ツインテール姐さん、納豆せんべい抗争を制す
東大阪の下町にある、のどかな幼稚園。
その平和をぶち壊す事件が起きたのは、午前のおやつタイムだった。
原因は――納豆せんべい。
妙にクセになる、あの臭いと甘じょっぱさのハイブリッド菓子。
「ぼくのんや!」「わたしのん返せや!」
わずか一袋を巡り、園児たちが“乱戦”状態に突入した。
先生は慌てふためいた。
「み、みんな落ち着いて!順番にね、順番に……!」
落ち着くわけがなかった。
そこで、立ち上がる小さな影。
ツインテールが左右にビンッと揺れながら、赤嶺美月が前に出た。
「おいコラぁ、ウチの前でそんな筋の通らん取り合いすなや!!」
5歳児とは思えないドスの効いた声に、園児たちの動きが一瞬止まる。
美月は仁侠映画の主人公よろしく、納豆せんべい争奪組の中心へずかずか進んだ。
泣いている子の頭をポンと撫で、争っている二人の目をギロリと睨む。
「まずやな……誰が最初に食べる約束しとったんや?」
「……し、してない」
「ほな筋が立たんわ」
美月は深くうなずくと、先生に向き直る。
「先生、これは配給制にしたほうがええ。
順番で渡して、争いになったらアカン。筋を通したら平和になるねん」
“配給制”という言葉の意味を先生は理解できなかった。
だが美月は勝手に立ち上がり、机の上に乗ると高らかに宣言した。
「今日から納豆せんべいは、
ツインテール姐さんによる“おやつ奉行所”が取り仕切る!」
全園児がザワつく。
一部の子は意味も分からず拍手した。
その後、美月は先生の制止を一切聞かず、
お菓子を一袋ずつカゴに回収し、同じ量で振り分ける“配給制度”を導入。
子どもたちは妙に納得し、静かに配給待ちの列を作った。
先生は呆然。
蓮は泣きながら列に並び、美月に「ウチの舎弟は特別扱いせぇへん!筋が通らん!」と怒られた。
その日の連絡帳にはこう書かれた。
「美月ちゃんが“おやつ奉行”として園全体を統括していました」
家に帰った美月は胸を張る。
「じいちゃん、今日ウチ、争い止めてきたで。筋通したわ」
清一は誇らしげにうなずき、真人は味噌汁を吹いた。
こうして、東大阪幼稚園に“おやつ配給制”が導入された記念すべき一日は幕を閉じた。
背後でツインテールが勝利のごとく揺れていた。




