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引きこもり令嬢(三十歳)の再起  作者: 池中織奈


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13.友人と共に昔話をしよう

 私の言葉を聞いて、益々グリターラは泣き出しそうな顔になった。彼女のそんな表情を見ると、私も何だか色んな感情がこみあげてきて泣きたくなる。



「私の方こそ、会ってくれて感謝しかありませんわ!! 私は……もう一生、あなたに会えないかと思っていましたから」

「私も、そうよ……。ちょっとしたきっかけがあって、こうして外に出たけれどそうじゃなければ私、おそらくずっと誰にも会おうとしなかったと思うから……」



 今の自分のことが恥ずかしかった。

 昔の私を知る人と、会いたくなかった。そんなことばかりを私は考えてしまった。



 前世の記憶を思い出したからこそ、私はこうして前に進めただけなのだ。





「そうなのね。マルグレッタが前を向いてくれてよかった……! でも平民になろうとするなんて本気なの? あなたなら……誰かに嫁ぐことだって出来るわ。それに貴族として生きて行くなら仕事も紹介出来るのに」




 グリターラからそんなことを言われてしまう。きっと本心なのだろうなとは分かる。貴族令嬢である私が平民になることに難色を示しているらしい。




「本気よ。私は貴族として生きて行くにはあまりにも……社交界から離れすぎていたもの。今更、戻れないわ。それにね、無理して貴族社会に戻っても私は耐えられないと思うの。昔の私を知っている人達ばかりでしょう」




 私はそう答える。前世の記憶を思い出したのもあるし、平民として生きる方がいいなと思ってしまっている。

 わざわざ貴族社会にしがみつくつもりも私にはなかった。正直ずっと引き籠っていて、社交界に戻れる自信もないしね。



「ただ……昔の友人とは交友を持てるなら持ちたいとは思うわ。もちろん、迷惑をかけない範囲でだけど」




 私は我儘なのだろうか。私は平民になりたいけれど、こうしてグリターラが会いにきてくれたからこそ……昔の知り合いにも会いたいなと思ってしまった。

 両方手にしたままがいいなんて、駄目かな。徹底して平民になるのならば、貴族とはそもそも関わらない方がいいだろう。

 ――そうは思うものの、私は過去を全て忘れ去って、捨て去っていきていこうとは思っていないのだ。




「もちろんよ。私だってマルグレッタとまた仲良くしたいもの。今までどおりは難しいかもしれないけれど……」

「そうね。あ、でも他の方々と会うのならば、それまでに痩せたいわ。これまでの不摂生から太ってしまったから……」

「他の皆にもしばらくしたらマルグレッタに会いに行くようにしましょうと伝えておくわ。マルグレッタは……あんなことが起こらなかったら、王妃になったっておかしくなかったのにと少しもったいないけれど、あなたが平民として生きて行くことを決めたのならば止めはしないわ」


 そう言われて、過去のことを思い起こす。そう、昔の私は王妃になってもおかしくなかった。




 公爵令嬢として生きて、当時の王太子殿下に恋をしていた。悪くない立ち位置には居たし、周りは勝手に私が王妃になると思い込んでいたりしていたと思う。



 ――そんな私が今、平民になろうとして此処に居る。

 向こうだって私のことを悪くは思っていなかった。年上の王太子殿下は私のことをそれなりに可愛がっていたし、仲良く出来ていたとは思う。

 ただ……王太子殿下と親しくなる女子生徒が出てきて、私は色んなことを出遅れた。




 自分の立場などが確固たるものだと思い込んで、失敗したのも引きこもりの一つの理由だ。



 恥をかくような出来事があって、上手く出来なかった。

 私はそれまで挫折の一つも知らない公爵令嬢だったからこそ、余計にショックを受けていた。

 だからこそ、グリターラももったいないと思うのだろう。私はそれだけの教育を受けてきたわけだけど、平民になったらそれらを活用する場所はほぼない。




「それはもう終わった話だわ。確かにあの頃の私は王妃になってもおかしくない身分と立場があったけれど、結局私は選ばれなかった。それにずっと引きこもっていて、貴族として生きて行くのももう難しいわ。あと私は今の平民生活を凄く気に入っているから、頑張るつもりなの」



 私がそう言って笑えば、グリターラは驚いた顔をした後、笑った。



「マルグレッタらしいわ。あなたはいつでも前向きで、堂々としていたもの。その顔を見ていたら、マルグレッタが本気で平民として生きて行こうとしているのが分かるわ。誰かに強制されたわけでもなく、自分の意思でそうしようとしているのだとよく分かるわ」




 ――グリターラは、貴族夫人として生きている。引きこもっていた私とは、立場は全く違う。

 それでも以前と変わらない笑みで、私のことを受け入れて微笑んでくれる。ずっと会っていなかったのに。



 なんだかこうしてグリターラと話していると、昔の、学生時代の頃を思い起こしてしまう。

 あの頃もこうやってよく二人で話した。

 一緒になって笑いあっていた頃のことを思い出すと、何だか昔に戻ったような感覚になった。




 今の私は、昔とは違う。

 見た目も変わったし、年も重ねた。それでも私とグリターラは、友人であるという事実は変わらない。




 それが分かっただけでも、また会えてよかったなと思った。


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