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ケンジ達はアルザス平原の西端、レムリア王国との国境に位置するカッセル砦に来ていた。
吹き晒しの石壁には、度重なる小競り合いで削られた生々しい痕跡が残っていた。
ケンジは馬車を降りるなり、手配していた荷解きを命じた。
「……ケンジ殿、これは?」
カッセル砦の守備隊長にケンジは淡々と答える。
「食料と質の良い麦酒です。……前線ではまともな食事ができていないと思いまして」
荷台から下ろされる食糧の山に、疲れ切っていた兵士たちの目に久々に生気が宿る。
「……それで、敵の状況はどうなっていますか?」
隊長は苦々しく地図を指差した。
「……不定期に十数騎単位で突っ込んできやがるんです。昨日も小競り合いがありました」
リィザが不敵な笑みを浮かべた。
「二度を来られないように叩き潰せばいいじゃない。……私の出番ね」
「……ああ、リィザ。敵が来たら君に任せるよ。俺も自分の仕事をやろうかな」
ケンジは戦場に背を向け、杖を手に取ると砦の外壁へと歩み寄った。
(マスター。砦の外壁に構造的疲労を確認。……土魔法で補修が必要な個所をピックアップします)
「……『地殻結合』」
ケンジが杖を突き立て、静かに魔力を流し込む。
地中の土がうねりを上げ、崩れかけていた石壁の隙間に潜り込んでいく。ケンジは補強を終えた壁の強度を指先で確認した。
「……念のために堀も作っておくか。『土壌沈降』」
外堀が出来上がり、掘り起こされた土は壁に貼り付けて固め、砦の防御性能を更に向上させる。
「……これで当面は大丈夫でしょう。……さて、隊長。今日はエールを振る舞って英気を養いましょうか。砦は補強しましたから敵も攻めてはこないでしょう」
ケンジの提案に砦の兵たちから地鳴りのような歓声が上がった。




