第二十八話 「運命の人」
静かな湖畔の空気を震わせて、凛とした声が響きわたった。
「ルーゼ! そんなところで何をしているの!」
聞き覚えのある鈴のような声――リーネのものだ。
ふっとルーゼが立ち止まり、大きく溜息つくのが分かった。
ぼんやりと浮かぶ像と気配から、彼も私と同じく肩から上だけが水面から出ている状態のようだ。
「リーネ悪いが邪魔しないで欲しい……。
最期ぐらいレティアと……私の最愛の婚約者と……二人きりにさせてくれ……!」
ルーゼの声は苛つき冷えたものだった。
「まさかそのまま湖に入って行ってレティアと一緒に死ぬ気なの?」
「……どの道この人無しでは生きてゆけない……同じ事だ……」
「駄目よ! 戻って来て! 私にもあなたが必要なの!
だからこうして引き返して、わざわざ追ってきたのよ!
あなたが向かった方向と、同時にいつだかレティアがしていた湖の話を思い出したのでその位置も教えて貰い、懸命に馬を走らせてやっとあなたを見つけたんだから!
絶対にあなたを死なせたりするものですか!」
リーネの熱く訴える声に、答えるルーゼの声はどこまでも冷え切っていた。
「私にはもう君は必要ない……あんなに私が頼んでも……君はこの人を見捨てたんだ……。
見てくれ、レティアはもう身動きすら出来無いんだ……かつては生き生きと道を走っていたこの人が……こんなに弱りきって……。
私の命そのもののこの人を見捨てた時点で……君に死ぬのを止める権利なんて無い!
永遠にさようならだ、リーネ!」
別れの言葉を合図に、ルーゼが再び湖の中を進み出す気配がする。
水を切っていく感触から迷いないその足取りが伝わってくる。
「私がレティアを今度こそ助けると、そう言っても!?」
「……もう、君の言う事など信じないし、何も期待しない……」
苦々しいルーゼの呟きに対し、悲鳴のような声を張り上げリーネはさらに言い募る。
「今度こそ助けてみせるわ! 本当よ! あなたの命がかかっていると知っている今なら、絶対に力を出せる自信があるわ!
最愛のあなたの命以上に、私にとって大切なものなんてないんだから、成功しない訳が無いのよ!
――ただし、条件があるわ!」
音が止み、再度、ルーゼが立ち止まったのが分かった。
「……条件?」
「私がその人を助けるかわりに、あなたは一生私といるの。
レティアと一生、二度と会わないで、完全に私のものになる。
そう誓えるのなら、私の全てありったけの力と全存在をかけて、今度こそレティアを癒してみせるわ!
あなたを死なせてしまうぐらいなら、私は自分の命を賭けてでも、レティアを救ってみせる!」
「……」
「どう、ルーゼ。選んで!! そのまま二人で死ぬか、レティアを助けるか!!」
決断を迫るリーネの声が辺りに反響して、木霊し、消えてゆく。
――その後、しばらく湖には沈黙が満ちた。
やがて静けさを破り、ルーゼのどこか冴え冴えとした声が響いて、語り出す。
「リーネ、君は本当に私に似ている……まるで私の鏡のようだね。
相手の心が自分に無くても、傍にさえ居ればいいと言うのだから。
私もずっとそうだった……この人の心がどこにあっても……傍にいてくれるならそれだけで良かった。
出来るだけ詳しい事情を聞かないようにして……私と一緒にいる本当の理由を知りたくなくて……。
この人が誰を想っているかも知っていたのに……ずっと見ないふりをしていた。
ただ傍に……傍にいられれさえすればそれでいいと……!?
だからこれは罰なのかもしれない……!」
最後の部分は叫びのようになって、ルーゼの身体から激しい震えが振動となって伝わってくる。
「お願い、分かって、ルーゼ……私はあなたが死ぬのだけは絶対に嫌なの……!」
リーネの声も嗚咽まじりだった。
私の身体が痛いぐらいぎゅっと抱きしめられる。
「リーネ……どうか、レティアを助けて欲しい……!」
喉から絞り出すようなルーゼの悲痛な叫びがあたりに響き渡った。
その台詞は彼と私との今生の別れを意味していた。
水の中で自分の身体が横向きに回されるのを感じて、波と振動と音が、ルーゼが方向を変えて歩き出した事を教えてくれる。
どんどん岸に戻っていくその様子に、私の心は焦り、あんなに望んでいた生よりも、ルーゼを激しく求め、叫びだす。
(ルーゼ、止めて、戻らないで!
あなたと……離れたくない……一緒にいたいの……!)
ザバッと水の中から出る音がして、濡れた身体に夜の空気が冷たく染みてくる。
震え出す私を温かい腕と身体がくるむように包み込んだ。
ふいに誰かの手が頭に当てられ、日の光を浴びるような温かい感覚がそこに広がっていく。
「……今までずっと一緒にいられて幸せだった……。
愛しているよ……レティア……永遠に……私にはあなただけだ……。
――さようなら……」
最後に愛しいルーゼの声が響いて……。
私の意識は光に飲み込まれるように、そこで途絶えていった……。
「レティア……」
目を覚ますと、目の前に心配そうに覗きこむ、ライナスの真っ青な瞳があった。
あんなに酷かった頭痛は不思議な事に止んでいた。
「ここは……? 私は……」
ライナスに手を握られ、私は見慣れぬ大きな四柱の天蓋付ベッドの内部に横たわっていた。
状況が飲み込めず、ぼうっとしてしまう。
「ここは俺の屋敷だ……しばらく君は意識を失っていて身体を動かせなかった……」
「ルーゼは?」
「彼が君を連れて来て、俺に託して行ったんだ……」
ライナスの説明で、湖での一連の出来事がまざまざと脳裏に浮かび、飛び上がるように起き上がる。
ああ、なんて事なの!
ルーゼが、リーネに私を治してと頼んで……。
それじゃあ彼は……私の為に……リーネと?
「そんな……!?」
ルーゼが永遠に自分から去った事実を悟るとともに、激しい喪失感に胸が引き裂かれるようで、涙がどっと溢れてきて止まらなくなる。
ライナスが慰めるように身体を優しく抱きしめてくれたけれど、その胸に顔を埋めて泣く気にはどうしてもなれなかった。
私は俯き身を縮こませ、ひたすらルーゼの事を想って泣き続けた。
リーネは正真正銘の奇跡の乙女だった。
私の頭痛は再発する気配すら無く、気力も体力もやがてすっかり回復していった。
――私が無事に20歳になり、21歳になっても、目の前にルーゼが現れる事は無かった。
会わないように避けているのだろう――かつて私がライナスの影すら踏まないように気をつけていたように……。
単行本三冊分しか無い『リーネとルーゼ』の物語に描かれているのは約二年間の出来事だけなのに……。
小説の筋が終わる19歳の時期を過ぎても20歳の誕生日が訪れても、ルーゼは一向に帰ってくる気配が無かった。
私もあえてルーゼのいそうな王都などに足を向ける事はしなかった。
きっとルーゼとリーネはこれからもずっと一緒にい続けるのだろう。
物語が終わっても……。
それでもどこにいても何をしていてもあなたを想わない日など無いのだ。
あなたに出会い深く愛され、一度は共に死ねる事が幸せだと想った。
ルーゼ……同じ空の下、あなたは今どこで何をしているの?
「レティア……また走ってるのか?」
いつものように田舎道を走っているとライナスが並んで馬を寄せてきた。
「ライナス……」
私は並走している彼の姿を困った気持ちで見上げる。
この二年間というもの、ライナスが頻繁に屋敷を訪ねて求婚してくるものだから、婚約破棄歴と21歳という年齢に危機感を覚えた両親からの、結婚しろという突き上げが、最近特に酷くなっている。
その件もあってジョギングの休憩がてら、会話する為に私達は丘に登って、二人で並んで座る事にした。
「ああ……なんて綺麗な青空に、気持ちのいい風。
生きているのって本当に素晴らしいわね、ライナス」
「確かにそうかもしれないな……」
ライナスの瞳は今日も夏空のように温かく澄み渡り、秋風に踊った私の長すぎる髪が、時折、彼の上半身やその黒髪にまとわりついては、ほどけていく。
「少しでも長くこの生きる喜びを味わっていたいわ」
「同感だ――俺も貴重な人生の喜びを一時でも多く君と共有したい。
お願いだからレティア、そろそろネックレスを受け取ってくれないか?
ルーゼが君に一方的に婚約破棄を言い渡し去ってから、もう二年以上の月日が経つ。
何度か王都で見かけた時もルーゼはリーネと常に一緒だった。
何年待とうとも彼は君の元へは戻って来ないんだ……諦めてどうか俺と結婚して欲しい」
言い聞かせるように語りかけてくるライナスに負けじと、私も説得を始める。
「ライナス、あなたこそ何回言ったら理解してくれるの?
私は別にルーゼの帰りを待っている訳では無く、好んで一人でいるだけだと言っているでしょう!
勿論、あなたには色々酷い事をしてしまって、一時期とても気を持たせてしまった事については、心から申し訳なく思っているわ。
その件に関しては、本当に、ごめんなさい!
だけど私はあなたとも他の誰とも、一生、結婚するつもりが無い事を、いい加減分かって欲しいの!」
一生独身宣言までしたというのに、筋金入りの頑固もののライナスは頑として納得する気配が無かった。
「俺も何回も言っているように、君に何度断わられようとも求婚を止めるつもりなど無い。
ルーゼが戻って来て君と結婚でもしない限りは、生涯、君を諦める事は不可能だ」
生涯……不可能……まさかそこまで言い切ってしまうとは……。
これは、今までの言い方では、本気で一生諦めて貰えない気がする。
もっと深い切り口での説得が必要なのだと、考えを巡らせる。
「――ライナス、いつか言ったように、私、たしかにあなたに恋していた時期があったわ。
あなたの高潔な騎士みたいな見た目と性格がとても好みで、胸がときめきまくっていたの。
ヒメネス公爵の事も同じように好きだった。
姿を見るだけでどきどきして、声をかけられるだけで嬉しくて……振られた時はこの世の終わりみたいだった。
だけどね――ルーゼへの想いはそのどちらとも全然違うの。
いきなりときめいたり盛り上がったりする種類のものではなく、最初のうちは火が起こってる事さえ分からないほどのささやかさ。
なのに気がついた時には、いつの間にはこの胸の中で、他の何よりも熱く大きく燃えている。
あなたやヒメネス公爵へ抱いたような、恋の火はいつか消えてしまうものよ。
だけどルーゼへの想いはずっと消える事なく、この胸の中で温かく永遠に燃え続けるの。
私はあなたに恋していたけど……ルーゼの事は愛している。
そうなの、泣きそうなぐらい、彼を絶望的に愛しているの!
なんでこんなに愛しているのか自分でも分からないほどよ……だけどこれは地獄じゃない。
私にとってたった一つの天国なの。
だからライナス、あなたのプロポーズは永遠に受け入れられない。
こんなに心の中があの人への愛で満たされ、彼を想うだけで幸せなんだもの。
私にとってルーゼだけがたった一人の運命の人なのだから。
ルーゼが一生戻ってこなくても、一人ぼっちでも、それでもいいの。
私が彼を愛しているから……愛し続けている事が一番の幸福だから、それでいいの!」
言っているうちに感情が溢れて来て、思わず涙ぐんでしまう。
少し熱弁を奮い過ぎたのと、泣き顔が恥ずかしくて、膝に顔を埋めたまま上げられなくなる。
「ライナス、ごめんなさい、今日はもう、一人にしてくれる?」
「わかった……また会いに来る……」
ライナスが立ち上がる気配がして、少し経ってから、馬が去って行く蹄の音が鳴り響いた。
ライナスの前では強がってみせたけど、本当は一人は寂しいし、ルーゼに会いたくてたまらない。
だけど、信じているから――分かっているから、耐えられる。
たとえ身体が離れ離れでも、もう二度と会う事が出来無くても……。
あなたの隣に別の女性がいても……私達の心は永遠にずっと一緒だよね? ルーゼ。
少し感傷的な気分に浸ってから、私は涙をぬぐい、ぐいっと顔を上げた。
流れゆく雲や吹き渡る風の感触に、再び生きている喜びと、感謝の気持ちが沸いてくる。
ルーゼ、あなたがくれたこの命、大切に生きてみせるからね。
愛しい人の面影を空に浮かべて見上げ、長い間そこに座っていると、後方からまた馬が近づいてくる気配がした。
ライナスが戻ってきたのだろうか?
でも去って行った方向とは違う。
蹄の音に立ち上がり、振り返ってそちらの方向を確認してみる。
そこに見えたのは裾の長いダークグレーの外套を羽織った、馬に乗った背の高い男性だった。
髪の色は輝くハニーブロンドで、やわらかな質感を表すように風に掻きまぜられて舞っている。
彼は距離を詰めながら、観察するようにこちらを見つめて話しかけて来た。
「久しぶりだね……姉さん……その格好、また走ってたの? 元気……そうだね?」
ここにいる筈が無い、会える筈が無いその人物の登場に、一瞬、呼吸が止まりそうになる。
胸が嬉しさと愛しさに詰まって痛いほどに苦しくなり、返事を言うまで、ずいぶん間が空いてしまう。
「……ルーゼ、ルーゼなの?」
「ああ、そうだよ……レティア、二年ぶりだね。……沈黙している間、顔を忘れられたのかと本気で心配になったよ」
至近距離まで馬が近づいてくると、いよいよ懐かしい顔とエメラルド色の瞳がはっきりと見てとれた。
「……顔を……顔を見せてルーゼ……」
頷いて、馬から降りてルーゼが目の前に立った。
ルーゼは別れた時に比べてよりいっそう身長が伸びて、私より頭一個分以上高くなり、見上げるほどだった。
顔がかなりシャープになり、相変わらずの甘く美しい顔立ちに、大人の男性の色香が加わり、美貌がさらに研ぎ澄まされ、あたかも天使から大天使に格上げされたような変貌ぶり。
目が覚めるほど魅力的になった彼の姿に、たちまち一目惚れを覚えたような甘いときめきが、この胸に巻き起こる。
「姉さん……物凄く顔色が良いね……良かった……」
ルーゼの潤んだ瞳と震える声に、つられてさらに涙が込み上げ、視界が霞んでしまう。
「……うん……あなたの、あなた達のおかげよ……」
「まさかいまだにライナスと結婚していないとは思わなかった。意外だったよ」
軽い驚きを含むルーゼの台詞に、今こそずっと出来なかった彼への想いを告白をする好機だと気がつく。
「ライナス……とは結婚しないの……」
「え?」
「他に……好きな人がいるから……」
言って、泣き笑いしながらルーゼの顔を見た。
目の前のルーゼの顔はとてもショックを受けた表情をしている。
「……他に好きな人がいる? 本当なのレティア?」
「……そうよ、私は……」
ルーゼが好き、そう言おうとしたのに、凄い剣幕で言葉が遮られる。
「そんなっ! あんまり過ぎるよ、レティア! ライナスだから譲ったのに……たった二年間で心変わりするなんて酷すぎる! 他の男なら絶対にあなたを任せたりしなかった!!」
「ルーゼあのね……私が愛しているのは……」
「止めて、あなたの口から他の男の名前なんて聞きたくない!!
私がどんな気持ちで今まで生きてきたと思っているのレティア?
あなたのいない人生を生きるのは光の無い闇の世界を歩くようだった。
この二年間亡霊のように生きてきたんだ……!」
「ルーゼ……聞いて」
「駄目だ……ライナス以外ならあなたを渡せない! 諦められない!
愛しているレティア!
あなたは私のすべてで命そのものだ!
決して他の男などにあなたを渡すものか!
そうだ、絶対に、絶対にそんな事は許さない!
それぐらいなら、いっそ、ここであなたを無理矢理抱いて、自分のものにする!」
宣言するやいなや、決然と腕を伸ばして両肩を掴み本気で押し倒して来ようとする彼の様子に、私は思わず笑ってしまう。
見た目が大人になってもルーゼったら本当に相変わらず過ぎる!
だけど、容姿も地位も完璧なのに、そういう欠点のあるところが、私の惹かれた彼の魅力なのかも。
そこで、唇を唇で塞がれそうな気配に気がつき、焦って告白の続きをする。
「ルーゼなの!」
「……え?」
「だから、私が愛している男性の名前はルーゼ・ミュールなの!
……ずっとあなたを愛して待っていたの……!」
『ずっとあなたを愛して待っていたの……!!』
それはいつか見た幸福な夢の中で私が言っていた台詞と同じだった。
「……レティアが私を? ……嘘だ……そんなの信じられない……!」
ルーゼの声は動揺したようにかすれ、私の肩から手を離すと、よろめくように後退していった。
悪い方向だけではなく良い方向の言葉まで信じられないというのだから始末に終えない。
「信じないなら信じなくていいけど……真実なんだからしょうがないでしょう?
自分でもずっと気がつかなくて、あなたが一緒に死のうとしてくれた時に初めて分かったの。
いつの間にかあなたに恋して深く愛している自分の心にね。
残念ながら今この時まで伝えるチャンスには恵まれなかったけど……きゃあっ!」
話している途中でいきなりルーゼの腕がまた伸びて来て、今度は両脇を掴まれ、身体を高く上に持ち上げられた。
「ああ、レティア……夢みたいだ!
私は生まれてから今までこんな幸せな気持ちになった事はないよ!」
「待って……きゃーっ」
そのまま空中でぐるぐる身体を回される。
丘の上でさらに高身長のルーゼの頭上なもので物凄く高くて怖い。
「急いで結婚式の準備をしなくては!」
私を地面にストンと降ろしながらルーゼが叫ぶ。
目が回ってふらつきながらも、肝心かなめの質問を彼にする。
「結婚式って……リーネのところへまた戻らなくていいの?」
「その件は大丈夫だよ!
リーネとは一緒に方々旅したけど、最後はやっぱり気持ちをくれる人がいいって、去って行った。
たぶんだけどヒイスクリフ神父のところへ戻って行ったのだと思う。
彼は誰よりもリーネを想ってくれている人だから」
そうだ、リーネは何よりたった一人からの心を、愛を、欲しがっていた。
「じゃあ……本当に?」
「ああ、本当に自由になったんだ!
そうしたらいてもたってもいられなくて、あなたの顔を見に来ずにはいられなかった。
ライナス……他の男性と一緒にいるところを見れば、また自分の気がおかしくなってしまうって分かっているのに!」
「ルーゼ、じゃあもうリーネのところに帰らなくていいの?」
「うん、レティア」
「これからはずっと一緒?」
「うんうん、もうずっと一緒だ。死ぬ時までずっとだ!」
くどいほど確認する私に、いちいち、こくこくとルーゼが頷き返す。
とうとう嬉しさにたまらず彼に抱きつくと、倍の強さで抱き返され、厚みと逞しさの増した胸の感触に思わずドキドキしてしまう。
「愛しているルーゼ……!」
「私もずっとあなただけを愛してきた……。
これからもあなただけを永遠に愛すると誓う!」
ルーゼは力を込めてそう言うと、ずっと高い位置になった頭を下げて、私に口づけしてきた。
大好きな蜂蜜色の髪に触れ、エメラルド色の瞳を見返しながら、私は何度も何度も自分からも彼にキスをする。
そうして私達は丘の上で抱き合いながら、際限なく口づけを交わし合う。
……一つの物語が終わって、また新しい物語が始まっていく……。
FIN
●※この物語のネタバレを一切・禁止します※●
(大したネタじゃないのにすいません……汗)
【お読みくださり本当にありがとうございました!!!!!】
番外編三作もなんとか書き終わりました。
レティアとルーゼの夫婦日記の構想もありますが普段薄い漫画本描いている私には夫婦生活を全年齢で書くのは無理そうなのでなろうでは書けません。
最後に、不遇な扱い過ぎたライナスに土下座して、筆力不足でヤブ医者然と描いてしまったサジタリウス医師にもお詫びしつつ、本編を終わりたいと思います。




