第159話
「ガルゥ………(ココも何も無しっと………)」
そう言って俺は6つ目の部屋から出た。
この部屋も他の部屋と同じで机と椅子と羽根ペンとインクだけの何も無い部屋だった。
おかげと言うか何と言うか………部屋に入って直ぐに調べるのが終わるのは楽で助かる。
「ガゥ、ガルル……(それじゃ、次の部屋へ行きますか……)」
「そうね」
「はい」
「…………」
「ガウ?(シア?)」
「……………え?あっ!ゴメン!なに?」
部屋を出た辺りから何だかぼ〜っとしてたみたいだな。
どうしたのだろうか?。
「シア?何かぼ〜っとしてたみたいだけれどどうかしたの?」
「えっと………何だか怖くなってきて………」
どうやらここに来て急に恐怖を感じる様になった様だ………。
しかし、何が切っ掛けになったのだろうか?。
「さっきまでは平気そうにしてたわよね?」
「うん………」
「ならどうして?」
「メリアの話を聞いてた時はあんまり気にしてなかったんだけど………実際に見てみてたら昔お母さんが話してくれた昔話を思い出しちゃって………」
「昔話?あぁ〜アレね………」
「うん………」
どうやらメリアにはその話に思い当たるモノが有るらしい。
「メリアは知ってるんだね……」
「当然よ………私とメリルそして、アルドはその話の生き残りだもの」
「え?……そうだったの?」
どんな話かは分からないが今の状況から連想される話ってなると多分いい話じゃ無いんだろう………。
「確かに似てるかもしれないわね………丁度良いから話しとこうかしらね………」
「メリア………」
「大丈夫よ。
さて………アレはまだ私とアルドが10でメリルが4つの時だったわ………当時の私達はその辺の村に居るごく普通の子供で家の手伝いで畑の野菜の世話をする時以外は遊び回っていた本当にただの子供だったわ………」
そう言ってメリアはココではない何処かを見るかの様に上を見上げた後そのままかたりだした。
「あの日も私達は家の手伝いで畑の世話をしていたわ………。
何時もの様に畑の世話を終えた私達は村の子供達同士で集まって遊んで日が暮れる前に家へと帰ったわ。
私とメリルとアルドは家が隣同士で何時も一緒に居たのよ。
あの日もアルドの両親が帰って来るまで私の家で遊んでいたのよ………。
所がその日は家に帰っても母さんが居なくてもしかしたら水でも汲みに行ったのかな?何て思っていたのよ………。
でも、日が暮れて周りが暗くなっても帰って来なかったの………畑の仕事をしていた父さんも………」
そこまで言ったメリアは一旦そこで何かを呑み込む様に黙り込みそんなメリアの肩にアルドは労る様に手を置いた。
その手にメリアは手を重ねてアルドへと微笑んでから前を見て続きを話し始めた。
「そして、帰って来なかったのは私達の両親だけでは無くアルドの両親も帰って来なかったのよ………。
何が起きているのか子供の私達にはまったく分からなかったわ………。
もしかしたらアルドの家に居るかもって考えて3人でアルドの家にも行ったわ………。
けれど……そこにも誰も居なかったわ………。
どうして良いのか分からなくなった私達はとにかく3人で一緒に居たのよ………。
その日はまったく眠れないままアルドとメリルの3人で一夜を過ごしたわ………。
そして、朝になった私達は両親達が帰って来るのを待ちながら家に有った食べ物を食べて過ごしたわ。
お昼になっても両親達は帰って来ずこのまま待ち続けても良いのか………そんな疑問が浮かび上がったわ………。
でも、メリルを怖がらせない様に必死にそれを隠してたわね………。
夕方になってもそれは変わらず夜を過ぎて両親が帰って来なくなってから遂に2日目の朝を迎えたわ………。
もちろん不安でいっぱいの私達はその日も眠れ無かったわね………。
そして、またお昼になった………。
このままじゃ駄目だと私達は両親を探す事にしたわ………。
まずは病気の時以外は何時も世話をしていた畑へと向かい両親を探したわ………。
けど、そこには期待とは裏腹に誰も居なかったわ………。
そこに居てもしょうが無いとそのままの足で村中を探したわ………。
けど、そこには両親は愚か誰も居なかったの………」
そう言った途端メリアは震えを抑えるかの様に自分の身体を抱き締めた………。
どれだけ怖かっただろうか………。
この話を聞いただけの俺ですらかなりの恐怖を感じている………。
それをアルドとメリアそしてメリルは体験しているのだ………。
ん?ちょっと待てよ?メリアとメリルは姉妹でアルドは幼馴染でメリアとメリルとアルドは幼い頃に両親を亡くしてて………って!んじゃ!武器屋の父親は誰だよ!?。
話の腰を折りたくは無いがスッんゲェ気になる!。
そう思ってメリアを見ると俺の事を見て何かを察したらしくそのメリアはその視線をそのままシアにも向けてから「2人が考えてる事は直ぐに分かるわよ」と言ってそのまま続きを話始めた。
スッげぇ気になるが後で分かると言うのだ取り敢えず今はこの話の続きに集中しよう………。
「村にも誰も残って無いと分かった私達は取り敢えずその日はアルドの家へと戻りその日をやり過ごしたわ。
翌日私達は食べ物と少しのお金を持って村を出て近くの町を目指したわ。
道中は特に何も起きずに私達は町へと辿り着いたわ。
直ぐに門番に立ってた人に村の事を伝えたわ。
その後直ぐに領主様が動いてくれて私達を保護してくれてその後、村を調べてくれたわ。
けれど……何も分からずにその調査も終わったわ………。
今なお調査は続けられているけどそれでもまったく何も出てこないわ………。
ちなみに私とアルドはその後狩人として登録してまだ幼かったメリルは父の友達だった人に預けたのよ」
つまりは今もメリア達の村で起こった事については何も分かっていないって事の様だ………。
だが、その話と今回の件についてどう似ているのだろうか?。
皆もそれは同じ気持ちらしくメリアを見るとメリアはこう言った………。
「似ているのよ私の村もこの部屋と同じ様に人が生活していた痕跡すら見当たらなかったのよ………」
それを聞いた俺は何か得体の知れないモノに背中を撫でられたみたいな感覚を感じた………。
そして、俺は知らず知らずの内にコレから調べる予定の扉へと身体を向けてその場でブルリと震えたのだった………。




