ツインテール姐さん、迷子センター完全掌握
東大阪の夏祭り。
焼きそばの香り、金魚すくいの呼び声、浴衣姿の子どもたち――
その賑わいのど真ん中に、ツインテールを揺らす赤嶺美月の姿があった。
蓮は、はぐれないように美月の袖をぎゅっと握っていた。
「み、美月ちゃん……ひ、人多すぎて怖い……」
「大丈夫や。ウチがおる。筋通せへん奴だけ注意したらええねん」
そんな美月の言葉を吹っ飛ばすように、
突然――
「迷子でーす!迷子さんいまーす!」
「こっちも迷子!お母さん探してます!」
迷子アナウンスが連続で響き、祭りは一気に騒然となった。
蓮は顔面蒼白。
「み、美月ちゃん……どうしよう……」
美月は迷子センターを指差して言い放った。
「ウチが行く。あれ、完全に人手足りてへん。
あのままやと迷子、増える一方や」
蓮は止める暇もなく、美月は迷子センターに突撃した。
中では大人のスタッフが大慌て。
「ええっと、この子のお母さんは……」
「名前は……聞いたっけ?」
「えっ、さっきの子どこ行った!?」
完全にパンク状態である。
美月は胸を張って言い放った。
「こっからはウチが采配する。
迷子センター、任侠式で回すで!」
スタッフは意味が理解できる前に、美月の行動力に巻き込まれた。
美月は即座に指示を出し始める。
「蓮!あんたは“聞き込み班”の班長や!
迷子の特徴、周辺の大人に聞いて回れ!」
蓮は震えながらも走っていく。
「こっちの子らは“手配班”な!
チラシみたいなん作って貼り出して!
名前と特徴書いて、大きく書き!泣いたらアカンで!」
周りの子どもたちまで巻き込まれ、“迷子対策チーム”が瞬時に結成。
さらに美月はスタッフに向かって、
「おっちゃんらは拡声器で呼びかけ続けて!
聞こえ悪かったらウチが代わったる!」
結局、スピーカーまで奪う勢いだった。
その結果――再会ラッシュが始まった。
「お母さん!!」
「よかった〜〜!」
「ありがとうね、ちっちゃい姐さん……!」
迷子センターは拍手とお礼の嵐。
いつのまにか美月は、
迷子センターの中央に“座長”みたいに座り、
地元の大人たちが自然に頭を下げる状況になっていた。
蓮は息を切らせて戻ってきた。
「み、美月ちゃん……また一人、お母さん見つかったって……!」
「よっしゃ。蓮、仕事早いな。褒めたるわ」
蓮は感動で涙目。
祭りのスタッフは口をそろえて言った。
「今日の迷子センター、一番役に立ったの……子どもやったな……」
その夜、SNSには“ツインテールの小さい子に助けられた”という書き込みが複数上がり、
地元でちょっとした話題になった。
帰り道、蓮が言う。
「み、美月ちゃん……すごかったなぁ……
なんであんなに迷子の気持ちわかるん……?」
美月はにっこり笑った。
「そらそうや。泣いとる子を助けるんが筋ってもんや」
その言葉に、祭りの夜風が優しく吹いた。
――この東大阪の祭りは、
ツインテール姐さんに完全に掌握された日として、
長く語り継がれることになる。




