第57話
おっさんに頼まれて俺が【空間魔法】のアイテムボックスを使いゴブリン討伐で倒した大量のゴブリンの死体を外へ運ぶ事になったのだが…………俺スキルの反動で動けないんだが?。
それこそ気を失う程のモノは過ぎたのかただ痛すぎて麻痺してるのか、はたまた女神様が気を効かせてその辺を緩和してくれてるのか動かなければ起きていられるのだが………どうしょう。
取り敢えずシャル姫にその事を伝えた………そして気付いたらシャル姫に抱き抱えられて集めたゴブリンの下まで連れて行かれていた………なぜ?。
シャル姫に動くと激痛が来るからと伝えその解決方法として他の狩人達に頼んで持って来て貰いたいと言ったのだが………気が付いたら抱き抱えられていた………なんと言うか……こう…改めて抱き抱えられると気恥ずかしい。
シアに抱えられるのはなんと言うかいつの間にか慣れて来ていたが他の人にこう抱き抱えられるとシアとの違いに意識が行って……こう………分かるだろ?。
とにかく恥ずかしくて仕方無い………しかし、善意でやってくれてるみたいだし恥ずかしいから止めろとは言えない………余り考えない様にしてとっとと終わらせよう………シア早く目を覚まさないかな………。
そうやってシャル姫に抱えられながらゴブリンロードを始め大量にいたゴブリンを一体一体回収して行く………何故一気に回収しないのかと言うと空間魔法のレベルが低い所為かどうやっても一体ずつでしかアイテムボックスに入れる事が出来なかったのだ。
コレは仕方無いと諦め大人しく一体ずつ回収しているのだが………一体何時になったら入らなくなるのだろうか?。
ロードを入れ始めてからすでに100体以上は入れたのだが………て言うか100体から先は面倒になって数えて無いが………それでもまだ入ると何故だか分かるのだ。
そうすると気になるのはコレが普通の事なのかだが気になって周りを視線だけで見ると唖然としている狩人達の姿が見えた………うん、普通じゃないらしい………。
途中で辞めようかとも思ったがここまでやったら今更と思いどうせなら限界まで入れて見るかと考えた………あ、シャル姫に聞いてからにしよう。
「クァ?クゥア?(シャル姫?ちょっと良いか?)」
「何ですか?」
「クアクゥアクックア?(俺の空間魔法ってコレ普通じゃ無いよな?)」
「そうですね……空間魔法は存在している事すら伝説の代物と言われてましたからコレがおかしいのかは判断が付きませんが……少なくとも私は変などとは思いません。
むしろフォルテース様がこんな凄いお方なのだと誇らしい気持ちです」
なんで俺が凄いとシャル姫が誇らしいのか意味が分からないがコレが普通なのかどうかは分からないみたいだ。
そうするとあまり気にし過ぎるのも………と思ったが常に気を付けとくべきだな。
おそらくコレが広まれば戦争の道具にされるとか面倒くさい事になるだろう。
狩人達に見られてる時点で手遅れな気もするが警戒して損はない。
シャル姫は俺を利用しようとかは考えていないみたいだし一応シャル姫は好意的な感じだな。
最悪権力者の力が必要になるかもしれないと考えるとシャル姫とは仲良くしときたい………こんな事考えたくは無かったんだけどなぁ………。
でも、考えなければならない。
それこそ俺だけならどうとでもなるだろう………1人だったら何処へでも行けるだろうし。
けどそれはシアがいない前提だ。
そんなのは寂しいし嫌だ………。
だから……………。
「フォルテース様を利用しようとする人は多く居るでしょうから最悪の場合は私を頼って下さい。
私はそんな事はしないとお約束します………」
「クァ?………(え?………)」
「それ位は少し考えれば分かりますよ?何せこれでも私は一国の姫なのですから」
舐めていた訳では無いが流石はお姫様と言った感じなのだろうか?言葉にすらしていない俺の懸念を察してそれに対しての手を打ってくれると言う事なのだ………ありがたいが。
「クァ?(良いのか?)」
「………正直に言いますとあまり良くは有りません。
おそらくですが大臣や他の家臣達はフォルテース様を取り込めとかシア様を脅して言う事を聞かせろだとかそう言った行動を取るでしょう………ですがそれは私が何もしていなければの話です」
そう何もしていなければ周りはその能力と権利を求めて奪い合う様にちょっかいを掛けて来る筈だ。
その結果俺はシアを守る為に力を振るうだろう………ロードを倒した力を………。
「ですので私を利用して下さい………」
「クァクックア?………(どうしてそこまで?………)」
「理由は色々有りますが1番の理由は単純な事ですよ?」
単純な事?って何だろう?ロードを倒した事か?でもアレは俺が捕まってたシアを助ける為に倒しただけだから理由にされると困るんだが………。
他に思いつくのは今も回収してるゴブリン位だがコレだって他の狩人が倒したモノで俺は殆ど手を出して無い。
理由になりそうな事に心当たりが無いのだが………。
そんな風に理由を考察していたのだがシャル姫から語られた理由に思わず俺は訳が分からずポカンとしてしまった。
「その理由とは………私がフォルテース様をお慕い申し上げてるからです」
「……………クァ?(……………え?)」
「ですから私がフォルテース様をお慕い申し上げてるからです。
好きなんです!」
唖然………えっと?好きって?あの好き?え?ちょっと待って?どう言う事?俺がシャル姫に初めて会ったのは昨日の夜でその前は街の門で見かけただけだ。
話だって昨日の夜初めてしたし………そんな恋愛に繋がる様な事は何も無かった筈だ。
それなのに好き?一体どうなって………あ!そうか!好きって動物みたいに可愛いから好きって事か!なんだ!ビックリした………。
「……………何か納得なさってるみたいですが一応言いますと動物とかが可愛いくって好きとかじゃ無く異性として好きって意味ですからね?」
…………は?マジか!?え!?ますます分からないんだが!何がどうなってそんな事になったんだ!?。
驚愕しか出来ない俺はただ一つだけ頭に浮かんで来た言葉を呟いていた………。
「………クァクゥア?(………これって夢?)」




