と接触して頂きたいのです。

そして、その者はここにいるシャルティアが良く知っています」


「まさか………」


「ええ、そのまさかです。

その者の名はフォルテース………いずれ私達の眷属になるか同格の神へと至る可能性のある者です」


「なんと………」


 まさに驚愕だ………他の貴族連中もあまりの事に騒いでおる………。

しかし………フォルテースと言う者には申し訳無いな………報酬を何にするかとか言っとったのに報酬の代わりに厄介事を渡さなければならないのか………。


「……………頼る以外に方法は?」


「ありません」


「……………そうですか」


 どうしょうもない様じゃな………報酬を渋っておった連中も流石に痛ましいモノを見る様な顔をしておる………あ奴等にも良心が残っておったか………。


「お父様………フォルテース様への助成の嘆願には私が参ります」


「駄目だ……それをお主にやらせる訳には行かぬ………」


「いいえ、今回の助成に関しては使者では足りません。

ですので王族でありフォルテース様と面識がある私が向かいお願いするべきです」


「いや………駄目だその役目は余がやる」


「「「「「っ!?」」」」」


 余の言葉にその場に居た貴族達は驚き立ち上がっておる………。

本来王や王族が軽々しく頭を下げるべきでは無いのじゃが報酬を渡すどころか厄介事を押し付けるのだ………コレばかりは余自らが行わなければ申し訳が立たぬ………。

しかし………どうするべきか………………。


「コレだけの事だ………ゴブリンロードの報酬も渡せぬ以上せめて人としての礼儀位は通さねばならぬ………」


「でしたら私も同行します………そして、その報酬には私をお使い下さい」


「何っ!?」


「「「「「姫様っ!?」」」」」


「ですからフォルテース様への報酬は私をお使い下さいと申しております」


「いきなり何を言っておるのだ!?いくら何でもシャルティアを報酬にするなどと!」


「いいえ、それしか無いのですよ。

お父様もお分かりの筈………金や金属はコレから使う道が決まっておいでですよね?食料も必要になる筈です。

領地はフォルテース様の事です必要無いと言われるでしょう。

爵位もいらないでしょうし他に渡せる物が無い以上選択肢など無いのではないですか?」


 確かにその通りじゃ………だが。


「だからと言ってお主を差し出すなど………まるで生贄ではないか………………」


 貴族達も同じ事を思ったのだろう………皆、同じ顔をしておる……………おそらく余も同じ顔をしておるのだろう………。

しかし、そんな余等にシャルティアは満面の笑顔で言って来おった。


「生贄等ではありませんあのお方の元に行くのは聖皇国や帝国へ嫁ぐよりも幸せな事であり私にとってはどんな事よりも嬉しい事なのですから」


「シャルティア………」


「「「「「姫様………………」」」」」


 シャルティアはここまで覚悟を決めているのだ………その覚悟に答えなければ余は胸を貼る事も出来ぬな………。


「すまぬ………お前には辛い思いをさせる………」


「いいえ、フォルテース様とならば私は幸せになれますから」


 その笑顔を余は………余達は忘れられないモノになるだろう………………。



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