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【内臓擬人化ドタバタ短編小説】声なき声を聴く少女 ~私のなかの小さな宇宙」 ~  作者: 霧崎薫
内なる声 - 赤い月のささやき

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第八章:統合する調和

 それから数週間が過ぎ、風音と南の関係は順調に発展していった。二人は放課後に一緒に帰ったり、週末には映画や公園に出かけたりするようになった。


 ある日の放課後、風音は南と学校の中庭のベンチに座っていた。


「来週は僕の誕生日なんだよね。」南が言った。「ちょっとした集まりをするんだけど、風音も来ない? 家族と親しい友達だけだから。」


「え? 家族も一緒なの?」風音は少し緊張した。


「うん。両親と妹、それから親友の二人を呼ぶつもり。」南は笑顔で言った。「風音に、妹を紹介したいんだ。あの時のアドバイス以来、ずっと『お礼を言いたい』って言ってるから。」


 風音は少し考えてから、「うん、喜んで行くよ」と答えた。南の家族に会うことは、彼らの関係の新しいステップに思えた。


「嬉しいよ。」南は風音の手を軽く握った。「みんな、絶対風音のこと気に入ると思う。」


 その時、風音は自分の体の微妙な変化に気づいた。少し下腹部に違和感がある。


「これは排卵の兆候かもしれないわね。」卵巣が静かに言った。「排卵痛と呼ばれるものよ。すべての女性が感じるわけではないけど、あなたは少し敏感なタイプかもしれないわ。」


 風音は自分の体内で起きていることを感じながら、ふと疑問に思った。「排卵って、赤ちゃんができる可能性があるってことだよね。」


「そうよ。」卵巣が答えた。「成熟した卵子が放出され、もし精子と出会えば受精する可能性があるわ。でも、もちろん他の条件も揃わなければならないけど。」


 風音は南の手を握り返しながら、自分の体の周期と、人生の新しい段階について考えた。彼女はまだ17歳で、未来への長い道のりがある。でも、自分の体が持つ可能性と責任についても、しっかりと理解し始めていた。


「何か考え事してる?」南が風音の表情の変化に気づいて尋ねた。


「ううん、ちょっと。」風音は微笑んだ。「自分の体のことを考えてただけ。」


「体調悪い?」南は心配そうに尋ねた。


「そんなことないよ。」風音は首を振った。「ただ、女の子の体って不思議だなって思って。定期的に変化があるでしょ。」


 南は少し考えるように頷いた。「そっか。男子にはないことだよね。でも、それも自然なことだし、風音の一部だよね。」


 風音は南の理解に感謝の気持ちを抱いた。彼が彼女の体の変化や周期について、当たり前のこととして受け止めてくれることが嬉しかった。


「ありがとう、南くん。」風音は心からの言葉で言った。


「何が?」南は少し不思議そうに尋ねた。


「私の体のことを、自然に受け止めてくれること。」


 南は少し照れくさそうに笑った。「当たり前だよ。それが風音なんだから。」


 二人の会話は他の話題に移り、南の誕生日会の計画や、夏休みの予定などについて話した。


 数日後、風音は本当に排卵期に入っていると確信した。体調が良く、肌のツヤも良くなっている。そして何より、生命力にあふれている感覚があった。


 放課後、風音は結衣とカフェに立ち寄った。


「南くんの誕生日会に招待されたんだって? すごいじゃん!」結衣は嬉しそうに言った。


「うん、でも緊張するよ。家族にも会うんだって。」


「大丈夫、風音は愛されるよ。」結衣は自信たっぷりに言った。「それに、彼の妹さんは既に風音のファンなんでしょう? 生理のアドバイスで助けてあげたんだから。」


「そうだといいけど。」風音は微笑んだ。「あ、そうそう、結衣。」


「何?」


「私、最近自分の体のサイクルについて、より意識的になってきたの。」風音は真剣な表情で言った。「生理だけでなく、排卵期とか、それぞれの時期の特徴とか。」


「へえ、どんな感じなの?」結衣は興味深そうに尋ねた。


「排卵期は今みたいに元気で、肌も調子がいいの。でも、時々下腹部に痛みがあったりする。」


「私もなんとなく違いは感じるけど、そこまで詳しく知らないな。」結衣は感心したように言った。「風音はすごいね、自分の体をよく理解してる。」


「うーん、まだ勉強中だよ。」風音は謙虚に言った。「でも、知れば知るほど、自分の体って素晴らしいって思うんだ。複雑だけど、精密に機能してる。」


 結衣は少し考え込むように言った。「私も、もっと自分の体のこと知りたくなってきた。風音に影響されちゃった。」


「それなら、この前読んだ本を貸すよ。すごく分かりやすかったから。」


「ありがとう! 借りるね。」


 カフェを出た後、風音は一人で帰路についた。南の誕生日プレゼントを買うために、ショッピングモールに寄ることにしたのだ。


 風音がアクセサリーショップを見ていると、以前トイレでナプキンを貸した一年生のひなと偶然出会った。


「十和田先輩!」ひなが嬉しそうに声をかけた。


「あ、ひなちゃん。久しぶり。元気?」


「はい! 実は今、お母さんと一緒に来てるんです。」ひなは近くにいる女性を指さした。「あの時話してくれた本のこと、お母さんに話したら、一緒に買いに行こうって言ってくれて。」


 ひなの母親が近づいてきた。「あなたが十和田さん? ひなからよく聞いてます。あの時は娘が助かったようで、ありがとうございました。」


「いえ、こちらこそ。」風音は丁寧に挨拶した。


「ひなが最近、女性の健康について興味を持ち始めたんです。」母親は嬉しそうに言った。「あなたの影響が大きいみたいですね。」


 風音はその言葉に少し驚いた。自分の言動が、後輩にそこまで影響を与えていたとは思わなかった。


「先輩のおかげで、生理のことを恥ずかしがらなくなりました。」ひなが笑顔で言った。「お母さんとも話せるようになったし。」


「それは良かった。」風音は心から言った。


 ひなと母親と別れた後、風音は南へのプレゼント??シンプルな革のブレスレット??を購入し、家に向かった。


 家に着くと、父親が居間でテレビを見ていた。


「ただいま。」風音が声をかけた。


「おかえり。」健太郎が振り返った。「どうだった、買い物は?」


「うん、無事に見つかったよ。」風音はプレゼントの袋を見せた。


「そうか。」健太郎は少し照れくさそうに続けた。「その、南くんの誕生日会だっけ? 気をつけて行ってきなさい。」


 風音は父親の心配に微笑んだ。「大丈夫だよ、お父さん。南くんはちゃんとした人だから。」


「俺も会ってみたいもんだな。」健太郎は少し茶目っ気のある笑みを浮かべた。


「もう、お父さん!」風音は赤面した。


 夕食時、風音は家族に南の誕生日会のことを話した。


「南くんのご両親に会うのね。」真理子が言った。「何か手土産を持っていくといいわよ。失礼のないように。」


「そうだね。何がいいかな?」


「お菓子の詰め合わせとか、季節の果物とか。」真理子が提案した。「あまり派手すぎないものがいいわ。」


 風音は母親のアドバイスに感謝した。こういう社会的なマナーは、彼女にとってまだ新しい領域だった。


 夜、自分の部屋で風音は日記を書きながら、最近の変化について振り返っていた。体の周期への理解が深まったこと、南との関係の進展、ひなのような後輩への影響。すべてが彼女の成長の証だった。


「風音。」脳が静かに話しかけた。「あなたの成長ぶりは素晴らしいわ。単に体の仕組みを理解するだけでなく、それを他者との関係や、自分自身の価値観と結びつけることができている。」


「そうかな?」風音は少し照れくさく思った。


「そうよ。」心臓が温かく言った。「私たちは見ているよ。あなたがより自信を持ち、自分の体を尊重し、他者とも健全な関係を築いていることを。」


 風音はペンを置き、窓の外を見た。月が綺麗に輝いている。今夜は満月に近い。


「月の満ち欠けと女性の周期が似ていることって、なんだか神秘的だね。」風音は呟いた。


「そうね。」子宮が答えた。「多くの文化で、月と女性の周期は結びつけられてきたわ。実際には科学的な直接の関連はないけれど、両者とも約28日周期というのは興味深い一致ね。」


 風音はベッドに横になり、自分の体の中心に意識を向けた。そこには無数の細胞や組織、器官が、それぞれの役割を担って働いている。そして彼女は、それらすべてと対話することができる特別な少女だった。


「みんな、いつもありがとう。」風音は心の中で内臓たちに語りかけた。「これからも、よろしくね。」


「こちらこそ。」内臓たちが一斉に答えた。


 風音は穏やかな気持ちで眠りについた。明日も新しい一日が始まる。彼女の体も、心も、少しずつ大人になっていく。


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