表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

第五章:理解と受容

 数週間が過ぎ、風音は少しずつ変わっていった。朝はきちんと起き、朝食を取り、規則正しい生活を心がけるようになった。スマートフォンの使用時間も減らし、夜は早く寝るようにした。


 体育の授業では、以前よりも積極的に参加するようになった。胸の大きさを気にして走るのを避けていたが、今は適切なスポーツブラをつけて、姿勢にも気をつけながら走れるようになった。


 放課後、風音は古い友人の美咲と帰り道を共にしていた。


「風音ちゃん、最近変わったね。肌つやつやだし、なんか元気になった?」


 風音は少し照れながら答えた。「ちょっと生活習慣を見直したんだ。」


 そのとき、美咲が溜息をついた。


「うらやましいなぁ……胸大きくて。私なんて、まな板だもん……」


 風音は少し驚いた。


「え? でも、その方がいいこともあるよ。肩凝らないし、走りやすいし……」


「でも、男子からモテるでしょ? 南くんとか、風音のこといつも見てるじゃん。」


 風音は複雑な表情になった。クラスメイトの南くんが自分を見ていることは知っていた。

 でも、それが単に胸を見ているだけなことがわかっていたから、全然嬉しくはなかった。


「見られるのは、正直言って嫌なときもあるよ。自分の体のパーツだけを見られている気がして。あたしが人間として見られていない感じがする。」


「そっか……」美咲は少し考え込んだ。「私はてっきり、うらやましいことばかりだと思ってた。」


「どんな体でも、その人なりの悩みがあるんだよね。」風音は空を見上げながら言った。「完璧な体なんてないんだと思う。」


 風音と美咲は駅前で別れ、風音は一人で帰路についた。内臓たちも静かだった。彼女の言葉に、何か感じるものがあったのかもしれない。


 その夜、風音は鏡の前に立っていた。


「みんな、聞いてほしいことがあるの。」


 内臓たちが静かになった。


「私、自分の体のことを少し理解できたかも。確かにおっぱいが大きいことで不便なこともあるけど、それは私の一部なんだよね。どんな体でも、その人なりの悩みがあるんだって気づいたの。」


「素晴らしい気づきね。」脳が言った。「自己受容は精神的健康の重要な要素よ。」


「それに、私の体の一部を否定することは、みんなを否定することになるんだよね。みんなは一生懸命働いてくれてるのに、それを責めるのはおかしいよね。」


「感動した……」心臓が鼓動を早めた。


「これからは、もっと自分の体を大切にしたいと思う。それに、自分の体のことを知るのも面白いし。みんなは私の一部で、私はみんなの集合体なんだよね。」


「そのとおり!」全ての臓器が一斉に声を上げた。


「あ、でも一つだけ言っておくよ。」風音は少し厳しい表情になった。「痴漢に遭うのは、私の体のせいじゃない。それは加害者が悪いんだ。だから自分を責めないようにする。」


「その通りよ。」脳が誇らしげに言った。「その認識は非常に重要なことだわ。」


 風音は微笑んだ。内臓の声が聞こえるようになったのは、最初は戸惑ったけれど、今は感謝している。自分の体と向き合い、対話することで、自分自身をもっと理解できるようになった気がする。


「あのね、みんな。ありがとう。私の体の声を聞かせてくれて。これからも一緒に、健康で幸せな人生を送ろうね。」


 内臓たちが喜びの声を上げる中、風音はベッドに横になった。今夜はきっと、いい夢が見られるだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ