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引きこもり令嬢(三十歳)の再起  作者: 池中織奈


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6.少しずつ生活を整えてみよう

「良い天気……っ!」



 私は散歩をしている。これはダイエットも兼ねてある。やはりこうして運動をすることはとても大事なの。

 前世の記憶を思い出してから少しずつ私は体力がついてきたとは思う。私は体力不足なので、息切れをしたりはする。




 ただこうして散歩をすることで、かなり健康的になっている。また散歩はダイエットだけが目的ではない。街の暮らしを知ることは重要なのだ。





 どこにどんなお店があるかとか、そういうことを知るだけでも何とも嬉しい。

 それに人と人のつながりを少しずつ増やしていけるのは私にとっては嬉しいことだった。





 引きこもってからの私はと言えば、ずっと……誰とも関わり合うことも喋ることも出来なかった。ううん、私自身がそれを拒否し続けていた。その結果、待っていたものがなんだったかと言えば、新しい出会いが何一つもなく、同じことの繰り返しの中で狭い世界の中で生きているただの引きこもりだけだった。

 外出することの無くなった私。周りからの視線などに怯えていた。





 ……過去の私は王侯貴族達とそれはもう関わりを持っていた。前世の記憶を思い出す前は、貴族令嬢として生きてきた価値観にとらわれていた。

 だから外に出ても、きっと良いことなどないとそんな風に諦めていた。実際に何度か引きこもりをやめようとした際に嫌な思いをしたからというのもある。





 だけど今は――誰も私の事を知らない場所で生きている。もちろん、引きこもりの公爵令嬢であった私の噂ぐらいはきいたことはあるかもしれないが、それが食堂で働いている私とは結び付くことはないだろう。





 私だったら公爵令嬢が当たり前のように働いて、平民として生活をしているとは思えない。

 ただ……お兄様は何だかんだ私のことを心配しているのか、それとも私が何らかのことに巻き込まれて公爵家に被害が出ても困ると思っているのか護衛はつけられているようだった。

 それも仕方がないとは思っている。私が幾ら平民になると決めていても、この身体に流れているのは公爵家の血だ。それだけでも私を狙う価値がある。




 ……特に私が屋敷を出て間もない今だと、私を人質にしてお兄様に対して交渉をしようとする人だっているのかもしれない。そういうことを考えると、私が平民になるのって少し難しいことではある。それでもお兄様は私が自立したいと言った言葉を後押ししてくれた。

 はねのけることだって出来たのに。そもそももっと早くに処分することも可能だった。それでもお兄様は私の意思を尊重しようとしてくれている。

 そのことが私は嬉しかった。




 魔法もまたつかえるようになりたい。私が魔法を使えるようになったら、お兄様や両親だって安心してくれるはず。




 自慢じゃないけれど、昔の私はとても優秀な魔法使いだった。貴族夫人になれなくても、魔法使いとして大成することが出来るなんて言われていた。私がただ、引きこもりになっただけで魔法を使えていたのならば――おそらく魔法使いとして生きて行く道もあっただろう。

 実際に学園に在籍中にスカウトされたこともあった。だけど、私は重要な場面で魔法を使えなくて、それから逃げるように一度も魔法を行使しなかった。

 私の価値は、あれらの出来事で急降下してしまった。




 貴族は価値が下がってしまったら、なかなかその価値を上げることは難しい。私の周りに人が沢山いたのは私が好かれていたからというより、周りが私に対して価値を見いだしていたからなのだ。

 だからほとんどの人が、その時に居なくなった。



 ああ、でも……友人達は割と長い間、私に手紙を送ってくれた。本当に情けない話だけど、当時の私は自分の失敗が恥ずかしくて仕方がなくて、どうしようもないぐらいに余裕がなくて彼女達をはねのけてしまった。

 今の私は平民になろうとしている元貴族。




 そんな存在が立派な貴族夫人に関わるなんて出来ればしない方がいいだろう。とは思うけれど、もし向こうが……私が手紙を出しても構わないというのならば、あの時は突っぱねてしまってごめんなさいぐらいは言っておきたい気もした。ああ、でもそれって私の自己満足でしかないかもしれない。

 友人達にとっては私のことってもう、過去でしかない可能性の方が高い。だから過去に関わった人と関わることは少しだけ躊躇する。



 それに私が友人と交流をまた持つようになったら、それこそ私の現状が耳に入っては欲しくない人にも知らされるかもしれない。……そうなったらどうなるんだろうか。私が平民として生きることを拒否する人も出てくるかもしれない。

 そこまで考えてぶんぶんっと首を振った。




 悪い想像ばかりをしていても仕方がない。今は、生活を一人でもできるようにもっと整えていくことが大事。

 体力をつけて、働く時間を増やすこと。




 それでいてお金が貯まったら、住まいも自分で見つけた方がいいかもしれない。貯金も増やして、自分が出来ることを増やす。

 まだまだ私は貴族令嬢としての感覚が消えていないから、もっと平民として生きていけるようにしなければ!


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