嫌なこと忘れられない
嫌なことを忘れられない
俺が自警団の団長になって一週間になった。
「様々な組織出来上がってるし、お役人様の依頼が他に取られてるし、どうなってんだよ」と俺は、暇にイラついた。
「俺たちは、元々、ゴロツキ集団だからな。警戒でもされてるんだろう」と山本は、冷静に答えた。
「足引っ張りやがって、全く。組織したの俺と山本だけどさ」と俺は、文句ばっかり言っていた。
「何かしらの依頼見てくるか?もののけの類の討伐とかあるかもしれん」と山本は、俺の代わりに仕事を探しに行ってくれた。
何も出来ない自分に腹が立った俺は、部下達をかなり乱暴に扱った。
「くそ共が」と俺は、竹刀を振り回し、部下達を扱きと称した暴行を加えた。
一人の部下である二宮哲治が俺に言った。
「何を焦ってるんですか?貴女には、迷いがある。貴女にも、俺らにも利益はないはずだ」
俺は、それに対して何も言えなかった。
「利益がないか、確かに」と俺は暴力を辞めた。
「迷いのある暴力に振り回されてるだけの可哀想な人だ」と言われた瞬間、俺は、訳も分からずに走って逃げた。
「ちくしょう。ちくしょう」と俺は、少し離れた仏様の近くにある木を殴った。
そこに依頼をとってきた山本が帰ってきて、事情を聞いた。
山本は、俺を探しに行った。
雨が、降り始めて来た。
「見つけた。雫、お前どうしたというんだ?」と山本は、俺に尋ねた。
「俺は、弱いし、小さい存在であることは、自分でも知ってる。どうにも出来ないんだ」と俺は、山本に愚痴をこぼした。
「人間、誰しも悩みはある。あるんだ。でも、人にぶつけて解決するなら、皆んな、そうしてる。だけど、そうじゃないから、苦しいんだろう?お前は苦しい筈だ。苦しみから逃れようと踠いてる。俺には分かる」と山本は、答えた。
「分からないんだよな?自分でもさ。それは皆んな同じよ」と山本は、俺を後ろから抱いて安心させてくれた。
「山本の匂いがする」と俺は、少し正気取り戻した気がして、二人で屯所に戻り、俺は全員に謝罪した。
すると、二宮が発言してきた。
「覆水は盆に還らず。やってしまったものは、二度とは、戻らないし、取り戻すこともできない。お互いに進むしかない。後悔は、先には立たないのは、それがあってこそだ。だからと言って全て暴力で解決は出来ないわけだし、暴力以外で成功させる手段を模索するしかない。辛いのは団長に限った話ではないとこを皆も肝に銘じろ」
二宮が、一番の団長らしかった。
俺は、自身の未熟さを呪った。