ツインテール姐さん、順番抜かし殲滅戦
東大阪の公園。
昼下がりの滑り台には、幼児たちがきちんと列を作っていた。
列の先頭には、もちろん赤嶺美月。
ツインテールが風でふわりと揺れている。
横で蓮が安心したように言った。
「み、美月ちゃん……今日は平和っぽいで……」
「平和は守ってなんぼや。油断したらアカン」
ところが――その油断しない美月がいるにも関わらず、事件は起きた。
「どけや、ちっちゃいの。俺ら先いくで」
小学生3人組が堂々と割り込んできた。
“抜かし三兄弟”と呼ばれ、地元では悪い意味で人気のある連中。
幼児たちは一瞬で怯え、蓮は膝を震わせた。
「み、美月ちゃん……ど、どないするん……?アイツら小学生やで……?」
美月は静かに振り返った。
その目が変わる瞬間、蓮は知っている。
怒りによって、美月の口から“広島の任侠の魂”が目覚めるのだ。
そして――小学生の前にゆっくりと立つと、低く唸るような声で言った。
「おんどれら、何しよんかわかっとるんか?」
突然の広島弁。
5歳児とは思えない迫力。
小学生たちは思わず固まった。
「は、は? 順番ちょっと抜かしただけやろ……?」
「“ちょっと”で筋が曲がるんが一番タチ悪いんじゃ!
弱いもん泣かす真似しよったら――ワシが黙っとれんのじゃ!!」
蓮は恐怖でへたり込む。
「み、美月ちゃん広島弁出てる……!ヤバいスイッチ入ってる……!」
美月は一歩、また一歩と小学生たちに迫る。
ツインテールが後ろで獲物を狙う獣の尻尾みたいに揺れていた。
「ここはみんな並んどるんじゃ。
おんどれらだけ勝手に前いく筋理屈、どこにあるんか言うてみいや!!」
完全に映画の世界の空気。
小学生リーダーが汗をぬぐいながら叫ぶ。
「わ、分かった!悪かった!ちゃんと並ぶ!!」
取り巻き二人も慌てて頭を下げる。
美月はピタリと動きを止め、満足げにうなずいた。
「ほいでええんじゃ。
筋通したら、誰も泣かんで済むんじゃけぇの」
小学生たちは列の最後尾へ去っていき、幼児たちは拍手喝采。
蓮は感動で泣きながら言った。
「み、美月ちゃん……広島弁めっちゃ怖いけど……めっちゃ頼もしい……!」
「怒ったら勝手に出んねん。筋通すときはこれが一番効くんや」
夕陽の光で、美月のツインテールは金色に輝いていた。
こうして――
東大阪公園で暗躍する“妖怪・順番抜かし”は、
ツインテール姐さんの広島弁によって完全に殲滅された。
その日以来、小学生たちは滑り台の列に並ぶたび、背筋を伸ばすようになったという。




