第53話
さて、助けるとは言ったが………と言うか俺喋れたよ………。
その事実が気になって仕方ないので取り敢えず俺は自分の手を見た。
そこに有ったのは竜の鱗に覆われた手では無く鱗の無い肌色の人の手だった。
どうやら【強制覚醒】を使った今の俺は人の姿になっている様だ。
…………竜の最上位種と女神様は言っていたので大きな竜の姿になると思っていた。
まぁ、この方が色々と助かるが………。
さて、姿がこれだけ違うと言う事はステータスも相当違いそうだ。
だが、それを確認している余裕は無い………何せ時間制限が迫っているのだから。
俺はロードがシアを持っている方の外側へと歩く積りで動いたのだがまるで瞬間移動するかの様に景色が変わった。
余りのステータスの変わり様にビックリした。
これは気を付けないと下手をするとシアすら傷付けてしまいそうだ………。
とにかく狙い通りの場所には行けたのでそのまま行動するとしよう。
俺は【爪】のスキルを発動しロードの二の腕を切りつけた。
するとロードの腕はシアを持ったまま落ちて来た。
傷付けて腕を使えなくする程度で良かったのだが余りの鋭さに切り落してしまった様だ。
予想とは違いとんでもない結果になったがまぁ良いか………。
俺は【爪】のスキルをもう一度使い爪をしまうとシアが地面に落ちる前に抱えシアを掴んでいる切った腕………いや、斬った腕を引き剥がした。
そしてそのまま俺はシアを抱き上げ【強制覚醒】を使用した場所へと戻った。
「「「「「…………え?」」」」」
「「「「「…………グギャ?」」」」」
何が起こったのか分からない狩人達とゴブリン共から疑問の声が上がった。
まぁ、当然か………何せ今の行動全ては5秒間の間に行ったのだから。
それこそ彼等からしたら一瞬姿が消えて戻って来たらゴブリンロードに捕まっていたシアを抱き上げて現れた様にしか見えないのだから。
「グガァァァァァッ!?」
ロードがようやく自分の腕を失った痛みに吠えた。
それを聞いた狩人とゴブリン達はそちらへ向き何が起きたのか理解出来ず呆けた。
まったく………せっかくのチャンスだと言うのに何時までそうしているつもりなのだろうか………。
取り敢えず彼等に言わないとな………。
「何時まで呆けてるつもりだ!目の前の敵に集中しろ!」
「「「「「………っ!?ウォォォォッ!」」」」」
正気に戻った狩人達はすぐさま剣を構え直しまだ呆けているゴブリンへと攻撃し始めた。
攻撃を受けたゴブリンは大混乱に陥り中には逃げ出す奴までいた。
あっちはもう大丈夫そうだ。
俺は後ろへ振り向きシャル姫に声を掛けた。
「シャル姫、シアの事を………どうした?」
「い、いえ!その!フォルテース……様………でいいんですよね?」
「………?俺じゃ無かったら誰なんだ?」
「いえ………(余りにもお姿が格好良くならられ過ぎです♡………)」
シャル姫が俺から顔を反らして何かを呟いていた………俺もしかして物凄く格好悪くなってるのかなぁ………。
一応転生前はそれなりの見た目だったと思うんだが………いや、転生して竜になってるんだから関係無いか………。
とにかくシアを預けてとっとと決着をつけよう。
「シャル姫、シアの事を頼む」
「は、はい!お任せ下さい!」
「………なあ?………ちょっと良いか?」
その声に振り返るとギルマスのおっさんが居た。
おい……ゴブリンと戦ってる狩人達は良いのかよ………。
と思いながら俺は言った。
「悪いが質問なんかは無しだ。
この姿には制限時間があるんでな。
今は先にやる事が有る」
「1つだけ聞かせてくれ…………勝てるか?」
「あぁ……当然だ」
誇張や油断では無くさっきのシアを助ける際の事を考慮して当然と答えた。
「ふっ………当然か!」
「当然だ………アイツは俺を怒らせたんだからな………」
「なる程な!」
「それよりおっさんはアッチを頼む……」
そう言って俺は暴れまくっている狩人達の方を親指を立てて指した。
それを見たおっさんはその光景を見て………。
「オレ……必要か?」
まぁ、必用無いかも知れないな………。
何せゴブリン共は大混乱に陥っていてただ逃げ惑っているだけだからな………。
と言うか先程までの怒りをぶつけるかの様に鬼の形相もかくやと言った感じの表情で戦って………いや、襲っている………。
先程まで防戦一方で死ぬかも知れないと言う恐怖と戦っていたのだ………余程ストレスが溜まっていたのだろう………。
そんな彼等の姿を見て流石に俺も思った………。
「必用無いかもな………」
実際必用は無いのだろう。
何せ完全に圧倒しているのだから………。
しかもよく見るとその狩人(鬼の形相をしている)達の中にメリアとアルドの姿もあるのだ………それも他を圧倒する程の戦闘力で………。
「まぁ、良いか!俺も暴れたかったしな!はっはっは!」
そう言って笑いながら戦場へと向かって行った。
俺はこれから起こる事を思い浮かべてゴブリン達が哀れに思えた………。
さてと………アッチは完全に気にしないで良いな。
「それじゃあ………行ってくる」
俺は気負わずにシャル姫にそう言った。
「お気を付けて」そうシャル姫が言ったのを聞きながら俺はゴブリンロードの前に(今度は加減を間違えず………)移動した。
「待たせたな………まぁ、待ってはいなかったんだろうが諦めろ………。
何せ、お前は俺を完全に怒らせた……………だからこれはお前が行った事への報いだ」
そう言った俺の言葉を理解しているのかは分からないが奴は怒りの表情で睨み付けて唸っている。
さて、直ぐに終わらせよう………。
そう思いながら俺は自分の爪を伸ばした………。
「さあ………行くぞ!」
「ガッアァァァァッ!」
そう宣言するとゴブリンロードは吠えて襲い掛かって来た。
俺とゴブリンロードとの決戦はこうして始まった………。




