ツインテール姐さん、積み木裁判で天下統一
東大阪の幼稚園。
昼休みの遊戯室で、蓮は珍しく集中していた。
積み木を積んで、積んで、積んで――
気付けば園史上最大級の“巨大タワー”が完成していた。
「み、美月ちゃん……!ぼ、ぼく、できた……!」
蓮は誇らしげに胸を張る。
美月は目を細め、腕を組んでうなずいた。
「ようやったな蓮。これは襲名レベルの仕事やで。
今日から蓮は“積み木一門”の若頭や」
蓮はよく分かっていないが嬉しそうに笑った。
その時だった。
「えーい、こんなん倒したろ!」
他のクラスの子が走り込んできて、
――バシャーンッ!
蓮の大作タワーは無惨に崩れ去った。
蓮の目から大粒の涙がボロボロと落ちる。
「ひ、ひどいよぉぉ……!」
美月のツインテールがふっと硬直した。
そして、ゆっくりと犯人の子へ向き直る。
「おい、お前。なんで壊したんや?」
相手は反抗的に言い返す。
「別にええやん!遊びやろ!」
その瞬間――
美月の目に、仁侠映画仕込みの炎が灯る。
「遊びは遊びでもな、筋が通っとらん遊びはアカンねん。
今から“無血開城”で話しつけるからな」
美月は蓮を背にかばい、
ちっちゃな体で堂々と“談判”を始めた。
が――話はなぜか長引く。
次第に周りに子どもが集まり、
なぜか椅子が並べられ、
先生まで巻き込まれ、
最終的には“園内裁判”へと発展した。
美月は被害側の“弁護人”。
タワー破壊犯は“被告”。
先生は“裁判長”。
ギャラリーの園児は陪審員。
「ええか裁判長。蓮はな、汗と涙と努力の結晶を積み上げたんや。
それを理由もなく壊すんは、義理も人情も欠けた行為や!」
蓮は横で鼻をすすりながら感動している。
被告の子も負けていない。
「だって転びそうになってん!わざとちゃうわ!」
美月はハッとする。
「……ほな、ワザとやないんか?」
「ちゃうわ!」
「筋が通っとるやん……!」
一気に空気が和らぐ。
美月は裁判長に頭を下げる。
「裁判長。両者、悪意なし。
ここは和解でどうでっしゃろ」
先生は思わず笑ってしまう。
「はい、和解成立〜」
ギャラリーの園児たちが拍手。
美月は被告の子に歩み寄る。
「ほな一緒に作ろか。もっとデカいタワー」
「……ええの?」
「もちろんや」
こうして、
蓮・美月・壊した側の子どもたち・ギャラリーまで巻き込んで、
巨大な“東大阪タワー”が再建される。
蓮は泣きながら笑い、美月に抱きつく。
「み、美月ちゃん……ぼ、ぼくのタワー……ありがとう……」
「アホ。蓮一人のタワーやない。
今日からこれは“みんなのタワー”や」
ツインテールがゆるっと揺れ、
園児全員の笑顔が遊戯室に広がった。
――筋を通し、争いを無血で終わらせ、
最後は団結で仕上げてしまう幼女。
この日も、ツインテール姐さんは見事に事件を片付けた。




