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翌朝、俺は久しぶりにベルトランの冒険者ギルドへと足を運んだ。目的は一つ、「討伐依頼」を受けるためだ。
「あら、ケンジさん! お久しぶりです。最近、姿を見せないから心配していたんですよ」
受付のフィオが、俺の顔を見るなり身を乗り出してきた。
「少し……修行をしていまして。今日は討伐の依頼を受けに来ました。難易度高めのやつをお願いします」
「えっ? 難易度が高いもの……ですか?」
フィオが戸惑ったように眉を下げた。
「ケンジさん、冗談はやめてください。あなたは素晴らしい『事務』の才能があるんです。昨日も古文書の整理で困っている部署から問い合わせが来ていたんですよ。わざわざ危険な森に行くより、安全なギルド内での仕事を……」
「いや、冒険者としてここに来ているんだ。リィザもやる気満々だしな」
横からリィザが不敵に笑い、腰の剣を軽く叩く。 「心配いらないぞ、フィオ。私なら、森の奥の『大トカゲ』だろうが『牙狼』だろうが一捻りさ」
「ダメです! リィザさんの実力は知っていますが、 ケンジさんはまだレベル5なんですよ!?」
フィオが必死に止めようと声を張り上げる。周囲の冒険者たちも、俺たちのステータスを知っているだけに「無謀な新人が死に急いでいる」と冷ややかな視線を送ってきた。
「もめているようだな」
その時、背後から地響きのような低い声が響いた。 振り返ると、そこには全身に歴戦の傷跡を刻んだ、巨漢の戦士が立っていた。背中には身の丈ほどもある大剣を背負っている。
「……バルガスさん」
フィオが息を呑む。バルガス――この辺境都市ベルトランで五指に入る、腕利き冒険者だ。
「おい、あんちゃん。ギルドが止めるのには理由がある。実力に見合わない依頼は、死ぬだけじゃなく仲間の足も引っ張るんだぜ」
バルガスが威圧感を持って俺を見下ろす。
俺は一歩も引かずにバルガスの目を見つめた。 「実力があるかどうかは、現場で証明します」
バルガスは俺の目に宿る確信に、少しだけ毒気を抜かれたような顔をした。それから「はっ」と鼻で笑う。
「……いい目だ。だが、死なせるには惜しい。フィオ、その依頼、俺も『教育係』として同行するってことで受理してくれ。こいつらが無理だと思ったら、俺が首根っこを掴んで引きずり戻してやる」
「バルガスさんがそこまで言うなら……分かりました。依頼は『フォレストベアの討伐』です」
フィオは渋々ながら、完了証明書をカウンターに置いた。
「恩に切るよ、バルガスさん」 「勘違いするなよ、あんちゃん。俺はただ、事務の天才に死なれちゃギルドが困ると思っただけだ」
何とか討伐依頼を受けることができた俺たちはさっそく森へ向かった。




