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ギルドを出て数分、俺たちはベルトランのメインストリートを歩いていた。立ち並ぶ店舗には無骨な鉄剣や色鮮やかな布地が並び、見ているだけで異世界に来たことを実感させられる。


「さて、まずは何から揃えようか。魔法使いなら、やっぱりローブと魔力を増幅する杖かな?」


リィザが楽しそうに店を指差しながら聞いてくる。だが、俺は脳内のノアに相談した。


(ノア、今の予算で俺が真っ先に買うべきものは何だと思う?)


『提案します。まずは「普通の服」を揃え、周囲に溶け込んでください。そして、余った予算で「魔導書」を確保し、この世界の魔法体系をデータとして取り込むことを推奨します』


(普通の服に魔導書か。確かにコスパは高いな)


俺はリィザに、杖やローブではなく、動きやすい「普通の服」が欲しいと伝えた。彼女は少し意外そうな顔をしたが、「お前がそう言うならな」と、活気ある衣類店へ案内してくれた。


そこで俺が選んだのは、丈夫な麻のシャツに、ポケットの多い実用的なベスト、そして動きやすい濃紺のズボンだ。スーツに比べれば格段に動きやすい。


「よし、次は魔導書だな。……あそこに行ってみよう」


次に訪れたのは、街の静かな一角にある古めかしい書店だった。店内には独特な紙の匂いが漂い、難解そうな本が棚を埋め尽くしている。


「すみません、魔導書の棚を見せてもらえますか?」


俺は店主に断って、並んでいる本を数冊手に取った。パラパラとページをめくる。書かれているのは複雑な魔方陣や、この世界の言語で綴られた理論だ。


(……ノア、解析できそうか?)


『……スキャン完了。視覚情報を経由して、基本属性魔法の術式構成をすべてキャッシュしました。マスター、解析は終了しました。魔導書を購入する必要はありません』


(は……? もういいのか?)


『肯定します。完全にデータベース化しました。これより最適化を行い、マスターの知性レベルに合わせた行使手順を作成します』


(……生成AI、えぐいな。著作権とか大丈夫か? いや、この世界じゃ関係ないか……)


あまりの効率の良さに、俺は心の中で戦慄した。数分立ち読みしただけで、時間かけて学ぶ基礎知識をすべて「コピー」してしまったのだ。


『購入コストをゼロに抑えられたため、他の物資に資金を回すことが可能です』


そうは言われても、何も買わずに店を出るのは人として気が引ける。コンビニでトイレを使ったら何か買うタイプなのだ。


「……あの、すみません。本はもう少し勉強してからにします。代わりに、この魔力回復ポーションをいくつかいただけますか?」


俺はカウンターの脇に置かれていた小瓶を指差した。これなら消耗品だし、持っておいて損はない。


「おや、本はいいのかい? ……まあいいさ。魔法使いならポーションは必需品だからね。まいどあり」


店を出ると、リィザが不思議そうに俺を覗き込んできた。


「なんだ、あんなに熱心に読んでたのに買わなかったのか? さすがのお前でも難しすぎたか?」


「まあね……。それより、さっきのポーション、一瓶はリィザに持っておいてほしいんだ」


「私に? 荷物持ちってことか」


「違うよ。身体強化も魔力を使うだろ。いざという時の保険だよ」


俺がポーションを差し出すと、リィザは「ありがたく貰っておくよ」と嬉しそうに笑って、それを腰のポーチに収めた。

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