ツインテール姐さん、哀愁を背負って東大阪に降り立つ
東大阪のある日の午後。
美月は祖父・清一と並んで、古い任侠映画の再放送を食い入るように見ていた。
吹雪、鉄格子、白い息、無口な男の背中。
あの独特の語り口と哀愁の芝居に、美月の脳みそは一撃で貫かれた。
翌朝――美月は変貌していた。
ツインテールそのまま、しかし背中だけ冬の北海道。
表情はなぜか曇り空。
口調は完全に“網走のあの人”。
蓮
「み、美月ちゃん……?え?なんでそんな顔してんの……???」
美月、滑り台を見つめながらゆっくり言う。
「蓮……
この町も……すっかり変わっちまったなぁ……」
蓮
「???」
蓮は本気で理解不能。
昨日も同じ公園で同じ滑り台で遊んでいた事実すら消し飛ぶレベルの哀愁。
美月は滑り台の手すりをそっと撫でる。
「ここはな……昔、ウチらの笑い声がよう響いとったんや……
それが……今じゃこの通りや……」
蓮
「?????????」
(※昨日と完全に一緒の状況)
公園に到着した母・春菜。
「美月〜!そろそろ帰るで〜!」
美月はスローモーションで振り向き、渋い声で言う。
「母ちゃん……ウチはな……
この街の“風”を感じていたいんや……」
春菜
「……え?なにその声?誰???」
蓮
「ぼ、ぼ、ぼくにも分からへんのです……???」
美月はさらに肩を震わせながら続ける。
「ゆうべの雪が……ウチの胸にも積もっとるんや……」
春菜
「東大阪に雪降ってへん!!」
蓮
「???????????????」
近所のママたち、騒然としていた。
「ねぇ見て……赤嶺さんちの美月ちゃん、なんか渋くない?」
「声が昭和の男前やねん……」
「5歳で人生背負ってる背中してるんやけど……」
美月は哀愁のままジャングルジムに手を置き、つぶやく。
「兄弟……
この町も……いつか変わる日が来るんやろな……」
蓮
「きょ、きょ、兄弟って誰のこと!?ぼく!????」
春菜
「今日の美月、本気でやばい!!」
蓮
「?????????????????????」
(※蓮はずっと混乱の極地)
祖父・清一が現れ、すべての原因を一言で説明した。
「昨日な、網走が舞台の映画一緒にみてたんや」
春菜
「なんでそんな渋いもん5歳に見せるんですか!!」
清一
「ええやんけ、人生勉強や」
春菜
「勉強ってレベルちゃう!!」
蓮
「????????????????????????」
(※蓮、限界)
美月は最後まで渋い背中を見せつつ帰宅しながらつぶやく。
「今日も……東大阪の風は冷たかったな……」
春菜
「暑いわ!!真夏や!!」
蓮
「?????????????????????????????」
こうして――
ツインテール姐さんは一日だけ北の男を憑依させ、
東大阪の公園を“網走ロケ地”に変えてしまった。
翌日には何事もなかったように戻ったが、
蓮の中にだけ奇妙なトラウマが残った。




