第110話
side:アイゼン
「報告します!被害状況の確認が終わりました!」
そう俺の元へと来たのは第5小隊を任せている隊長のリッツだ。
コイツは有能なのだが見た目が何処ぞの盗賊の様な男で小隊長より上の役職には上げてやれない不運な男なのだ。
そんなリッツに調べさせていたのは………。
「被害の詳細は?」
「は!負傷者3508名!内、重症者713名!部位欠損者は159名!合計軽症者2636重症者872名になります!武器防具は1割程のみ残っております」
「死者は何名出た………」
「死者の数は現在確認されているのは573名です…………」
「被害は約4000か………部隊の3割強か………無能だな俺は…………」
そんな弱音を思わず吐いてしまう程に酷い報告だった………。
戦場を預かる指揮官としては1割で有能2割でそこそこだが3割を超えると無能となる………。
その理由は戦場では3割の損失とは戦闘担当から見ると6割………組織全体から見ると全滅と言う解釈をされる結果なのだ………。
つまり………俺はこの部隊全ての兵士を殺した無能だと言う事だ………。
「そんの様な事は………」
「いや、事前にこの様な防衛戦になると分かっていたのだもっと的確な手段があった筈だ………それを用意出来なかったのだ………やはり無能だ………」
「団長…………」
俺の言葉を聞いて悔しそうに落ち込むリッツ………。
あぁ………こんな俺を慕ってくれる部下を慰める事すら出来ない………無能以外の何者でもないな………。
まァ何にしても部隊の損耗は分かったならば次だな。
「所で戦闘の記録は撮れたか?」
「は……通文石による報告では全ての戦闘の記録に成功したと報告が上がっております」
「そうか………」
全ての戦闘………つまりは、この俺達の大敗退の記録を含めた今回の戦いの記録が成功したと言う事だ………。
本国に帰ったらコレを総長殿に見せ城の各部門を預かる者達による会議の報告に使われる………。
色々言われる………いや、言われるだけには収まらないだろうな………。
おそらく俺の首を差し出しても足り無い程の何かしらの罰を与えられるだろうな………。
運が良くても終身奴隷となって使い潰されるだろうな………。
「アチラの状況は?」
最初の戦場………元第1騎士団副団長シュタイナー・モルダーと元第2騎士団団長デズモンド・マクヴァウアーの2人に任せていた戦場の事だ。
裏切り者2人に任せていたのだ………おそらくは……………。
「全員行方不明だそうです………」
予想よりも遥かに酷い報告を聞かされた………。
行方不明……何故だ…………何故こんな事を…………。
「ハ……ハハッ…………」
「?………だ、団長?………」
「ハハハッ………ハァーハッハッハ…………」
ここまで………ここまで酷いとは!………俺は!俺は今まで何をしてきたのかっ!。
そんな思いが浮かび上がるのと同時に騎士になる前の若造だった頃からの今までの全てが蘇って来て思わず笑いが出てしまった………。
「これが………これが!笑わずにいられようか!。
俺の今までは一体何だったんだっ!父や母に送り出され!友と共に戦場を駆け!人々を護り!そして………そして!友を!部下を!失って来た!その結果がコレか!ハハハッ!ハァーハッハッハ!」
「だ……団長…………」
「ハッハッハッハ…………………はぁ………武器も防具も失い部隊は半壊か…………俺の首1つでは足りんかもな……………」
「団……長ぅ……………」
「お前たちにも迷惑を掛けた……………せめて次はもう少しマシな団長の下で働ける事を祈っている………」
俺はそう言って先程から自ら倒したブラッドフェンリルを見続けるかの竜………フォルテースを眺め続けた………………。
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side:???
「戻ったぞ………」
暗闇の中俺はそう口にした………。
「お帰り〜♪……んで?どうだったのぉ〜?」
そう返事を返して来たのはいかにも軽薄そうな顔をした男か女か判断し辛い容姿をした男だ。
俺はそんな奴に今回の事を話し始めた。
「どうもこうも無い…………完全に失敗だ」
「ありゃ?どったの?」
そう聞いて来たコイツに現場で何が起こったのかを全て話した。
「うわ〜……その竜ってもしかして………」
「間違いなく神の使い………神獣だろうな」
「あ〜ぁ………絶対面倒な相手じゃん………それ」
「面倒で済めば良いがな………」
思わず溜め息を付きながら俺はそう一言溢した。
おそらく………いや、十中八九あの竜は俺達の驚異になる………下手をすると計画そのものが頓挫する可能性すらあり得る。
もしかしたら我々が所属する組織すら危ういかもしれない………アレはそんな相手だ。
「そんで?どうすんの?」
「その辺を報告と確認をする為にここに来た………」
「って、事は巫女さんに会いに行くの?………今、祈りを捧げる儀式の最中何だけど?」
「……………終わってからにする」
「そうした方が良いと思うよ………何せ儀式の邪魔したら………」
「殺されるだろうな…………」
「だよね………ならそれまで僕とカードでもしてようよ♪」
「仕方あるまい………付き合おう」
「そう来なくっちゃ!♪」
俺達は暗闇の中ロウソクの灯りを頼りにその時を待った………。
俺の報告を聞いて巫女が怒り狂わない事を祈りながら………。




