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赤嶺美月の幼女任侠伝  作者: スパイク


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12/28

ツインテール姐さん、河内音頭で足元から天下を取る

赤嶺美月、五歳。

任侠口調で啖呵を切ったかと思えば、怪しげな協和語で手品を始め、翌朝にはお天気お姉さんになる。

その変わり身の早さに、家族はもう驚かない。驚かないが、少しだけ心配にはなる。


中でも祖母の赤嶺花は、ある晩、縁側でぽつりとつぶやいた。

「……この子、地に足ついてるんやろか」


花は昭和の肝っ玉母さんだ。多少の奇行は笑って受け流す。だが孫が日替わりで人格を変えるのを見ると、「一回ちゃんとしたもん教えた方がええんちゃうか」という気にもなる。


そこで花が思いついたのが、自分の原点だった。

地元で長年続く「河内音頭保存会」。


翌週、美月はツインテールのまま、保存会の集会所に連れて行かれた。

中に入った瞬間、空気が濃い。太鼓の音、腹から出る掛け声、年季の入った足音。

美月は一瞬きょろきょろしたが、すぐに胸を張った。


「赤嶺美月です。

筋は通します」


保存会の面々が一斉に固まる。

「……何の筋や」


花が慌てて笑ってごまかした。


「まあまあ、踊らせてみてください」


最初は半信半疑だった。

だが音が鳴った瞬間、空気が変わった。


美月の足さばきが、異様にいい。

小さな体なのに重心が低く、無駄がない。

ドン、スッ、ドン、スッ。

足が音に吸い付くように動く。


「……この子、ええ足してるわ」

「なんやこの安定感」


美月は踊りながら、ひとこと言った。

「これ、筋通っとるな」


なぜか全員が深くうなずいた。


十分後、保存会の評価は手のひら返しだった。

「将来舞台立てるで」

「ツインテールで河内音頭て、新しすぎるやろ」

「保存会の未来見えたわ」


花は胸をなで下ろした。

「大丈夫や。この子、ちゃんと地面踏んどる」


美月は汗をぬぐい、満足そうに笑った。

「おばあちゃん、これ楽しいな。

音で足使うの、気持ちええ」


それからというもの、美月の特技に「河内音頭」が加わった。

任侠口調は相変わらず、協和語も健在だが、足元だけは妙に落ち着いた。


時は流れ、美月は大学生になる。

所属したチアリーディングサークルで、振り付けが煮詰まったある日、美月が手を挙げた。


「足さばき、河内音頭入れてみいひん?」


結果、チア×河内音頭という謎の融合が完成した。

観客は理由も分からず目を奪われる。

「なんか分からんけど、ずっと見てしまう」

「下半身の安定感えぐい」


さらに後年。

戦隊ヒロインとなった美月は、敵の攻撃を華麗なステップでかわし続ける。

河内音頭で鍛えた足運びが、戦場で生きた。


敵が叫ぶ。

「なぜ当たらん!」


美月は軽く笑った。

「足元が違うねん。河内仕込みや」


掴みどころのない美月は、今日も掴ませない。

だが――足元だけは、誰よりもしっかり地に着いている。

その安定感が、世界を翻弄する武器になるとは、誰も思っていなかった。

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