第37話
自分が汗臭い事に気付いたシアが悲鳴を上げ俺から離れて直に部屋を出て行った。
俺はそんなシアが気になり後を追った。
するとシアは下で待っていたメリアに事情を説明しお風呂に入ってる余裕は無いのでせめて身体を拭きたいと話しメリアの了承を得て桶を借りて水を汲みに行った。
部屋へと戻れば昨日借りた桶があるのだがシアはその事を知らないので新たに借りる様だ………まぁ、仮にその事に気付いていても結局は変わらなかったのだが。
それに昨日看病に使ったモノで身体は拭きたく無いだろうしな。
そんなこんなでシアは慌ただしく動き出した。
俺も一旦部屋へと戻った。
「クァ、クックァクァア(シア、俺は下でメリア達と待ってるよ)」
「分かったわ!直に行くから!」
「クァァ(慌てなくて良いからな!)」
「わかったよ!」
それだけを交わし俺は昨日借りた桶を持ち下にいるメリアの元へと向った。
メリアの元に辿り着いたら彼女はため息をついていた。
どうやら2階の声が聞こえていた様だ。
「まったく!忙しないんだから!」
「ク………クァ(何か………スンマセン)」
「別に良いわよあなたが悪いわけじゃ無いのだし………」
そんな感じでシアを暫し待っていると支度の終えたシアが扉を開けて出て来た。
そのままコチラに来ようとして慌てて部屋の方へ戻り鍵を掛けた。
「まったく、慌て過ぎよ………」
確かに………鍵を掛け忘れて慌てて引き返すとか………幾ら何でも慌て過ぎだ。
もしかして緊張でもしてるのだろうか?。
してそうだな………。
この分では何か忘れ物をしてるかも知れないな………確認して置かないと。
「お待たせ!」
「クァクゥア?(忘れ物は無いか?)」
「大丈夫だよ?忘れ物なんて無いよ!」
「………………シア、あなた武器は?」
「……………………あっ!」
少し考えたシアは慌てて部屋へと武器を取りに行った………。
やっぱり忘れ物をしていた………と言うか武器を忘れちゃだめだろ………。
余りにも今日のシアはポンコツ過ぎる………。
どうやら本気で緊張してる様だ………コレは俺が気を付けないといけないな………。
そうしてシアが戻って来るのを待ち俺はメリアと一緒に溜め息をついた………。
「「クァ………(はぁ………)」」
「「……………………」」
「今日はよろしくね…………」
「クァァ………(こちらこそ………)」
「お待たせ!…………2人ともどうしたの?」
「「クァ………(何でもない………)」」
俺達は同時に同じ事を答えた。
そんな俺達を見てシアは「何か私より2人が仲良しな気がする………」とか言っている。
コレは今日は本気で気を付けないといけなそうだな………。
さて!とにかく支度は出来た様なので集合場所である洞窟に向って出発だ!。
俺はシアの持って来た荷物を『アイテムボックス』の中に収納した。
「あなた………空間魔法まで使えたのね…………」
「クァ(あぁ)」
「それって噂のアイテムボックスってやつなのかしら?便利そうね………」
「実際に便利だよ!フォルのお陰でゴブリンナイトの死体をまるまる持ち帰って来れたんだもん!」
「本当に便利そうね………」
「クァクックゥァク(メリア達の荷物も持って行って上げるよ)」
「フォルが荷物持って行ってくれるって♪」
「………良いの?」
「クァ!(任せろ!)」
それを聞いてメリアは少しの間黙り込み考えてからアルドの方を見た。
彼はメリアと視線が合うとコクリと頷いた。
そうしてからメリアは俺を見た。
どうやら決まった様だ。
「あまりこう言う風に甘えるのは良くないのだけれど………お願いするわね」
「クァ!(おう!)」
そうして俺はメリア達の荷物も収納した。
それにしても………シアと比べて随分荷物が多いいのだが…………。
「何かいっぱい持っていくんだね」
「何言ってるのよ……食料に水、テントに寝袋、数日分の着替えに下着、身体を拭く布や怪我をした時の薬武器や防具の手入れ道具にもしも折れた時のサブウェポン………これ位は用意して当然よ?」
「え!?食料とテントそれに最悪予備武器はギルドが用意してくれる筈じゃないの!?」
「用意してくれるわよ………ただし、食料は黒パンと干し肉と水だけ、寝るのは毛布1枚薬や武器に関しては後で報酬から差っ引かれるのよ?……………シア、あなたまさか………………」
メリアの言葉を聞きどんどんと顔が青褪めていった。
ここまで来てようやくシアは理解したのだろう…………自分が何も用意してない事に。
と言うか少し考えれば分かった筈なのだ。
こう言った事には金が掛かり快適に過ごすにはとても色々な準備が必要な事に。
俺は今更ながらに後悔した………この世界の事を何も知らないと言う事でシアに任せっきりにしてしまった………。
その所為で今回の準備不足と言う結果になってしまった………。
俺ももっと考えてれば………そう思いながらシアと一緒に俯いているとメリアが溜め息をついて言って来た。
「しょうが無いわね………今回は特別に私達のテントに来なさい………今回だけ面倒を見て上げるから………」
「…………え?」
「ただし!次からはちゃんとしなさいよね?分かった?」
「……………メリア………うん!ありがとう!」
そう言って目に涙を溜めてシアはメリアに抱き着いた。
抱き着かれたメリアは少し困った顔をしながらそれを受け止めた。
コレは俺も礼を言わないとな!。
「クァッ!(ありがとう!)」
「………どう致しまして」
照れて顔を赤くしながら彼女は嬉しそうにしていた。
そんな俺達を見て笑いながらアルドは頷いていた。
メリア達は本当に優しい人だな。
俺はそう思った。




