第23話
扉を開けて出て来たのはこの宿の女性………たしかメリアだったっけ?。
「何か音がすると思ったら………あなただったのねここで何をしてたの?」
俺は分かりやすい様に身体を動かして訓練をしていた事を伝えたが…………。
「…………何かの踊りかしら?」
俺の訓練は踊りなのか………………。
そう思われた事にショックを受け思わず膝から崩折れてしまった………。
そりゃぁさ……素人の俺だけどさ………ちゃんとやってるんだよ………。
それを見て何か間違えたのだと分かり彼女は慌てている………。
すみません………だめな竜で……………。
「えっと……もしかして訓練だった?………」
「クァ………(うん………)」
「え〜っと………何言ってるかは分かんないけど………ごめんね」
「クァ………(別に良いよ………)」
何と言うか自分の不甲斐なさに溜め息が出そうだ………。
こんなにも話が出来ないのが不便だとは知らなかった。
耳の聞こえない人や声の出ない人が手話等で話してるのを知っていたが本当に凄い事だったと初めて知った。
出来るのであれば今後他の人と話が出来る様に何らかの対策をしよう………そう思った。
「……………ねぇ、質問するから私の考えが合ってたら頷いてくれる?」
「クァ」
返事をしながら俺は頷いた。
「まずは、さっきのは訓練で良かったのかしら?」
「クァ(コクン)」
「そう、それじゃ………シアが一緒じゃないのはあの子に秘密で特訓してるから?」
「クァ(コクン)」
「………見せたくないの?」
「クァ………(コクン)」
「それは強くなって驚かす為?」
「クァ!(ブンブン!)」
「……………もしかして、弱い姿をあの子に見せたくないから?」
「クァ………(コクン)」
「あなたが訓練をするのは自分の為?」
「クァ!(ブンブン!)」
「それじゃ………あの子の為?」
「クァ!(コクン!)」
「そう………」
そう言って彼女は俺の目をじっと見て来た………。
俺は目を反らしてはいけないと感じその目をじっと見つめ返した。
暫くすると彼女は目を閉じ何かを考え出した。
俺は彼女が考え終わるのをただじっと待ち続けた………。
どれ位たっただろうか………1分………10分………もしかしたらもっと長かったかも知れない。
ようやく彼女は考えが纏まったようだ。
彼女が閉じた目を開いた時には空は夜の星空に変わっていた。
「決めたわ………あなたを鍛えてあげるわ………」
そう彼女は言った。
どうやら先程考えていたのはこの事だった様だ。
しかしこれは俺にとってとても助かる事だ。
正直一人でもある程度は訓練出来ると思っていた………。
しかし、現実はそんなに甘く無かった………。
転生する前はただの学生だった俺は格闘の訓練の仕方等全くと言っていい程知らない。
だからそれを知っているプロに教えて貰えるのは本当に有り難い。
俺はこの世界に転生して来てまだ数日だ………それでもこの世界が生きるのに辛い世界なのは分かってる。
そしてそれは俺だけでは無くシアにも言える………。
少なくともシアは今の俺より強い………でもそのシアが危険に晒されたら誰かシアを助けてくれるのか………。
おそらく誰も助けてはくれない………。
だったら俺が強くなってシアを守る!。
俺は彼女を真剣な目で見てからその覚悟で頭を下げた。
「クァ!(よろしくお願いします!)」
「ん!よろしく!………と言っても直ぐに教えられる事は少ないし………予定では明後日にはゴブリン討伐に行くから時間も無いのよね………明日1日だけ教えると付け焼き刃になっちゃうからかえって危ないから………教えるのはゴブリン討伐から帰ってからね?」
「クァ!(それで良いです!)」
出来るならゴブリン討伐に行く前に教えて貰いたいが彼女の言う事も最もだ。
だから俺は明日も出来る事をしておく事にした。
取り敢えず今日はこの後もう少し訓練しようと思う。
「あなた………フォルテースはこの後まだ続けるの?」
「クァ!(コク!)」
「そう………あんまり無理しちゃだめよ?それと出来るだけ静かにね?」
「クァ!(分かった!)」
「それじゃ、私は管理部屋に戻るから何かあったら来なさいね?」
「クァ!クァァ!(おう!ありがとう!)」
「あ!そうそう!1つだけ教えとくわね!魔力を身体や攻撃に纏うスキルが有るから暇があったら練習しときなさい!」
それだけいって彼女は笑顔で宿へと戻って行った。
魔力を纏うか………【魔力操作】と【魔力感知】を持ってるけど………意識して使った事がないから魔力をどう操作したら良いのかとかどう感じたら良いのか分からないんだが………。
取り敢えずそこから始めるか………。
後は訓練の続きだ!先ずは………さっき途中でやって無かった筋トレを目標30回でやってその後は一応【爪】のスキルレベルと【噛み付き】のスキルレベルを上げよう!出来れば【格闘】も………。
後はまだ試してないスキルも試しておこうかな?………。
う〜ん………やる事が多すぎる………。
何処まで出来るか分からないが出来るだけ頑張ってみるか!。
俺はそうして訓練を再開してその日は【爪】と【噛み付き】のレベルを1つ上げて部屋へと戻ったのだった。
そして俺は疲れが出たのか眠気が急激に襲って来て流石にシアと同じベッドで寝るのは不味いと思い床で横になりシアにお休みと声を掛けてから眠りに就いた。




