0.8. 討伐
イーシュトラインから荷馬車で数時間後
リーブラックポートへと到着した。
ここは東側諸島の連絡船も多く停泊する、港町であり
闇の軍勢と戦うための王立海軍の駐屯地でもあった。
とある商店の前に馬車が停まる。
親方は、店へ入って行っていた。
親方が、待ってろ。と言うので
ユーリとエミルは荷馬車で待機していた。
親方は思いの外、すぐに戻ってきた。
「このままリトル・ウィングまで行くぞ」
ユーリとエミルは驚いて顔を見合わせた。
「何故ですか?」
ユーリが先に聞いた。
「アルト・ルーベンとか言う冒険者の騎士様が
ゴンゴルドを倒しちまったってよ。
村人は全員昨日には村に帰って
今は小羽屋の食堂で、その冒険者パーティと
その場にいる奴らで大宴会になっちまってるそうだ。
そこのばーちゃんが、物入りで困ってるって
冒険者にお使いの依頼とか出してるってさ。
このエールと、商品は
リトルウィングの方が高く売れるって話だからよ・・・
って、ユーリちゃん、聞いてるか?」
親方が心配する。
ユーリを見やると目を白黒させて
半ば立ったまま気絶してしまっている様にも見えたのだろう。
気が緩んだやら、展開が追いつけないやら・・・
・・・・
「ユーリ?何か言った?」
エミルが心配そうに聞く。
「私、大手魔法道具店の内定蹴ったのに!?!?」
ユーリは頭を抱えた。
我ながら、お婆ちゃんが無事で良かったとか
ゴンゴルドが討伐されて良かったとか
そういう感想が最初に出てこない自分は
人間としてなんて冷たい奴なのだと思った。
しかし、これは言いたい・・・
そう言う展開なのであれば、全く話は違うのに!!!
ユーリは感情の整理が全く出来なかった。
まあまあ、とにかく行ってみようぜ
と親方に宥められる。
ユーリは呆然とする頭で馬車に再び乗り込む。
その後は、何やらやる気を一切失ってしまい
リーブラックポートから、リトルウイングまでの道中は
護符を馬車全体にペッぺと張って
エールを美味しく運べる魔法だけを
かけることにした。
隠密の魔法はかけていなかったため
残党の小鬼にはもろに気づかれて
矢を射かけられた。
都の一級品護符貼付済みの荷馬車には小鬼の矢など届くはずもなく。
今回はユーリの八つ当たりが如く、攻撃魔法で
全員消し炭にされていったのであった。