第141話
「う〜ん………やっぱり作成時に融合させる過程で変質しているのが原因なのだろうか?………出来上がった後に確認すると基になったモノの記憶と呼べるモノは全て消えていて皆無だし……その上基礎となる知識や知性まで無くなっているからか生まれたばかりの時はケモノの様な行動しかとらないし………………」
ブツブツと背後で呟く声が聞こえる………。
その内容はどう聞いても微笑ましいモノでは無い………。
本当ならそんな不穏な事を呟いている相手を放置しておきたく無いのだが………。今はそちらに構っている余裕は無い………。
何故なら俺達の目の前には背後で呟かれている奴の命令で襲い掛かって来る化け物が居るのだから………。
そして、後ろから聞こえて来る内容から俺達の目の前にいる10人の人間を無理やりくっ付けたかの様な化け物………いや、おそらくその通りくっ付けたのだろう。
そんなグラトラスと言う化け物を放っておける様な状況では無いのだ。
「…………………アルド、今の見えた?」
「…………………いや、見えなかった………メリアは?」
「私も同じよ………」
この2人の会話からあの化け物の動きは2人には見えなかった様だ………。
(つまりは他の皆にも見えて無いだろうな………)
俺の考えは正しいだろう。
何故ならメリアとアルドはこの中で最も実力の有る人達なのだから。
そんな、声が聞こえたからなのかピクリと化け物が動き………。
「クアッ!クゥア!(皆っ!避けろ!)」
俺は咄嗟に叫んでいた。
しかし、それは一歩遅く………。
「ギャアァァァァ!?…………」
そんな叫びが左側から聞こえて来た。
そこには本来3人の騎士が居た筈なのだがその叫びを聞き慌ててそちらを見るとそこには2人しか居なかった………。
そして、先程まで化け物が居た場所から騎士を挟んだ反対側には先程化け物が突っ込んだ時と同じ様に建物の壁に穴が空きそこからモクモクと土煙が立ち上っていた。
「全員今すぐにその場から動けぇぇぇ!?」
「「「「「っ!?」」」」」
その声と同時に全員が動き出した。
そして、化け物も同時に動き出した。
「「っ!?」」
そんな短い呼吸と共にシアとシャルの横を化け物が通過して行った。
危なかった………もう少し反応が遅れていたら2人は化け物に殺られていただろう………。
そんな風に安堵していたのだがアルドの叫びが聞こえた。
「動きを止めるな!止まれば狙い撃ちにされるぞ!」
「「っがぁぁぁぁあっ!?………」」
そんな叫びを肯定するようにシア達が避けた事で安堵して止まってしまった騎士2人を化け物が襲った。
このままではジリ貧だ!。
そう思った俺は直ぐ様化け物へと【火球】で攻撃をした。
しかし、俺の攻撃は遅すぎると言わんばかりに化け物は再び動き出し動きを止める事無く動いていた麻耶ちゃん達の間を通り抜けた。
そして通り抜けた先でまた民家に突っ込み壁に穴を開け土煙を立ち上らせていた。
そんな、土煙の中へと俺は再度【火球】を放った。
それをあざ笑うかの様に土煙の中から化け物が飛び出し………。
「ギッ…………」
そんな短い悲鳴を残しまた1人騎士が殺られた。
化け物の動きが早すぎて攻撃が当たらない!。
ダメだ!今のままじゃ!。
そんな焦燥と共に俺は打開策を必死になって考えた。
(奴の動きが見えているのは俺だけだ!………今は動き回っているから何とか避けられているがこのままじゃいずれ動きが止まり………)
「ウギャァァァァ!?………」
また1人騎士が殺られた!。
何とかしないと次は!………。
次はシアかもしれない………。
あるいはシャルかも………。
メリアやアルド………可憐や麻耶ちゃんやもしかしたら英人かもしれない………。
ダメだ…………………ダメだ!ダメだ!ダメだ!。
そんなのは絶対にダメだ!。
何か!何か無いのか!この状況を打開策方法は!。
俺は動き回りながらそんな焦りの中に居た………。
そんな俺に今もあの白衣の女の呟きが聞こえている。
「う〜ん………動きが直線的過ぎますねぇ………パワーは有りますのにそれを従前に活かせないとは………やはり知能がケモノ風情にまで落ちるとダメですね………」
ケモノ……………ソレだ!。
俺は白衣の女の呟きからその閃きを受け直ぐ様行動した。
(焦るな!………焦って失敗したんじゃ意味が無い!………焦ってる時こそ1つずつシッカリとやるんだ!)
焦りそうになりそうな心を何とか押さえ付けながら俺は目的のスキルを発動させた………。
それと同時に俺の身体は光に包まれた。
「「「「「っ!?」」」」」
「おやぁ?」
そんな驚愕と疑問の声を聞きながら俺は自分の身体の変化を感じた。
それと同時に俺はステータスを操作した。
更なる変化と同時に俺は動き出した………。
驚愕と同時に動きが止まり今にも化け物に襲われそうなフィルマさんへと向かう化け物へと………。
「「「「「「「「「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー!」」」」」」」」」」
「ガルァァァァッ!」
光が収まらない内に動き出した俺は自分の身体の変化と共に化け物へとブチ当たった。
その勢いは自分の予想よりも強くブチ当たった化け物を向かって来た方向とは逆方向へと吹き飛ばす程だった。
そして、化け物を吹き飛ばした俺はその場に着地した。
「グルァァァァァッ!」
そんな咆哮を【狼】へと【変化】した俺はその場で上げるのだった。




