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引きこもり令嬢(三十歳)の再起  作者: 池中織奈


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15.魔物のスタンピードに思いをはせる。

 魔物のスタンピードと呼ばれるものがある。前世で漫画などではよく見かけた記憶だ。



 私が公爵令嬢として生きていた頃は、スタンピードへの対応にも赴いたことがあった。民を守る義務があるからって、私は魔法を使って人助けをしたりしていた。魔物の対応もそつなくこなせていた。

 あの頃の私は、民を守ることが出来ると自分の行動を誇りに思っていた。

 人が亡くなってしまう可能性がある。それに関わりのある冒険者達だって駆り出されるだろう。



 ――知り合いが、亡くなってしまうかもしれない。

 それを考えるとぞっとした。私が、昔と同じように魔法を使いこなせるようになっていたら……また別だったのにな。




 そもそも過去の出来事で、私がショックをあんなに受けなければ引きこもったりはしなかった。

 魔法がちゃんと使えたら、私はまだ貴族として生きていたと思う。だって私の心が完全に折れたのは、魔法が使えなくなってしまったことも一つの原因だったから。



 ……もし、目の前に魔物が現れた時、私は魔法を使えるだろうか。まともに魔法が使えるのならば、何の問題もない。



 私自身の命も、周りの命も守れるだろうか。

 今の何もかも失って、少しずつ立て直している状況だ。



 私はこんな状態で、外に出た。前に進むために。頑張りたいって決めたから。

 それでもこうして不測の事態が起きようとしていると、もっと整えてから引きこもりをやめた方が良かったのかなってそんな気持ちにはなった。

 ただ私はそれでも……こうしてもう前に進んでしまっている。ならば、頑張るしかない。出来る限りのことをしよう。私に何が出来るのか分からないけれど。



 スタンピードにこの街は慣れているんだろうか。

 慣れているのならば問題ないけれど、このあたりで久しく起きていないなどだったら体験談などを話に行った方がいいだろうか。



 それにしても昔の私って、前衛職で裏方の仕事なんかは全然していなかった。なんとなく、手順とかは知っているけれどそのくらい。これからきっと回復薬などの素材も沢山必要になる。



 冒険者達も凄く忙しくなるんだろうな。表で戦う人たちも、裏で支える人たちも。全員バタバタしていくはず。

 お兄様も……公爵家の一員として領民達を守るために行動を起こすだろう。



 ――私は何が出来るのだろうか?

 そんな思考が出来るようになったのは、前世の記憶を思い出したからこそだろう。そうじゃなければこんなにも周りのことを想像することは全く出来なかった。




 私が引き籠っていた間にもきっと同じように、危機的状況に陥ったり、問題が起きたりはしていただろう。それを両親やお兄様達は、貴族として対応をしてきたはずだ。

 それこそ今回起ころうとしているスタンピードに関してもそうだろう。




 貴族として、国内で起きた問題に向き合っていたはずだ。……私は引きこもりになっていて、一切そういう貴族としての義務をこなしてこなかった。そんな私が家から見捨てられそうになっても仕方がないのは当然だった。




 結局自立しようとしている私も、家の助けを借りなければ今の生活が出来ない。




 スタンピードが起こる中、私は当たり前のように此処で過ごしていていいのだろうか。そんな罪悪感を抱く。

 戦うことは出来ない。だって魔法以外に、私は戦う術を持たないから。それに……引きこもっていて、以前のようには動けない。痩せてきたとはいえ、まだまだ太っていて体力も全然ない。

 回復薬などに関しても調合をするような技術は持ち合わせていない。

 こう考えると私って、貴族令嬢としてしか生きてこなかったから出来ないことも沢山なんだなって思った。





 昔の私はなんでも出来て、何にでもなれると思っていた。自分は特別な存在だと思い込んでいて、無敵状態で。

 そんなわけないのにな、と呆れる。

 でもそんな風になんだって出来る状態になれたら、もっと私だって前向きに生きられるんだけどな。





 私はお兄様に手紙は書いた。私に出来ることが何かあったら教えて欲しいと。……今の私には使える人脈も何もないけれど、何か一つでも出来ることがあるならやりたいなとは思ってしまった。

 周りのことを考えられるようになっただけで、私も成長したな。なんて、三十歳にして思った。うん、遅いわね……。



 あとはそうだ、ギルドとかにも何か手助けが出来ないか聞いてみよう。私の知識や経験は何か役に立つかもしれない。

 余計なことをするなと言われるかもしれない。それでも……今の私は戦うことは出来ないけれど、出来る限りのことはしたいから。



 そんな気持ちのまま、冒険者ギルドに言って何かしたいと伝えた。



 無償でも構わないと言ってしまったら、「逆に無償は困る」とそう言われてしまった。誰かのために何かをしようとすることは時には良いことではあるが、私が無償で何かすることは周りに正当に報酬がいきわたらなくなる可能性があるからって。



 少し考えればわかることなのに、そこまで気が回っていなかったと反省した。考えてみれば当然で、行動には報酬が与えられるべきだ。誰かが無償に何かをしたからって、他の人も労働搾取されるのはまた違う。

 スタンピードが起こるからと焦ってしまうのはいけない。

 そういうわけで私は食堂でのお仕事以外にも、ギルドの仕事を手伝うことになった。


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