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第29話


 ラバルと呼ばれた彼はシアの剣を彼が先日メンテしたのだと親方に怒鳴られていた。

何でそんな事を言ったのか理解出来ないまま彼はポカンとしている。

しかし、そんな彼の態度を無視して親方は言葉を続けた。


「俺はこの剣の前の持ち主を知っててな、この嬢ちゃんはそいつの娘だ。

んでこのヒビは昨日今日のモノじゃねぇんだよ!少なくとも前の持ち主だった嬢ちゃんの父親………俺の親友だった男が使ってた頃は俺がメンテしていた!そん時はヒビ何て入っちゃいなかった!おそらくだが、アイツ………ガーランドが死ぬ原因になった奴が原因で外には見えない形でヒビが入ってたんじゃねぇかと俺は思ってる!。

………ラバル、お前どんな調べ方した!。

まさかただ外から見ただけってんじゃねぇよな!もしそうだってんなら俺はお前を許す事は出来ねぇぞ!どうなんだ!?ラバルッ!!?………」


「その………お……オラ…………」


「ラバル!ハッキリしやがらねぇかっ!」


「………オ…ラ………オラ……………」


 親方の怒りに触れ彼は泣きながら親方とシアに謝りどういった風にメンテを行ったのかを話した。

彼が行った方法は親方の予想通り目で見ただけの簡単なモノだった。

それを聞いた親方は怒りが最頂点に達している様で先程から彼を怒鳴り続けている。


「……………あの、ダグラス叔父さんその辺でそろそろ許してあげて下さい……叔父さんがそこまで私の代わりに怒ってくれたので私はもう良いですから………」


「だがよぉ嬢ちゃん…………下手をしたら嬢ちゃんが死んでたんだぞ?」


「でも、私はここにこうして無事にいるんですから………」


「嬢ちゃん……………分かった。

ラバル!本当ならお前がやった事は絶対ぜってぇ許せねぇ事だ!だが、嬢ちゃんにここまで言わせたんだ次に同じことしてみろ!そいつが許しても俺が許さねぇからな!ラバル!嬢ちゃんに感謝しやがれよ!」


「へいっ!本当に申し訳ありませんでした!」


 そう言ってラバルはシアの前に来て頭を深く下げた。

どうやら普段は真面目な男の様だ。

それはこのシアへの態度を見れば分かる。

それだけに今回の事は残念でならない………。


「さて、嬢ちゃん………コイツが迷惑を掛けた」


「いえ、そんな事は………」


「いや、コイツがちゃんとやってればこんな状態になる前に剣の交換が出来たし何より折れる心配をする事は無かったんだ。

本当にすまねぇ………」


 そう言って親方も頭を下げた。

この件に関して親方は相当責任を感じているみたいだ。

まぁ当然か………何せ自分の所の者が親友の娘であるシアを危険に晒してしまったのだから………。


「んでだ………嬢ちゃん………今回の件の詫びに新しい剣と装備をやるから好きなのを選んでくれ」


「え!?」


「お父さん!?」


「……………っ!?」


「当然代金はいらねぇし嬢ちゃんが出すつっても受け取らねぇぞ。

後その剣を見た目だけ直すって事だったな………そいつもタダでやらせてもらう。

文句は言わせねぇ………コイツは俺のケジメだからな!」


 驚いた………正直そこまでの事をするとは思わなかった。

何らかのお詫びはあるかもとは考えていたがせいぜい剣の修理を無料でとかその辺りだけだと思っていた。

しかし実際はシアの装備一式をタダでくれると言っているのだ………しかも剣の修理もしてくれると言う………。

これが職人の覚悟………いや、矜持なのだろうな。

さて、そうなるとシアは優しいから絶対安い装備を選びそうだ。

しかし、それではまたシアが危険に晒してしまう。

それだけは許せないのでシアに代わり俺が選ぼう………。

さて………どれが良いかな。

そう思い周りを見渡すとある装備が目に付いた。

その装備は軽めの素材にする為に革で作られている物で大きさ的に丁度シアの体格に合いそうだ。

【鑑定】を使っても良いのだが何かをその装備から感じる。

その為俺はその装備から目が離せない………。

とにかくこのままだとシアが安い装備を決めてしまいそうだ………。

そう思い俺はその装備の前に行きシアに向かって声を出した。


「ク、クァ!(シア、コレにしろ!)」


「フォル?」


「どうした?」


「何だか分からないけどフォルがコレにしろって………」


 シアは俺の前にある装備を指した。

すると親方達は驚きながら俺を見た。

何かしたか?そう思い俺は親方を見た。

すると親方は俺の目をじっと見つめて来た。

男と見つめ合うのは趣味じゃないが何だか目を反らしちゃいけないと思い俺は親方の視線を受け止めた。

暫くそうしていると親方は何か納得したみたいに頷いた。


「コイツは家にある奴で一番良い装備だが………嬢ちゃん防具はコイツを持って行ってくれ!」


「お父さん!?」


「お、親方!?」


「………っ!?そんなに良い装備貰えません!」


「いや、貰って貰わにゃ俺の気が済まねえ!それに俺はこのチビ竜がコイツを選んだのを嬉しく思ってるんだ!。

コイツはある理由で家に流れて来た素材でちと特殊なモノだ。

とにかく加工するのに時間が掛かったうえに量が少なかった所為でサイズが女性用のモノしか作れなかった物だ。

そのかわり防御力はピカイチで家にある最高の武器であるアダマンタイトを混ぜて作った剣が通らなかった程だ。

それにコイツを俺は嬢ちゃんに使って貰いてぇと思ってる………」


 そこで親方は言葉を区切り一旦目を伏せてからこう告げた。


「コイツはな嬢ちゃん………お前さんの両親ガーランドとリアの2人が最後に倒した魔物………ドラゴンの素材で作られたモンなんだ」


「っ!?父さんと母さんの………」


「だから俺は嬢ちゃんにコイツを使って貰いてぇ………アイツ等もそれを望んでるだろうからな………」


 親方がそう言い切った所でシアは何かに惹き寄せられるかの様に装備に近付きそっと触れたのだった。



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