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第18話


「ごめんね………」


「クァ………(シアが悪い訳じゃ無いよ………)」


 そう、別にシアが悪い訳ではないのだ………。

あの後俺の行動が可笑しかった事をシアは気付いて「どうしたの?」と声を掛けてくれた。

もしかしたら俺の味覚の方がシア達とは違うのかもと思い「クァ………(何でも無い)」とシアに伝えそのまま食事を続けた。

そんな俺を見て疑問に思いながらもシアはパンに手を伸ばした。

そのパンを一口齧った瞬間シアは動きを止めて口の中の物を無理やり飲み込み「………何?これ?」と言った。

これはシアにも予想外だった様だ。

もしかしたらシアが洞窟に来ている間に何かがあって味が変わって仕舞ったのかもしれない。

その後シアは他の料理も一口ずつ食べて持っていたフォークを置いた。

そして俺に謝って来たのだ。


「本当にごめんね………でも、どうしてこんな味になったんだろ?」


 そこは俺も気になった。

シアはここの料理はとても美味しいと自信を持って言っていた。

それなのにこの味である………やはり何かあったのだろうか?。

そう思っているとコック服を来た人が近づいて来た。


「はじめまして………先ずはこんな料理しか出せなかった事に謝罪させて頂きます」


 そう言って彼は頭を下げた。

どうやらそれなりの理由が有りそうだ。


「………謝罪は受け取りました。

それで?どうしてこの様な料理に?」


 シアも俺と同じ気持ちだったのだろう。

俺も同じ疑問を抱いている。

そんな俺の気持ちを察してかシアがその事を聞いてくれた。

すると彼は驚くべき事を口にした。


「………言い訳にしか聞こえないでしょうが実は私達が仕入れている食材が本日入荷出来なかったのです………。

お世話になっている商人の話ではこの街の殆どの食材は近くの都市から仕入れているのですがその都市が3日前から魔物による襲撃を受けているそうで……現在その都市は防衛戦の只中の為仕入れ等が一切出来ないとの事で………仕方なく別の街に仕入先を変更したとの事でした。

しかし、その場所は何時もの都市とは違い距離があってこちらに戻って来るのが明後日以降になって仕舞うとの事です。

現在この街ではこの事態を解決する為に領主様が他の都市に救援を求めて連絡を取っておられるそうです。

それまでは今ある食材でどうにかするしか無く…………この様な料理しかお出し出来ず。

本当に申し訳ありません………」


 なる程………恐らくだがこの街は湖の中に作られた都市の為農地等が少なく元々の自給率が低いのだろう。

その為普段は他の都市から食材等を購入して暮らしているのだろう。

そして今回その供給を行っている都市が緊急事態になった事で食材が枯渇してこの様な料理になってしまったのだろう。

これは仕方ない………。

腕だけでどうにか出来る範囲では無くなって仕舞っている。

そうなると残念だ………食材が問題なく入荷出来ていればシアが言っていた様にここの料理は美味しいかったのだろう。

俺の力で何とか出来るのならばするのだがこれについてはどう仕様も無い………。

本当に残念だ………。


「事情は分かりました。

その様な事態ではどうする事も出来なかったと思います………。

ですのでどうかお気になさらず………」


 シアはそう彼を慰めている。

それを聞いて彼は悔しそうな顔で頭を下げ続けた。

彼は本当のプロなのだろう。

この悔しそうな顔は自分の料理に対する自信とプライドがあってそれを誇っていてこんな料理しか出せなかった事が悔しくて堪らないのだと思う。

本当にどうにかしてあげられないだろうか………。

そう思って俺は考えた………しかし、現状どうにか出来る目処が無い。

料理に関してはある程度は出来る。

前世では一人暮らしをしていた為それなりに作って暮らしていた。

それこそ時間のある時は出来るだけ凝った料理を作っていた程だ。

何か出来ないだろうか?。

そう考えて俺はシアにある提案をした。


「クァ、クァクァアァァ?クァァ………(シア、この店に残っている食材を見せて貰えないか聞いてくれないか?もしかしたら何か作れるかも知れないから………)」


「フォル?………えっと、店の食材?見せて欲しいの?」


「クァ!(そう!)」


 俺の言葉を聞いて………って、そう言えばシアは言葉が分かるって言っても片言でしか理解出来ないんだった。

まあ、伝えたい事は伝わったから良いか。


「………お客様?一体何を言って?…………もしや貴女は獣魔の言葉を理解されておいでなのですか?」


「はい、と言っても私の場合フォルの言葉だけでしかも片言でしか理解出来てませんが………」


「いえ、それでも凄いですよ」


「ありがとうございます」


「それで?この子は何と言ってるのですか?」


「この食堂にある食材を見せて欲しいみたいです………ね?」


「クァ!(おう!)」


「食材を?………一体何故?」


「もしかしたら何か作れるかもってフォルは言ってます」


 そう言われて彼は少し訝しんだ目をして俺を見ていた………。

突然こんな事を言われれば仕方ない。

彼はプロだ。

そんな彼が突然素人………それも魔獣の俺に食材を見せて欲しいと言われたらバカにされているのではと考えてもおかしく無いと思うのでその視線に耐えシアに俺の事を説明して貰うのだった………。

説明をお得た後彼は目を瞑り暫くの間考えるとその目を開き俺にこう言って来た。


「まだ少しだけ信じられませんが………もし、それが本当でしたら是非お願いします………」


 と言って頭を下げた………。

さて!それじゃあ!残ってる食材でどんな物が作れるか食材を見て見ようか!。



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