ツインテール姐さん、一番星号で東大阪を爆走す!
週末の東大阪の昼下がり。
またしても祖父・清一の家で、美月はテレビに釘付けになっていた。
画面には――
デコトラの巨体が夜道を走り抜け、
ど派手な電飾がギラギラと光り、
主役の男が名セリフをぶっ放す。
美月
「……じいちゃん……これ……めっちゃカッコええやん……!」
清一
「せやろ。これはな、日本の“浪花節トラック映画”や!」
その瞬間、美月の瞳に星が宿った。
翌日には、もう完全に“あの世界の住人”になっていた。
蓮
「み、美月ちゃん……?なんで胸張って歩いてるん……?あと声低ない……?」
美月は仁王立ちで蓮を指差し、
突然、映画そのままの口調で叫んだ。
「行くぜェ!ジョナサン!!」
蓮
「え!?え!?だ、誰!?ジョナサンって!?!?」
(※混乱度:過去最大)
美月
「蓮、お前は今日からジョナサンや!
ウチら二人で東大阪の夜を走るんや!!」
蓮
「走らん!!怖い!!意味わからん!!???」
しかし美月のテンションは止まらない。
家に帰った美月は、押入れから段ボールを大量に引っ張り出す。
父・真人
「……嫌な予感すんねんけど……何始めたん?」
美月
「決まっとるやろ!一番星号や!
ウチ専用のトラック作んねん!!」
母・春菜
「また変なのに影響されてる……!」
美月はクリスマスツリーの箱を勝手に開け、
電飾を全部引っ張り出して段ボールの車に巻きつける。
結果――
家の中に、異様に光る箱が現れた。
真人
「お前……それ……家の中だけやで?走ったらアカンで?」
美月
「アホ言うな!魂が走んねん!魂が!!」
春菜
「魂やなくて電飾点滅してるだけ!!」
そして翌朝――
蓮が見たのは、
電飾ギラギラ、段ボール貼りまくり、
子どもとは思えない気迫で押されてくる美月の力作だった。
美月
「ジョナサン!!出発や!!」
蓮
「??? え? え??? うそやろ……???」
美月はデコトラらしくハンドルの真似をしながら叫ぶ。
「東大阪の夜空に!
一番星が輝くんやでぇぇ!!」
蓮
「昼間や!!」
美月
「魂が見えるのは夜や!!」
蓮
「見えへん!!」
近所のおばちゃんたちが爆笑した。
「あらあら、赤嶺さんとこの美月ちゃん、今日はトラック乗ってるん?」
「段ボールやのに迫力すごいで……」
「ほら見て、蓮くんめっちゃ混乱してるわ」
蓮
「(助けてください……??????)」
段ボールの一番星号は、その日のうちに灯りがショートして停止したが、
美月は誇らしげに胸を張って言った。
「ジョナサン……これが“男の走り”や……!」
蓮
「???(※もう返す気力ゼロ)」
家に帰ると、両親が揃ってため息。
春菜
「ほんま、あの子は毎回どっかの映画の世界に入り込むわ……」
真人
「でも、まあ……元気でええやん。
次は何に影響されるんやろな……?」
美月はツインテールを揺らしながら言った。
「ウチはな!
東大阪の一番星になるんや!!」
春菜
「知らんけど頑張り……」
こうして――
ツインテール姐さんの“デコトラ期”は、
東大阪に一瞬だけ謎の光を降り注いだ。




