第162話
「……………なんだよコレ………」
「……………うそ……」
「うぇぇ………」
俺達はギルドの訓練場として使われていた部屋へと入ったのだがそこはまさに魔窟だった………。
良く分からないガラスだと思われる素材で作られた縦に置かれたカプセルがズラリと部屋を詰め尽くすかの様に並びその中には何らかの液体に漬けられたゴブリンやオーク、ウルフや巨大な蝙蝠等様々な魔物がホルマリン漬けの標本の様に入っている。
そのケースの下からは配線と思われる太いコードが部屋の奥へと伸びている。
「なぁ……おい………俺は何時から映画の世界に入り込んだんだ?………」
「ガゥ………ガルルガゥ………ガゥゥ………(英人………言いたい事は分かる………けどコレは現実だよ………)」
そう言ってる俺自身がこの状況を受け入れ出来てないが何時までも現実逃避は出来ない………。
まぁ………俺よりも受け入れられていないのがいるんだけど………。
「メリアさん?大丈夫ぶですか?」
「え、ええ………」
「シアさん?シャルティアさん?」
「……………え?あ、うん?………」
「……………………」
「ガゥ?(シャル?)」
「あ、はい………大丈夫………大丈夫です…………」
あ〜、はい、全然大丈夫じゃありませんね。
さて………いい加減現実を見よう………。
この施設どう見ても………。
「なぁ……コレどう見ても実験施設だよなぁ…………」
「そうだね………それ以外ある?」
「ん〜………博物館?…………」
「「「「ガウ〜(無いわ〜)」」」」
俺達向こうの世界出身には映画では馴染みのシーンだからこう言う感想………と言うか反応が出来るがそれでも今のこの世界からするとなんと言うか場違い過ぎだと思ってしまう………。
さて、問題はこの施設がどんな実験をしていたのかだが…………。
「ガウガルルガゥガッガルル………(コレどう考えても魔物の合成実験施設だよな………)」
「「「「合成実験施設?」」」」
「ガ〜………ガウガルルガゥガッガルルルガウ………(あ〜………簡単に説明すると2つ以上の魔物を掛け合わせて1つの新しい魔物を作る所って感じかな………)」
「?………掛け合わせる?それって子供を産ませるって事?」
「あ〜………シアさん、それは凄く穏健なやり方になるかな………それよりもココはもっと過激だと思うよ………」
「?………過激?」
「えっと………シアさんが言ってるやり方って所謂自然交配ってやり方で基本同じ遺伝子を持つ種同士でしか出来ないやり方で私達が言ってるのは違う遺伝子を持つ種同士を人工的に無理矢理くっ付けて1つの新しい命を生み出そうってやり方なんだよ………」
「無理矢理?それってゴブリンとかオークとかの様に種族の違う相手に子供を産ませるって事?」
「う〜んと……そうじゃなくて………私達人の場合は女性には子供になる卵が身体の中に有ってそれに男性の子供の種を貰って身体の中で育てるの………。
だけどココのは親となる種の身体の中で子供を作るんじゃ無くてその卵と種を身体の外で1つにして新しい命を作ってるの………」
「身体の外で?。
う〜ん………良く分からない………」
ですよねぇ〜………コッチの人には人工授精だとか体外授精だとか言われても分かる訳無いよね。
試験管ベイビーだとかそう言ったのは向こうみたいに科学技術が発展して無いと分かる訳が………………。
「ガゥ………ガルル………ガルガルルガゥガッ?………(なぁ………英人………俺、今、スッッッゲェェェ嫌な事を思いついたんだが?………)」
「奇遇だな………俺も同じ事思ってると思うぞ?………」
「奇遇だね私もかな?………」
「右に同じく………」
「「「「…………………」」」」
黙り込んだお互いの顔には同じ結論に達したと思われる表情が浮かび上がっていた………。
それはあの白衣の女は俺達と同郷か俺達の世界に近い科学文明が発達した世界から来た人なのだと………。
(こりゃ………一筋縄じゃいかなそうだ………)
そんな風に新たな事実に困惑する俺達だった………。




