第2話 ギフトは期限切れ前の「消える」スキルでした。
ー転生前 2025年 東京ー
渋谷駅のホームは、夕方のラッシュ時で人の波が絶えなかった。
電光掲示板の赤い文字が次の電車の到着を知らせ、構内にはざわめきとアナウンスが入り混じる。
うらしま三太郎はコンビニの袋をぶら下げて立っていた。珍しく早く終わったアルバイトの帰り。
大学を出てもう十年。気づけば、何も変わらない毎日。
スピーカーから冷たい機械音声が流れた。
アナウンス「まもなく電車がまいります。 白線の内側におさがりください」
その直後、「痴漢だー!誰か捕まえろ!」との怒鳴り声が
三太郎が後ろを振り向くと、血相を変えた男が突進してくる。
思わず避けようとしたが、弾き飛ばされ、ホームから落ちそうになる。
手をグルグル回し ホームの先端でバランスをとる三太郎ちょうど入線の車体が鼻先をかすめ、車体の角にスコン!と当たり、弾き飛ばされて地面に頭を打ちつけ……血が広がる。
ホームは悲鳴が上がり、騒然となる。
ー天界ー
次に目を開けた時、そこは真っ白な世界だった。床も天井も地平線もなく、上下の感覚さえ曖昧な空間。
まるで雲の中にいるように、どこを見ても白一色で、温度も匂いも存在しない。正面に、豪奢な椅子に腰掛けた女性が こちらを見ている。
自分が浮いているのか 地面の上に立っているのか わからない。白いローブを身につけた美しい女性が微笑み、ゆったりとした声で告げる。
見知らぬ女性「気が付きましたか三太郎」
三太郎 「はい」
見知らぬ女性「私は女神 女神様とお呼びなさい」
三太郎 「???」混乱している。
自称女神 「あなたは死にました」
三太郎 「……」
自称女神 「あなた私のこと 自称女神だと思いましたね 本当に女神ですから」
「まだ混乱しているから まぁ仕方ないでしょう」
「痴漢に弾き飛ばされ、ホームから落ちそうになったところに電車が入線。スコン!と、良い音を立てて地面に頭を打ちつけ死亡です」
「私が女神になって一番笑ってしまったので、転生させてあげることにしました サービスですよ」 「まぁ、あなたのおかげで痴漢も倒れ取り押さえられましたが」
「あなたのおかげで山手線の外回りは帰宅時間だと言うのに1時間もストップ」
「しかし、スコン!て、プププ……アハハハハハハハハハハハ」
顔を真っ赤にする三太郎(恥ずかし)
自称女神 「あぁおかしい まぁ いじめるのはここまでにして」
「転生するにあたり あなたに素敵なギフトをプレゼントがあります」
三太郎 「こんな自分に……自称女神様 ありがとうございます」
自称女神 「女神です!」
三太郎 「わかりました キレイな女神様 素敵なギフト よろしくお願いします」
キレイな女神「惜しいです。私は絶世の美貌を持つ女神です。まず訂正しなさい」
三太郎 (面倒臭いな)
面倒臭い女神「面倒臭い女神とは何事です!」
三太郎 「すいません 訂正させてください 絶世の美貌を持つ女神様」
上の下の女神「……本心は違うみたいですね」
上の下の女神「あなたに与えるギフトは 同じような死に方をしないように「消える」というスキルです」
「ちょうど余っていたのであげます!」
(期限切れ前に配っとかないと勿体なくて)
「使い方は簡単です 大きな声で「ダルマさんが転んだ!」と言えば消えるコトができます」
三太郎 「あのー その合言葉 どうにかなりませんか?」
上の下の女神「なりません!これは決まりです!イヤなら使わないで下さい!」
三太郎 (チェ……ケチ!)
ケチな女神 「ケチな女神とは何ですか!」
ケチな女神 立ち上がって三太郎の前まで来ると無言で頬を往復ビンタ ペシッ ペシッ ペシッ
三太郎両頬に手をやって「許して下さい」
女神は自分の席に戻ると
怖い女神 「このスキル 注意が3つあります」
「ひとつ目は、1分間しか消えてられません」
「二つ目は、再び消えるためには3分のインターバルが必要です」
「三つ目は、最重要です。このスキルのこと誰にも知られてはなりません」
三太郎 「知られたら どうなるのですか?」
怖い女神 「あなたは皆の記憶から消えます。2度と消えるスキルも使えなくなります」
「それと、安心してください 裸にならなくても服とか装備程度なら一緒に消えます」
「では、あとは転生基本セット」
「言葉や文字の理解 最低限の服と当座のお金を付け足しときます」
三太郎 「キレイな女神様 もうひとつだけお願いします」
キレイな女神「何ですか 調子良いですね」
三太郎 「田舎に残した母がいます」
「何とか 女神様の力で 困らないように してあげてもらえませんか」
キレイな女神「あ!それは大丈夫です。あなたのお母さん あなたに知らせず二年前にお金持ちの人と再婚してます」
三太郎 「え……そうなんですか……」
キレイな女神「前の人生のことでしてあげられるとすれば、そうですね……」
「お気に入りのHな本やDVDは処分しなくても良いですか?」
三太郎は頭を下げ「よろしくお願いします」
キレイな女神「あ!そういえば あなた、前世で爆発事故起こして火傷と左手の小指をなくしたでしょ」
三太郎 「突然どうしたんですか!あの事故が原因で就職もできず、自分の黒歴史です!」
キレイな女神「どうします。転生で元のように戻せますが」
三太郎 少し考えて「いや このままでお願いします あれも俺の人生なんで」
キレイな女神「そうですか 意外と真面目なんですね」
「では、さよなら 今度は寿命をまっとうして下さい」
「2度目の人生を楽しんで下さい」
何かに吸い込まれるように落ちていく感覚の三太郎「ひぇーーーー!!!」
ーイースト・ドラゴンズ・バレー王国 王宮の牢屋ー
気がつけば王宮の牢屋に転生
そこは、石造りの牢屋だった。壁は苔むし、湿った空気が鼻をつく。遠くからは水滴の落ちる音が響き、冷たい鎖の擦れる音が聞こえる。
三太郎 「……え、牢屋スタート!?」
廊下に等間隔にロウソクに火が灯されているだけの暗い部屋
鉄格子の向こうの牢屋から、青白い顔をした囚人が目を丸くして声をかけてきた。
囚人 「お前 どこから現れた?」
三太郎 (確か消えるスキルは人に見られちゃダメだったんだよな……)
「あれ そこの後ろに何かいますよ」と囚人に後ろを向かせた瞬間
先程教えてもらったばかりの「ダルマさんが転んだ!」を叫んだ。
次の瞬間、身体がスッと透明になり
三太郎 「おお、本当に消えた! 鉄格子は……すり抜けられるのか?」
囚人 「脅かしやがって 何もいないぞ……ん」
囚人 「な、なんだ??? 誰もいない オレ、夢でも見てたのか?」
鉄格子に手を伸ばす三太郎 そーっと、すり抜けられることを確認。
三太郎 「ヨシ!」と鉄格子をすり抜ける。
囚人 「看守さーん! 前の部屋亡くなった囚人のオバケがいる 他の部屋にして……」と叫ぶ
三太郎は階段を登りはじめるが 1分経ち元に戻る。
そこに看守が現れ 三太郎と目があう。
看守 「不審入者だー!」
三太郎は反対側に逃げる。牢屋の奥の方に逃げ 物陰に隠れる。
数名の警備兵が駆けつけ看守と一緒になり迫ってくる。
看守 「そっちの奥は行き止まりだ」と余裕を持って歩いて近づいてくる。
物陰から「ダルマさんが転んだ!」という声が・・・
看守 「そこか!」
しかし、行き止まりには誰もいない。
看守 「どこに隠れた?」
警備兵 「本当にいたのか?」
看守 「今、お前も変な声を聞いただろう」
囚人が牢屋から「だからオバケだって」
三太郎は転生し、すぐに「消える」スキルで命からがら牢屋を脱出することが出来たのであった。
――これが、1年前の話だ。
ー王宮 会議室ー天井は高く、壁には歴代の王を描いた大きな肖像画が掛けられている。
重厚な円卓を囲むのは、この国を支える重鎮たち。
王様(獣人の血が混じる小太りの初老 頭に王冠(王冠で見えないがロバの耳)・上半身裸・大きめのパンツ)は玉座にゆったりと座り
宰相(地味な感じの小太りの老人)が会議を取り仕切る。
フラワー神父(この国で王宮に負けない力を持つダラク教の神父 頭の上に赤い花 金色の神父服の紳士)
侍従長・騎士団長・冒険者ギルドマスターも参加
宰相 「勇者の剣の鑑定結果が出た。まず間違いなく本物であるとのことだ」
ギルマス「三太郎はドラゴンのいる あの禁断の地にひとりで行って、勇者の剣を持って帰ってきた以上 勇者の資格は十分 説明の余地はないでしょう」
神父 「ダラク教の教えから言って、もう今の時代 勇者など必要ありません! 勇者など暴力の象徴です!」
「これまでも勇者がいなくても、やってこれたではないですか?」
やいのやいの と続く会議
宰相 「では そろそろ採決を取りましょう」
「うらしま三太郎氏が、勇者に相応しいと思う人」
王様以外で採決 フラワー神父は反対するものの 他の者達の賛成で 三太郎に「勇者」の称号を与える事が決定
腕組みをし憮然とした表情のフラワー神父
宰相 「王様 そう言うことです」
王様 首を縦に振る。
ー勇者の称号を授与される前日の夜 冒険者ギルドー
冒険者ギルドの1階に併設されている酒場は、いつも以上に賑わっていた。
木製の長机には山盛りの料理、酔った冒険者たちの笑い声、踊り子の足音。ジョッキをぶつけ合う音が絶えず響き、香ばしい肉の匂いと濃い酒の香りが漂っている。
勇者の称号を授与される、そんな前日だというのに。
落ち込んでいる三太郎の姿に気づきながらも、周囲の冒険者たちは誰ひとり声をかけようとしなかった。
陽気な歌声と笑い声が響く空間で、彼の席だけがぽっかりと孤立していた。
そんな三太郎の前にボーンヘッドのアクジョとアサジエが……
アクジョ「ぼうや 何か悩んでいるの」とグラスを持って現れる。
三太郎の前にグラスを置くと 三太郎の前の席に足をクロスして座り 長いパイプを吸いながら 三太郎に話しかける。
アクジョ「あなたの実力を高く勝ってる一人として アドバイス」
「それ以上ランクを上げるには絶対仲間が必要よ」
三太郎は下を向いて ブツブツと独り言 何も聞いてない。
三太郎 (すべては「消える」スキルのおかげで、ダンジョンからお宝装備取り放題で 冒険者レベルBランクまで上がったけど、オレは装備を脱げばEランクの中でも底辺)
アクジョ「光栄に思いなさい、わたくし達が特別に仲間になって差し上げてよ」
「このギルドNo2のわたくしと、このベテラン冒険者があなたの協力をするわ」
テーブルの横に立っている男がつぶやく
アサジエ(小声)「アクジョ様は 三太郎に抜かれてNo3だけどな……」
アクジョ「何か言った?」
アサジエは首をブルブル振って「い、いえ!」
アクジョ「私たちが手を組めば、あんなエースなんて筋肉バカにでかい顔させなくてよ」
三太郎は下を向いて ブツブツと独り言 何も聞いてない。
三太郎 (防御に関しては装備がモノを言うからAランクになるけど)
(攻撃はSランク級の武器でも 自分に力も技もないから 宝の持ち腐れ状態)
(せいぜいC いやDランクの冒険者と同じぐらいのレベル)
アクジョ「ただし、あなたのランクアップを手伝う代わりに お宝装備を分けて頂戴」
「どう?WinWinの関係でしょ」
アサジエ「三太郎 おい聞いているのか?」
三太郎は下を向いて ブツブツと独り言 何も聞いてない。
(魔王は、この世界に5人しかいないSランク冒険者でも無理だと言う噂)
(その魔王を倒す役目が勇者て……これ死ねって言われてるようなもんでしょ)
アサジエ「おい お前痛い目に合わないとわからないのか?」
アクジョ「おやめ!そう、そういう態度とるのね」と言うと立ち上がり
「わかったわ わたくし達を敵に回したいのね。後悔させてさしあげますわ」
「さー行きましょう」と言って去っていく。
三太郎は下を向いて ブツブツと独り言 何も聞いてない。
(なんで、何も悪いコトしてないのに死刑宣告 受けなきゃ行けないんだよ)
「……」
三太郎は周りをキョロキョロして
「あれ?誰かいたような」
「なんだ このグラス 俺頼んだっけ?」
お読みいただきありがとうございます。
次回も三太郎は全力で逃げます。
第3話は、4/2 20:00 公開予定です。よろしくお願いします。




