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第9章 次郎の新居

 次郎はフラット35の三十五年ローンで銀行から三千五百万円を借りて柳田から新しい建て売り住宅を買った。契約時の金利は固定で年率1.65%、ボーナス返済なしで返済額は毎月十一万円弱、融資事務手数料として約七十万円かかったが、次郎の毎月の給料手取額二十八万円でどうにか食って行けるように思えた。今住んでいる町田市森野の借家は家賃が一ヶ月五万二千円だったから大分きつくなる。

 次郎と昌代との間には五歳になる長女の菜未(なみ)、三歳になる次女の菜桜(なお)、生まれて半年経った長男の翔太の三人の子供がいた。

「あなた、ご心配なさらなくても大丈夫よ。この子たちの児童手当(子ども手当)の手続きを明日市役所でしてきます。菜未が毎月一万円、菜桜と翔太は合わせて三万円頂けるから毎月四万円。切り詰めて行けばちゃんと暮らして行けますわよ」

「そうかぁ、児童手当のことをすっかり忘れていたな」

 次郎はしっかり者の昌代と結婚して良かったと改めて思った。


 家屋の引き渡しが終わって、家族五人で引っ越して来た。家具などは買い換える余裕はなかったから、前に住んでいた借家で使っていた冷蔵庫や洗濯機などをそのまま持って来た。

 借家は四畳半と六畳間と八畳程度のダイニングキッチンの三部屋だったが新しい家は一階は八畳間と十畳程度のダイニングキッチン、二階は八畳間が二部屋だから以前より大分広くなった。新しい家で菜未と菜桜は喜んではしゃいでいた。

「ダメダメッ。お家の中で走っちゃお怪我するから大人しくしてなさいっ」

 昌代の大きな声が響いた。

 引っ越しには次郎の部下の田辺と河野と言う二人の青年が手伝いに来てくれた。昌代の妹の鈴木真美、医者の弟と弟の彼女木下亜希子もお手伝いに来てくれて賑やかなお引っ越しになった。

 妹の真美はまだ未婚でちょっとイケメンの河野と気が合う様子で楽しげに話しながら引っ越し荷物を運んでいた。

 二階の八畳間は一つが畳敷きでもう一つがフローリングだったので、昌代は次郎と子供三人で寝る部屋は畳敷きの部屋にした。自分用の小さな鏡台の他に一間幅のビルトインクローゼットの前を避けて整理箪笥もこの部屋に運んでもらった。クローゼットには自分用と旦那の次郎用の衣服を入れた。二人とも衣服は少なかったから全部収まった。二階のもう一部屋に次郎と共用で使っている机と椅子、本棚を運び込んでもらった。

 一階は四人がけの小さなテーブルと椅子を置いてもらった。一階のもう一つの部屋には何も運び込まず空いたままにした。昌代の頭の中には近い将来実家の母に来てもらってこの部屋を使ってもらう計画があった。

「皆さん、ご苦労様でした。お蔭様で思ったより早く終わりました。お昼はコンビニのお弁当でしたが、お腹空いたでしょ。お寿司を頼んでありますから少し待って下さいな」


「こんにちわぁ、鷺沼様のお宅はこちらですか?」

 出前寿司屋だ。

「はい。鷺沼です」

 昌代は代金を手渡して寿司を皆の前に運んだ。

「わぁーお寿司だぁ」

 菜未は次郎のあぐらの上に座って早速手を伸ばした。

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