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翌朝、完成した黄金色のスムージー状の飲料と一緒にケンジたちは再び救護院へと向かった。
リィザも甲斐甲斐しく準備を手伝い、期待に目を輝かせている。
「ねえ、ケンジ。結局、この飲み物の名前は何にするの?」
ケンジは少し遠い目をして、故郷の空を思い出すように答えた。
「……『エナドリ』だ。俺の故郷に伝わる、戦う者たちが飲む、元気が湧き出る魔法の飲み物の名から取った」
「エナドリ……? なんだか不思議な響きね」
リィザが首を傾げる。もちろん、それが前世の社畜時代に嫌というほどお世話になった「エナジードリンク」の略称であることは言うまでもない。
「ああ、戦うもののための飲み物だよ……」
救護院に入ると、ケンジは前日に出会った、瞳の虚ろな少年の枕元に膝をついた。
「おーい、今日はおいしい飲み物を持ってきたぞ。……飲めるか?」
少年は、リィザに支えられながら、差し出されたカップを恐る恐る口にした。
料理人たちが「美味しく」改良したエナドリは、まろやかな甘みと、鼻に抜ける爽やかな香草の香りがする。
「……っ。おいしい、これ……」
一口、二口と飲み進めるごとに、少年の体に劇的な変化が訪れた。
青白かった頬に赤みが差し、虚ろだった瞳に、自分の手元を見る程度のしっかりとした「意志」が戻ったのだ。魔素の補給と高栄養の摂取が彼の代謝を一気に呼び覚ました。
「お腹が……熱い! ぼく、なんだか力が湧いてきた!」
その声は、静まり返った院内に響き渡った。
他の患者たちも、次々とエナドリを口にする。あちこちで「体が軽くなった」「お腹が空いた」という声が上がり、絶望に沈んでいた場所が、瞬く間に活気を取り戻していく。
「すごいわ、ケンジ! 本当にみんな元気になってる! 」
リィザが嬉しそうに走り回り、飲み物を配るのを手伝っている。その姿は、魔族たちの目には光を運ぶ女神のように映っていた。
その様子を、廊下の陰から見ていたゼノスが、深く、長く安堵の溜息をついた。
「安心するのは早いですよ、将軍。エナドリは魔素が戻るまでの一時しのぎです。次の段階へ進みましょう」




