ツインテール姐さん誕生前夜 ――赤嶺家、すべてはここから始まった 第2話 高嶺の花と宴会部長、距離感ゼロの社会人一年目
宴会部長・赤嶺真人は、あの新人歓迎会以降、社内での立ち位置が微妙に変わった。
「赤嶺、また幹事やっといて」
「赤嶺、場が重いから何か言って」
「赤嶺、空気悪なったら何とかせえ」
――もはや“仕事”である。
本人はご機嫌だった。
「頼られる男ってええなぁ」
なお、業務評価には一切反映されていない。
一方で、滝川春菜は相変わらず別格だった。
資料を持って歩くだけで視線が集まり、
電話対応をすれば「声も綺麗やな」と囁かれる。
だが本人は、どこか居心地が悪そうだった。
(……正直、疲れる)
そんなある日。
運命は、信じられないほどしょうもない形で二人を再び近づける。
原因は――
コピー機の紙詰まり。
春菜がコピー機の前で困っていると、
なぜか通りかかった真人が颯爽と現れた。
「任しとき!」
何の根拠もない自信である。
「こういうんはな、
勢いが大事やねん」
勢いよくカバーを開け、
紙を引っ張り、
さらに詰まらせた。
春菜
「……余計悪化してません?」
真人
「大丈夫!
俺、宴会部長やから!」
春菜
「コピー機と宴会、関係あります?」
結果、総務の女性が無言で修理し、
真人は怒られ、
なぜか春菜だけが笑っていた。
「赤嶺さん、
不思議な人ですね」
「せやろ?
よく言われるわ」
それは褒め言葉ではない。
昼休み。
偶然にも社員食堂で隣の席になる二人。
真人はカレー、
春菜は日替わり定食。
「滝川さん、辛いの平気なん?」
「そこそこですね」
「ほな次、激辛いこ」
「……なんでです?」
「人生、刺激必要やろ」
意味が分からないが、
春菜はなぜか楽しかった。
(この人とおると、
変に気を使わんでええ)
真人は真人で、
春菜の“普通さ”に驚いていた。
(もっと近寄りがたい人かと思ってた)
ある日、会社帰り。
エレベーターが止まった。
――本当に止まった。
2000年問題どころではない、
ただの故障だった。
狭い箱の中。
沈黙。
真人が耐えきれず言う。
「……これ、
閉じ込められたらどうします?」
「非常ボタン、押します」
「冷静やなぁ」
「慣れてます」
「慣れてるんですか!?」
「人生、色々ありますから」
真人は、この瞬間に確信した。
(この人、強い)
数分後、無事に脱出。
だがその夜、真人は勢いで言ってしまう。
「今度、飯でも行きません?」
春菜は一瞬考え、
こう答えた。
「……赤嶺さん、
場を盛り上げようとしてません?」
「してます」
「正直ですね」
「取り柄やから」
沈黙のあと、春菜は微笑んだ。
「じゃあ、
盛り上がらなくてもいいお店で」
真人は内心で叫んだ。
(盛り上げ役、解任された!!)
こうして、
宴会部長と高嶺の花は、
誰にも気づかれないまま、
少しずつ距離を縮めていく。
周囲はまだ思っている。
「どうせ接点ないやろ」
「あの二人は別世界や」
――だが、
距離感ゼロの社会人一年目は、
静かに、確実に、
“その先”へ進んでいた。
次章、
ついに宴会部長、
口説きにかかる。




