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「ここが、ベルトランの冒険者ギルドだ」


リィザが意気揚々と押し開けた大きな扉の先には、むせ返るような熱気が渦巻いていた。 広いホールには、傷だらけの革鎧を着た男たちや、ローブを纏った魔導師たちがたむろしている。酒と鉄、そして獣の匂いが混ざり合った、いかにも「異世界のギルド」といった雰囲気だ。


「……リィザ、やっぱり目立つな、俺」


俺は隣を歩きながら、身を縮めた。 村にいた時はそれどころではなかったが、改めて自分の格好を見ると、あまりに場違いだ。ビジネススーツに革靴、そしてネクタイ。


荒くれ者たちが集まるこの空間で、俺だけが「営業回り」をしているような違和感を放っている。


「なんだ、あの格好は? 」 「剣も杖も持っていないぞ。……召使いか?」


周囲から飛んでくる、遠慮のない視線とヒソヒソ話。リィザはそんなことはお構いなしに、ずんずんと中央のカウンターへ進んでいく。


「おい、報告だ! ザグ・ロードの耳を持ってきたぞ」


リィザがカウンターに革袋をドサリと置くと、酒場の方が一瞬静まり返った。 「ザグ・ロード……? あの上位種を、リィザがやったのか?」


「一人じゃない。私の『有能な相棒』が手伝ってくれたおかげさ」


リィザが親指で俺を指すと、受付の男だけでなく、周りの冒険者たちの視線が一斉に俺に集中した。


(ただでさえスーツで目立っているのに、これ以上注目を集めるのはやめてくれ~)


『マスター、視線によるストレス値が上昇しています。』


(ここは社会人スキルを見せてやるぜ)


俺はスッと背筋を伸ばし、営業スマイルを浮かべた。 「……どうも、はじめまして」


その丁寧すぎる挨拶に、冒険者たちは毒気を抜かれたように「なんだあいつ……」と顔を見合わせている。


「……まあいい。リィザ、討伐は確認した。報酬は後で渡す。ところで、そっちの連れは何者だ」


受付の男が俺を見た。リィザがニッと笑って俺の背中を叩く。


「私の相棒さ。ケンジ、こっちへ来い。冒険者登録の窓口だ」


俺はリィザに促されるまま、隣の「新規登録窓口」へと向かった。 いよいよ、この世界での就職活動が始まる。

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