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赤嶺美月の幼女任侠伝  作者: スパイク


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ツインテール姐さん誕生前夜 ――赤嶺家、すべてはここから始まった 第3話 梅田の夜景と、宴会部長の一世一代(たぶん)

滝川春菜は、大阪の街をよく知っていた。


学生時代、梅田、難波も、心斎橋も

「遊び場」として一通り制覇している。

ブランド袋を提げ、終電ギリギリまで笑い、

恋も失敗も一通り経験済み。


美人で、ノリが良くて、話が合う。

当然、モテた。


モテすぎた。


「また告白されてしもたわ……」

「今度はモデル系?」

「医者?」

「起業家?」


そのたびに春菜は思っていた。


(……正直、もうええかな)


一方その頃、

赤嶺真人はというと――

ただのアホ学生だった。


飲み会では先に潰れ、

ゼミでは発言がズレ、

バイト先では「お前、愛嬌だけやな」と言われる男。


将来像?

特になし。


夢?

「楽しく生きたい」。


そんな二人が、

社会人になってから、

なぜか同じ会社で、

なぜか同じタイミングで、

なぜか距離を縮めていた。


会社帰り。

二人は梅田の歩道橋に立っていた。


夜景が広がる。

ネオン、車のライト、人の流れ。


春菜はふと、昔を思い出す。


(この景色、

何回見たやろ)


横を見ると、

真人がやたら真剣な顔をしている。


「……なあ」


「どうしました?」


「大阪って、

上から見ると綺麗やな」


春菜は笑う。


「今さらですか」


「せやけどな、

下におると、

ゴチャゴチャしてて分からんやろ」


「まあ……」


真人は、珍しく真面目に続ける。


「でも、

上から見ると、

ちゃんと流れがある」


春菜は、少し驚いた。


(……あれ?

この人、たまにええこと言う)


沈黙。


その空気に耐えられず、

真人は突然言う。


「俺な、

滝川さんとおると、

全然退屈せえへんねん」


「……それ、

口説いてます?」


「はい」


即答だった。


春菜は吹き出す。


「正直ですね」


「取り柄やから」


それから何度か食事を重ね、

映画を観て、

他愛もない話をした。


高級店でもなく、

洒落たバーでもない。


真人が選ぶのは、

なぜか妙に落ち着く店ばかりだった。


春菜は気づく。


(……この人とおると、

気ぃ張らんでええ)


ある夜。

真人は意を決して切り出した。


「なあ、

結婚せえへん?」


唐突すぎる。


春菜

「……早ないです?」


「せやな」


「理由は?」


真人は少し考え、

正直に答えた。


「俺、

滝川さんとおったら、

一生ヒマせえへん気がする」


春菜は一瞬、黙った。


頭に浮かぶのは、

これまでの男たち。


格好いい人、

話の上手い人、

自信満々な人。


でも――

どこかで飽きていた。


(……美男、

もうお腹いっぱいやわ)


目の前には、

容姿は中の下、

ノリだけは一流の男。


でも、この男は、

退屈を連れてこない。


春菜は笑って言った。


「……ええですよ」


真人

「え?」


「結婚、

ええですよ」


真人

「……今の、

夢ちゃいますよね?」


「現実です」


真人はその場でガッツポーズをした。


「よっしゃ!!」


周囲のカップルが一斉に見る。


春菜

「ちょっと静かにしてください」


「す、すいません……」


こうして、

誰がどう見ても不釣り合いな二人は、

結ばれることになった。


周囲はざわつく。


「え、あの二人?」

「赤嶺って、宴会部長やろ?」

「滝川さん、何考えてるん?」


春菜は平然と答える。


「面白そうやから」


真人は胸を張る。


「俺、

面白さには自信あります!」


この瞬間、

ツインテール姐さん誕生への

最大の伏線が、

静かに、しかし確実に打たれた。


次章――

いよいよ宴会部長、

実家に連れて行く。

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