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はなちゃんの日記  作者: ももねいちご


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7/13

小学生編③

3年生は、辻本 裕子(つじもと ゆうこ)先生が受け持ち1年間なにごともなく終えた。


そして、4年生の時の担任。黒川 幸奈(くろかわ ゆきな)先生との出会いが、悪い意味で私の運命を変えた。


黒川先生は、私たちの小学校の隣の桜ヶ丘第一学園から来た先生で、第一学園時代の評判があまり良くなかった。


後からパパに聞いた話だが、4年生最初の保護者会で、その話が出たらしい。



「あの、黒川先生は生徒を廊下に追い出して、その日の授業を受けさせなかったって本当ですか」


クラスメイトの、川本 優音(かわもと ゆのん)ちゃんのお母さんのその言葉をスタートとし、次々と(うわさ)を問いただされる。


「事実です」


否定すればいいものを、黒川先生は全て肯定したそうだ。


しかも、その後のクラスの状況を説明するときに。


「お子さん達クラスは、本当に悪いクラスです」


と言い出して、保護者の信頼を無くしてしまった。


それからは、優音ちゃんのお母さんや、そのほかの専業主婦、自営業の親が交代で、授業を見に来たり、副担任に山本 春子(やまもと はるこ)先生をつけたりして、黒川先生が問題を起こさないように見張るという状態を作り上げることにしたそうだ。


そのおかげで1学期の間は問題は起きず、次第に保護者が授業を見にくることはなくなった。



しかし、2学期の後半からクラスが荒れ始めた。


「先生! 優音ちゃんがいません」


山本先生の授業の日、優音ちゃんが姿を消した。そして、その日から優音ちゃんは、度々、脱走騒ぎ(ボイコット)を繰り返すようになった。


お母さんから、あんな先生の授業は受けなくていいと言われていたようだ。


その事情を知らない私は、優音ちゃんは、なんて勝手な子なんだろうと思ったこともあった。


ボイコットの度に山本先生は、優音ちゃんを追いかけていくし、男子は授業や先生の言うことを聞かない。追いかけていった山本先生の代わりに授業をすることになった黒川先生は、その度に泣きながら教室を飛び出す。


学級崩壊だった。


そして、先生がいなくなった教室に私たちは、取り残され、自習という名の休み時間を過ごしていた。



しかもその頃。


いじめ系の漫画が、流行っており、菌回し(バイキンあつかい)が、男子の間でブームとなっていた。


だから、先生が居ない間は"誰か"が虐められる。


そして、その"誰か"はいつも"私"だった。


男子がわざとぶつかってきて、


「わっ。はな菌がついた。きったねェ」


と言うと、私に触れた部分をこすり、次の人へ鬼ごっこのようにタッチする。それを繰り返す遊び。それに関しては、男女関係なかった。


(今となっては、非常にくだらない遊びである)


最初は、私も特効薬(菌保有者しか作れないらしい)を作り、男子に渡して参加していた。正直にいえばその遊びを、楽しんでいた。


しかし、続ければ続けるほど胸が苦しくなってしまい、辞めて欲しいと頼んでも、男子がそれを辞めることはなかった。



そして、そんな男子に恐怖心を覚え、泣いて授業に参加できなくなるのに、そう時間はかからなかった。


泣いてしまったときは、いつも1人である場所に逃げ込んでいた。



それは、保健室の御手洗 (みたらい)りほ先生のところだ。


御手洗先生は、おばあちゃんくらいの年齢で、優しかった記憶がある。


先生とは、あやとりをしたり、おりがみをしたり、他にも沢山のことをして遊んだ。

 

辛いときも、楽しいときも、御手洗先生がいたから頑張れたのに、小学校最後の2年間は、先生のことが鬱陶(うっとう)しくなってしまって、ろくに話もしなかった。


結局、私たちの卒業と同じ年に定年退職をされた。現在(いま)はどうしてあるのかは分からないが、感謝している。あの時先生がいなければ、私はどうなっていたか分からないから。


そして黒川先生は、私たちが6年生になる年に、家の都合で教師を退職した。今思えば、私たちの保護者に辞めさせられたのかもしれない。


黒川先生の本当の性格は分からないが偽り(ウソ)の無い性格で、人と接し幸せになってくれていたらいいなと思う。

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