魔竜転生〜俺は人間を目指す！〜

第144話

side：真島《ましま》 英人《えいじ》

「うおっ!?危ねぇ!?」

「キャッ!?何アレ!?気持ち悪いよ！」

「何だよ！ソレ！気持ち悪《わり》ぃ物《もん》を出してんじゃねぇよ！」

「はっはっはっ！コレは私が開発したこの世界特有のローパーと言う魔物から生み出した生体兵器で名前は考えている所なんだが【ウーパーくん】とかどうだろうか？」

　そんな事を白衣の袖口から触手を生やして俺達の魔法や剣を防ぎながら口にして来た。

それにしてもあの袖口から出てる触手だがたぶんムチの意味を示す【ウィップ】と魔物の【ローパー】を掛けての名前なのだろうが………。

「無いな………」

「安直過ぎ………」

「可愛く無いかな？………」

「もう少し捻って欲しかったですわ」

「そうですね……あのネーミングセンスですから想像力が低い方なのでは無いでしょうか？クレア様」

「まぁ……残念な方なのですね………」

「ちょっと!?それはいくら何でも酷過ぎないかな！君達！」

　俺達のそんな感想を聞いて白衣の女は叫んだ。

ちなみにその間も攻撃の手は緩めていないのだがそれすらも防がれている………。

このままでは何時まで経ってもコイツを捕まえる何て出来ない！。

せっかく勇斗《ゆうと》………今はフォルテースか………アイツが俺達を頼ってくれたって言うのに！。

そんな思いが焦りとして出て俺の攻撃は乱雑になって行く………。

「焦り過ぎだ！エイジくんだったわね！少し下がって落ち着きなさい！」

「でも！」

「でもじゃないわ！アナタだけで済むのなら何をしてもいいわよ！けど！今はアナタのミスで周りの皆まで巻き込むのよ！理解しなさい！」

「っく……分かりました………」

　分かっちゃいるんだがどうにもこの焦りを抑えられない………。

その理由は単純だ………。

勇斗《フォルテース》が俺を頼ってくれたから………。アイツがまだ人として俺達と居た頃俺を含めて結構な奴が勇斗《ゆうと》に救われている。

その中でも俺と麻耶《まや》は何度もアイツに助けられた。

例えば短絡的で乱暴者の俺がいつもの様にバカやって親と仲違いしててそん時に麻耶《まや》を遠ざけてた時が有ったんだがそん時に俺達の仲を持ってくれたのが勇斗《ゆうと》だった………。

麻耶《まや》なんかは何度もクソな男共から助けられてるし鈴原（可憐《かれん》の事）何かはストーカーだとかそう言うのからも助けられてる。

そんな訳で俺達は勇斗《ゆうと》に何度も救われている………。

その恩を返す前にアイツは刺されて死んじまった訳なんだが………。

そんな溜に溜まった恩をようやく少しは返せると思ったのだが………。

目の前の白衣の女が意外と強くて（早く捕まえないと………）と焦りを抑えられない………。

しかし、先程から沸き上がってくるこの不安感というか何と言うか………。

どうしてそんなモノが沸き上がってくるのか分からない………

（それこそ不自然な程…………っ!?）

　俺はある１つの可能性に強い恐怖を感じた………。

それを確かめる為に俺は唯一１つだけ使える【ブレイブハート】と言う魔法を発動した。

この魔法は恐怖や恐慌と言った心へと働きかける状態異常に対しそれを打ち払う事の出来る魔法だ。

そして、それを発動した瞬間俺の中でずっと続いていた焦りが一気に消えた。

それを確認した瞬間俺は叫んだ。

「鈴原っ！コイツ精神干渉系のスキルか魔法を使ってる！」

「っ!?」

　俺の言葉を聞いて驚いた後直ぐ様それを解除し干渉させない為の魔法の準備に入った。

それを見た白衣の女は………。

「おや？気付かれましたか………」

　その言葉と共に白衣の中に手を入れその胸元から有名な絵画ムンクの叫びの顔部分のみを切り出して立体的にした様な物を取り出した。

先程まで何も音が聞こえて来なかったのにその奇っ怪な物を取り出した途端それからなんとも言い辛い気持ち悪い音が聞こえて来た。

「コレは元々はちょっと不快になる程度の音を出す魔物だったんですけどね。

色々なそう言った能力を持つ魔物と掛け合わせて行ったら人の精神に直接作用する音を出す様になりましてねぇ。

例えば………」

　そう言って頭の天辺辺りを２回ほど指先で叩いた瞬間聞こえていた音が変わった。

一体何をそう思った瞬間俺は自分の手が震えている事に気付いた。

いや………腕だけじゃ無い………足も……身体も……全身が震えるていた………。

それだけでは無く腹の奥から不快なモノが上がって来て今にも吐きそうだ。

それは俺だけでは無く鈴原《可憐》や麻耶《まや》やクレア達も口元を押さえていた。

それでも鈴原はその不快感を無理やり抑え込みつつ魔法の詠唱を続けていた。

「おや？コレも耐えますか……ふむ………アナタ面白いですねぇ………」

　そう言いながら気持ち悪い笑みで鈴原《可憐》を見始めた。

俺は咄嗟にそんな白衣の女と鈴原《可憐》の間に陣取った。

「ふひっ♪いいですねぇ♪この音の中で動けるとは♪アナタも良いですよ♪あぁ〜♪アナタ方を材料にしたらグラトラスも更に良いモノになりそうですねぇ♪」

　その言葉であのグラトラスと呼ばれる化け物の素材が人である事が確定した。

ただでさえ見た目でそうでは無いかと思っていたが間違いなかった様だ。

「狂ってやがる………」

　俺は思わずそう呟いていた………。

それは俺だけでなくこの場にいる全員が感じているモノだった………。

それを聞き女は笑いながらこう言った。

「狂ってるですか♪最高の褒め言葉ですねぇ〜♪」

　いつの間にか鈴原《可憐》の魔法によりあの不快な音の影響は消えていたが俺の震えが止まることは無かった………。

それが理解出来ないモノを見た恐怖から来たモノ何かはたまた女の狂気に怯えたのかは分からないが俺は心底この女は危険だと理解したのだった………。

こんな女を生かしたまま捕まえろとか………。

勇斗《フォルテース》少しだけ恨んでも良いか？………。

俺はそんな事を思いながらそんな女と対峙するのだった………。