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第109話


「「グルァァァァアッ!」」


 お互いを敵と改めて認識し直したら俺達は言葉にすらなっていない咆哮を上げそれを合図にお互いに向かって走り出した。

ブラッドフェンリルとの距離は人の体躯で約5m程の距離で離れている。

しかし、今の俺達なら一足で済んでしまう距離だ。

そんな至近で同時に走り出した俺達は避ける事すらせずぶつかり合った。

しかも俺はスキル【突進】を乗せた体当りを繰り出したのだがブラッドフェンリルとぶつかった瞬間お互いに衝撃により吹き飛んだ。

向こうも同じスキルか近いスキルを使ったのかもしれない…………と思いたいが多分向こうはスキルすら発動させていないただの体当りの可能性がある。

何せこの【融合変化ゆうごうへんげ】で全体的にステータスが上がっているだろう俺がスキルを乗せた体当りと互角の威力なのだ…………その可能性を排除したがって何が悪い。

そんな事を心の中で愚痴りながら体制を立て直した俺はその場で【爪】を出した右腕を振るった。

その攻撃を予期していたのかあるいは優れた反射神経と動体視力で避けたのかブラッドフェンリルに簡単に避けられてしまった。

そんな避けられた俺に今度はブラッドフェンリルの爪が迫って来た。

俺の首目掛けて迫るその爪を先程避けられたままになっていた右腕を【爪】の発動を切りながら振り上げブラッドフェンリルの腕に当てる事で回避しその振り上げる勢いを腰を撚る力に変え左腕でスキル【殴る】を発動させた。

俺の攻撃に対し体制の崩れたブラッドフェンリルは何とか避けようと身体を撚っているが俺の狙いはその撚っている体の中心………正確に言うと左胸にある心臓だ。

アッチの世界に居る幼馴染の1人が所謂オタクと言う奴でそいつが勧めてくれた漫画でイジメられっ子の主人公がボクサーの男に助けられその人の様に強くなりたいとボクシングを頑張る漫画を読んだ事がある。

その中の話の1つに主人公が戦ったチャンピオンが心臓へ向けて殴り付け衝撃を伝える事でその心臓の動きを乱し一時的に相手の動きを止めると言う技を使っていた。

その名も………。


「グルァ!(ハートブレイクショット!)」


「グッ!?ガッ!?……………」


 しっかりと心臓へと衝撃が伝わった事でブラッドフェンリルは心臓の鼓動が乱れて動きが止まった!。

このチャンスを逃す訳にはいかない!。

俺は再び【爪】を発動させてブラッドフェンリルの首を切り付けた。


「グッ!?………」


「グルァッ!(一発で終わらせるつもりは無い!)」


 俺は先程の漫画の主人公が得意とした必殺技【デンプシーロール】の様に左右へ身体を振りながら両腕で何度も何度も切り付けた。


「グラッ!グラッ!グラッ!グラッ!グルァァァァッ!(右っ!左っ!右っ!左っ!まだまだぁぁぁぁっ!)」


「ガァァァァッ!?」


 痛みに耐えかねてかブラッドフェンリルは血を吐き出しながら切り裂かれた喉で叫び声を上げている。

だが……それでこの手を止める訳にはいかない。

コイツをこのまま好きにさせておけばいずれシアやシャルへとその魔の手は向く………。

それだけじゃない………メリアやアルド、それにメリルに町の皆も危険に晒される………そんなのは絶対に許容出来ない!。

ならどうするか………答えはコイツを殺すしかない!。

正直、殺す事への忌避感はある………。

それは俺があちらで育ち死んだ後コチラで前世の記憶を持っているからだ。

それは変えられないし変えたいとも思わない。

その忌避感すら捨ててしまえば俺は俺でなくなりただの一匹の獣になり果てるだろう。

けど、そうなる事でシア達を守る事が出来るのなら幾らでもそうなってみせる!。

多分、ブラッドフェンリルは俺がシア達に向けるこの思いを仲間である神獣達に向けていたのだろう………。

その思いをずっと抱えたままここまで戦って来たのだろう………。

そんなお前を俺は尊敬する……………だから!。

そんなお前にシア達を傷付けさせはしない!。

たとえシア達や他の人達から恐れられたり俺のこのブラッドフェンリルへの思いを知られそれでも殺した外道だと呼ばれたとしても!。

そして何より仲間想いのお前にこれ以上誰かを傷付けさせない為に!。

俺はお前を殺しそのお前の生き様を!。

俺が死ぬまで覚え続ける!。

俺はその思いを込めながらブラッドフェンリルを切り裂いていく………。

右肩……左腕……右頬……左脇腹…………次々に振るう俺の爪を受けその傷からブラッドフェンリルは血飛沫を上げ続ける。


「グッ………ガッ………………」


 そんな弱々しい痛みの声を上げ続けるブラッドフェンリル………。

俺は止めを刺す為に右腕の爪をその胸へと向け突きを放った…………その瞬間!。

ブラッドフェンリルはその突きに合わせて俺の首へと飛び掛かって来た!。

俺の爪とブラッドフェンリルの牙が交差した。

不味い!このままだと俺も殺られる!。

そう思い咄嗟に俺は左腕を奴の口へと押し込みそして………俺の爪はブラッドフェンリルの胸へと深々と突き刺さった………。


「…………………ガゥ『…………………我の負けか』」


「グルァ………グゥ……………(強かったよ………お前……………)」


「ガ………グ……ガ…ッ………グル………グ……ガ…ゥガル?………『小僧………お前の……その道…は………想像以上………に……厳しい…モノだぞ?………』」


「グル………グラ、グルル(分かってる………けど、俺はその道を進む)」


「グ…ル………ガル……ル……………ガ…ル……ガ…………ゥ……グル……ガル……ガ……………ガゥ………………………『なら…ば………あの世……で……………仲…間……達…………と……お前の……足掻き……を……………見て………………………』」


 その言葉を残しブラッドフェンリルは永遠の眠りについた………。

せいぜい見ててくれ………俺の決意と戦いを……………。

こうして俺とブラッドフェンリルの戦いの幕は下りたのだった………。



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