第10話
シアが俺を抱いたまま移動している途中で騎士の人がシアに話掛けて来た。
「………聞き忘れていたのですがそれだけボロボロになっていると言う事は相当な怪我をされていた筈ですが?」
「………その事はギルドで報告をする時に一緒にお話させて頂きます………この子に関わる事ですので………」
「……………了解しました。
後で聞かせて頂けるのであれば問題ありません」
そうこうしてる内に1つの大きな建物が見えて来た。
外観は西洋風の木造3階建てで入口は人が5人程並んでも余裕がありそうな大きさで作られていた。
入口の上には狼の後ろに斜めに剣が付いているレリーフがありその下にアルファベットの様な文字が書かれている。
もしかするとこれがギルドの看板なのかもしれないそして日本のアルファベットと同じ読み方で良いのならばその文字は冒険者と読める。
恐らくだがこれも初代国王が関わっているのかもしれない。
そうして俺が建物を眺めていたのだが2人は足を止める事無く中に入って行った。
「クァァ………(中も広いな………)」
「凄いよね♪さてと………良かったわ丁度開いてるわね♪」
そう言ってシアは1人の女性が居るカウンターの様な場所へと向かった。
そこに居た1人の女性がこちらに気付き声を掛けて来た。
「………………あ!シアさん、お帰りなさい」
「ただいま戻りました。
それで、クエストの報告をしたいのだけれど………」
少し声を低めにしながらシアはその女性に報告を始めた。
やはりと言うか彼女はこのギルドの受付嬢である様だ。
そんな彼女もシアに合わせて少し声を抑えながら返事をして来た。
「はい、それでどうでしたか?」
「結論から言うと…………全滅は出来なかったわ…………」
シアは低い声で悔しげにそう言った。
それを聞いた受付嬢はシアの姿を眺めながら気遣う様に言って来た。
「…………そうですか。
いえ、そのお姿から察すると相当ご苦労なさった様ですね」
「えぇ、はっきり言うと大怪我を負って死にかけたわ………」
大怪我を負った………そう聞いた瞬間彼女は慌てて立ち上がりそうになったが何とか収めて慌てて聞いて来た。
「っ!!?傷は残ってますか!」
「いえ、運良く回復魔法を使える子に出会って助けて貰ったわ」
「それじゃぁ!お怪我は無いのですね!」
「えぇ」
「良かったです………」
怪我が残って無い事を聞いてようやく安心したのか体の力を抜き深く椅子に座り直した。
そんな彼女を見て嬉しそうにしながらシアは報告を続けた。
「それで………詳しい報告をするのに部屋を使いたいのだけど?」
「部屋をですか?」
「えぇ、あまり人に聞かれたく無い事があるの………それと、マスターも読んで貰えるかしら?」
人に聞かれたく無い………恐らく………いや、確実に俺の事だろう………。
それにしてもマスターって………もしかしてギルドのトップの事か?。
俺が疑問に思っていると受付嬢の彼女は何故マスターを呼ぶのか疑問に思っているのかシアに聞き返して来た。
「マスターをですか?」
「えぇ、討伐部隊を編成する必要がありそうなの………」
「っ!!?わ、分かりました!直ぐにご案内します!」
そうシアが言った瞬間事の重大さが理解できたのか今度こそ立ち上がり慌てて奥へと向かい出した。
そんな彼女を見て少し苦笑いをしてシアは呟いた。
「お願いね………と言う訳ですので詳しい事は部屋を借りてマスターへの報告をしながら話したいと思います」
シアは後ろを振り返りながら騎士の人にそう言った。
彼も事の重大さを理解したのか顔を引き締め。
「了解した。
これはもしかすると我々も動く必要が出てくるかも知れないな………」
そんな事を彼は呟き何かを考え始めた…………。
シアはこれから話し事を整理しているのか静かになり受付嬢が戻って来るのを待っていた。
少しして奥からガタイの良い1人の男を連れて受付嬢が戻って来るのが見えた。
シアもそれに気付いたのか彼等を見ていた。
彼等はそのままカウンターの横から出て来てこちらに向かって来た。
「待たせた……それで報告をするのに部屋を使いたいと聞いたが?」
「えぇ、実を言うとゴブリンの報告だけならここで話しても良かったのですが………この子の事を話すのに部屋を借りたいと思って」
そう彼等に言いながら抱き締めている俺へと視線を促し彼等に俺の事を認識させた。
「………っ!!?それは生きているのか?」
あまりにも大人しくしている為かどうやら人形か何かと勘違いされた様だ………まさかシアが狩って来た獲物とか思って無いよね?。
「生きてるのかって………失礼過ぎです!この子は私の命の恩人何ですから!この子は凄く強くて優しい良い子何ですよ!あんな事言われてもこうして大人しくしている位!それなのにまるで死んでるみたいな言い方をしないで下さい!」
俺の事を変な言い方されたのが嫌だったのか大声でシアは怒り出した。
………あの……シアさん……そこまで気にしてないからそんなに怒らなくても良いんですよ?だからね?落ち着いて……ね?。
そうしてシアが怒り出した事にその場に居た者達全員が驚き困惑していると自分の言ってしまった事に気付きガタイの良い男は頭を下げた。
「すまない……何も考えずに言ってしまった。
以後気を付ける様にする」
「当然です。
私じゃなくてもテイマーの人達はきっと怒ります!」
その声が聞こえた様で離れた所に居た何人かが頷いていた。
恐らくはテイマーの人達なのだろうと思う。
しかし、このままじゃ話になりそうに無いから取り敢えずシアを宥めておこう。
そう思い俺はシアの腕から抜け出し飛翔スキルを使い浮かび上がり頭を撫でた。
「クァ、クァァ(落ち着いて、俺は大丈夫だから)」
「フォル………うん」
俺はシアにそう言葉を掛けて少しの間彼女の頭を撫でた。
そうしていると段々と落ち着いて来たのかシアはその表情を柔らかくしていき遂には蕩けそうな顔になっていた。
どれ位そうしていたのか分からないがいい加減焦れたのだろう突然咳払いをしてガタイの良い男が言って来た。
「…………んっ!あぁ……その……何だ…俺が切っ掛けになったとは言えそう言うのは宿でやってくれ。んで?そろそろ話をしたいんだが?良いだろうか?」
そうして俺達はさっきまでの状況を思い出して赤面するのだった。