1
「佐藤さん。これまでの貢献には、本当に感謝しているんですよ」
課長は申し訳なさそうな顔をしていたが、言葉に温度はなかった。
中堅メーカーの事務員として二十年。四十歳、独身。真面目だけが取り柄だった俺に突きつけられたのは、無情な 宣告だった。俺の仕事は、最近流行の「生成AI」に奪われたのだ。数日かかっていた書類も、いまや若手社員が「 指示」を打ち込むだけで、俺より速く正確に完成してしまう。
「会社も効率化しなきゃいけないんです。わかってください」
わかってください、か。俺の居場所を奪ったのは人間じゃない。この怒りをぶつける相手はどこにもいなかった。
その日の帰り道、俺は空に向かって吐き捨てた。
「AIなんて、この世から消えちまえ。あんなもののせいで……俺の人生は……」
信号が赤に変わったことにも気づかなかった。 すさまじいブレーキの音。横から迫る巨大なトラックの影。身体にすさまじい衝撃が走り、俺の視界は上下逆さまに回転した。 アスファルトに叩きつけられた衝撃で、肺の空気がすべて押し出される。
(……ああ、俺の人生、こんな形で終わるのか……)
口の中に広がる鉄の味と、薄れゆく意識の中でのんきな声が聞こえた。
『あー、次はサトウさん。死因は交通事故。うわ、頭の中が「生成AI」でいっぱいだ。そんなに好きならギフトは「生成AI」で決まりだな。!はい、 転生完了!』




