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赤嶺美月の幼女任侠伝  作者: スパイク


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ツインテール姐さん成長物語 ――元気が余りすぎた結果、ヒロインになりました 第5話 残高は見ない、笑顔は見る――混沌の時代と最強の癒し

東大阪市。

町工場の金属音と生活音が混ざり合うこの街の一角に、赤嶺家の夢のマイホームが完成した。


完成見学の日、真人は玄関先で一礼した。


「……ええ家やな」


その声には、喜びと、覚悟と、そして現実逃避が同居していた。


玄関に入った瞬間、春菜は拍手。


「うわぁ!

やっぱ広いわ!」


美月はもう走っている。


「はしれる!

ここも!

こっちも!」


廊下を一直線に駆け抜け、リビングを一周、階段を半分まで上がって戻ってくる。

止まらない。

止めない。


真人はカウンターに置かれた分厚いファイルを、そっと裏返した。


「……ローンの残高はな、

“見たら負け”や」


誰に言うでもなく、独り言である。


その横で、春菜はキッチンの広さを確かめながら言った。


「ええ感じやん。

ここで毎日ご飯作るん、楽しみやわ」


「……せやな」


返事はした。

数字のことは、聞かなかった。


数分後、チャイムが鳴る。


「はーい!」


ドアを開けると、清一と花が立っていた。


「来たでー!」

「引っ越し祝い持ってきたわ!」


美月は一目散に飛びつく。


「じーじ!

ばーば!」


「よっしゃよっしゃ!」

清一は嬉しそうに抱き上げる。


花は家の中を見回し、満足そうにうなずいた。


「ええ家やなぁ。

真人、よう頑張ったやん」


真人は苦笑い。


「……頑張りは、

これからも続く予定です」


清一は分かっていない。

だが、分かっていないのが幸せでもある。


それから数日。

赤嶺家に巨大な段ボールが届いた。


送り主は、春菜の兄――

都内在住で、たまにしか会えないが、

美月を溺愛している叔父からだった。


「なにこれー!」


箱を開けた瞬間、

でかい。白い。圧がある。


「……しろくま?」


美月は一瞬で抱きついた。


「せんせー!」


「せ、先生?」


「うん!

しろくま先生!」


命名、即決。


それ以来、

しろくま先生は美月の無二の親友となった。


ご飯を食べる時も横。

絵本を読む時も横。

寝る時は必ず抱っこ。


真人はその様子を見て言った。


「……この家、

俺より先生の方が存在感あるな」


春菜

「気のせいや」


そんな穏やかな日々の中、

世の中は再び大きく揺れた。


東日本大震災。


テレビから流れる映像。

沈む声。

沈む街。


真人の会社の業績も、

怪しい空気を帯び始める。


夜。

リビングの電気を落とし、

真人は一人、ソファに座っていた。


(……正直、

先、見えへんな)


だが、ふと隣を見る。


春菜は、少し疲れた顔をしながらも、

満足そうに微笑んでいる。


その腕の中では、

美月がしろくま先生を抱えて、

すやすや眠っていた。


小さな寝息。

時々、笑う。


真人は、胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。


(……守るもん、

増えたな)


春菜が小さく言う。


「ありがとうな」


「……何が?」


「この家」


真人は、照れ隠しに笑った。


「まあ……

走れるしな」


その夜、真人は決めた。


(オレは、

もっと頑張らなあかん)


残高は見ない。

だが、

笑顔はちゃんと見る。


混沌の時代の中で、

赤嶺家は、今日も明るい。


そして、

しろくま先生は、

今日も最前列で、

ツインテール姐さんの夢を見守っている。

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