第105話
俺は数日前に俺達と騎士団を襲って来たブラッドフェンリルと睨み合っている。
このブラッドフェンリルは目の前の男によって呼ばれた存在………つまりはこの男の獣魔あるいは召喚獣と言う事になる。
「グルルルル……………」
俺を睨み付けたままブラッドフェンリルは唸り声を上げている。
コチラとしては直ぐに襲って来なかったのには助かった…………。
このブラッドフェンリルとこうして対峙した事で良く分かった事が有る……………。
コイツは俺より強い………と。
「何を睨み合ってる!とっととソイツを殺せ!ブラッドフェンリル!」
「グルゥ………………」
男の声に煩わしそうな顔をして小さく唸りを上げた………。
どうやらブラッドフェンリルはこの男に呼び出されてはいるがコイツに完全に従っている訳では無い様だ。
どちらかと言うと仕方なく従っているって感じだ。
まぁ、そこに付け入る空きが有るのかと言われると無いだろうがな………。
取り敢えず相手にペースを持ってかれると不味いだろうから先に攻撃して………聞くかなぁ………。
ダメージは通りそうだけど大して効かなそうだなよぁ………。
う〜ん………【強制覚醒】するか?………でもなぁ………何か嫌な予感がするんだよな………。
取り敢えず今のまま粘って周りに残ってるゴブリン達を巻き込む形で倒してレベルを上げていくか………。
それでどうにかなるとは思えないけど………やるだけやってみるか!。
まずは!牽制を込めてブラッドフェンリルの足元へ!。
「グルァ!(【火球】!)」
俺の口元に出来た炎の塊が丁度コチラへと突っ込もうとしてたのか少し前に傾く形で足に力を入れていたブラッドフェンリルへと飛んで行く。
変な体制でその【火球】を迎えたが奴にはあまり意味は無かった様で最低限の動きによるジャンプを行い後に飛んで回避した。
躱されるのは分かっていたのでそのまま奴を追い掛ける様な形で奴の左右へと交互に【火球】を放った。
しかし、それも簡単に躱された………。
まぁ、そんなに簡単には当たらないよな………。
そう思いつつも(まぁ、当てるのが目的じゃないんだけどな)と心の中で思った。
「グルゥ………」
俺の攻撃が止まった瞬間ブラッドフェンリルは俺の周りをゆっくりとした動きで回り出した。
どうやら、この間の戦いに比べ俺の攻撃があまりにも弱いのを感じ取った様で何か有るのではと警戒してる様だ。
取り敢えず狙い通りかな………。
そう思いつつ次にどうするかを考える………。
取り敢えずさっきも考えたが周りに居る残ってるゴブリン達を倒して行こう。
そう考え俺は奴がゴブリン達の前に立つのを待った。
「グルァ!(今だ!)」
その声と共に3つの【火球】を少しづつずらしながら放った。
まずはド直球に少し後ろ足側に寄せて1つ目を放った。
それを追随するかの様に今度は頭の位置から少し前辺りに2つ目を放った。
そして最後は2つ目で動きを止めたら当たるかもしれない位置に放った。
その3つの【火球】の軌道をブラッドフェンリルは瞬時に読み取ったらしく1つ目は走る事で位置を変えて避け2つ目と3つ目はその間を駆け抜ける形で回避した。
コイツ上手い!?。
そう思いつつも狙い通り【火球】がゴブリン達の集団に当たったのを喜んだ。
「「「「「グキャァァァ!?………」」」」」
その叫び声を聞きブラッドフェンリルはチラリと目だけで確認をした。
しかし、その叫びを聞いても奴には大して意味は無い様でその叫びを無視して俺を見ている。
どうやら油断もしてくれないみたいだ………。
そう思っていると奴の視線に何だか奇妙なモノを感じた。
俺の狙いに気付かれたか!?。
そう思い少し警戒して見ていると奴は目を細めて「グルゥ………」と鳴いた………。
その様子に俺は更なる違和感を覚えた。
何と言うか………面白いモノを見つけた…………いや、違うな……良いモノを見つけたみたいな雰囲気を醸し出した。
(何を考えてるんだコイツは?…………)
そう思った次の瞬間奴は俺の右側へと走り出した。
右から攻撃が来るっ!?。
そう思った俺は奴との距離を保ちつつ奴を正面に捉える様に奴とは反対方向へと走った。
その動きによって俺と奴は入れ替わる様に立ち位置を変更した。
そのままの勢いを残し今度はコチラへと突っ込む様に走り出した。
(コイツと接近戦何かゴメンだ!)
そう考えて俺は2発の【火球】を奴の足元と少し後ろ側へと向けて放った。
すると奴はそれを読んでいたのか後へ飛ぶフリをして右へと飛んだ。
空振った【火球】はそのまま進み奴の後に隠される形でいたゴブリン共の集団に当たった。
偶然当たったそれを見ながら俺は次々とブラッドフェンリルを追い掛ける様にどんどん【火球】を放った。
だがその【火球】は当たる訳もなく全て尽く避けられた。
(やはりコイツは強い……………このままだと不味い………)
そう思いつつも俺は打開策を打ち出す事も出来ずとにかく必死に奴を近づけまいと【火球】を放ち続けるのだった………。




