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第5章 着工と裏事情

 「鍬入れは省略させて頂いて建前はちゃんとやる方向でよろしいでしょうか? 工場建設などの場合は鍬入れ式をやりますが、個人の住宅の場合建前だけに省略する場合が多いんですよ」

 太郎は細かいことは良く分からないから不動産会社に任せると返事した。太郎からの連絡を受けて戸田は工事担当部署に連絡、着工日が決まった。

「九月三日が大安ですので、その日に着工させて頂きたいのですが、お越し頂けますか?」

 戸田は太郎に連絡を入れた。

「生憎その日は関西に出張なんです。早めに着工して頂きたいのでそちらにお任せしますから、何かあれば後日に連絡を頂けませんか?」

「分かりました。ではこちらで予定通り進めさせて頂きます」

 九月三日、太郎の相模原の新居は予定通り着工した。建物の設計の詳細は萠を交えて不動産会社の工事担当者と打ち合わせを終わっていた。萠が内装に色々注文を出し、付帯設備も注文が多く、

「これだけ盛り込みますとこちらは真っ()かの赤字です」

 と担当者は苦笑したが、萠は押し切って受け入れさせた。

「参ったなぁ。何とか上司を説得してこれで進めさせてもらいます」


不動産会社で営業をしている戸田は、(かね)て芝山から引き合いをもらっている物件に合う土地を相模原に探していた。すると、同業者から耳寄りな情報が入ってきた。

「空き家を至急処分したいと言う者がいるんだが」

「土地はどれ位だ?」

「広さかね、それとも価格かね」

「広さだ」

「分割して建て売り二軒はできるよ」

「何坪だ?」

「八十五と少しだ。測量してみないと何とも言えんが」

「分かった。その物件、俺の方で押さえたいから詳しい情報をくれないか?」

 戸田は早速杉田と言う男に会った。

「持ち主は今は東京に住んでる息子の山崎と言う奴だ。何でもオヤジが急死して遺産として相続したんだが、直ぐに売却したいそうだ」

 戸田は直ぐに山崎にアポを取り東京に出向いた。戸田は相手の足下を見て値引き交渉に入った。

「坪二十五でどうですか?」

「五十万前後が相場と聞いていますが」

「それは更地の場合です。色々事情がある場合はせいぜい二十七位がいいとこですよ。二十七なら直ぐにでも当方で買いますよ。この値段でもまとまった広さだと買い手が付きにくいですから」

「そんなもんですかねぇ。二十七だとあそこは父に八十五坪だと聞いてましたから、二千二百九十五、二千五百位になりませんか?」

「無理ですよ。その代わりこちらで仲介手数料は持ちますよ。手数料だけでも五十はかかりますよ」

「分かりました。では二千四百で、わたしの方もこれ以上でないと売りません」

「いいでしょう。では早速契約に入りましょう」

 戸田はしめたと思ったが顔には出さなかった。


 山崎から空き家を買い取ると、戸田は直ぐに業者に連絡を入れ家屋を解体して更地にした。それで芝山との契約を急いだ。土地を安く仕入れたことで、芝山の方には最初提示した価格より値引きをして契約に持ち込んだ。家の新築は坪六十万で見積もったが、実際には五十万に落とすつもりで工事部署と相談した。こうすることで芝山の希望に合わせた。


 相模原警察署に匿名の女性から不審な電話があった。

「わたくし名前は言えませんが、7月お亡くなりになられた一人暮らしの山崎さんの死因に不審な事がございますの。そちらで調べて頂けませんでしょうか?」

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