ただ、鳴く。
それは
悲痛に
静かに
哀れに
世界を軋ませる
存在すらも忘れ去られ
けれど確かに其処にいる
それは
冷たい風に揺れる開け放しの扉
空の部屋に響く無機質な暖房の音
アスファルトを擦る乾いた落葉
開かれない埃まみれの物語
雪に一つだけ残る足跡
暁に取り残された白い月に
とてもよく似ていて
寒い
胸に穿つ孔は空っぽ
鈍い痛みを堪えながら
涙は出ない
ただ中身を失った心の隙間に
風の音だけが空しく響くのを聴くだけ
ただ薄れゆく己が身の軽さに
小さな絶望を覚えるだけ
嗚呼
寒いのだと、ただ
孤独が鳴く




