74. ユーリ王都へ再び
ユーリは、サムエルの自宅にある転移の鏡を使わせてもらって
王都に行くことになった。
サムエルの仕事の都合上
1日前に王都入りし
ガーデンパーティの3日後に
また転移の鏡を使い帰ってくると言う予定であった。
その3日間どうしてもエルフ国の会議で引っ張られ
音信も取り兼ねるとのことであった。
リトルウィングから王都の間は
高速馬車を乗り継いで3日もかかるのであるから
非常にありがたいことである。
サムエルが、宮殿近くに宿を取ってくれたので
久しぶりに王都の空気をじっくり味わうことができる。
諸々の荷物を持ち
あらかじめサムエルと決めていた時間になったので
転移の鏡を発動させて潜っていく。
相変わらず嫌な浮遊感だ。
向こう側にはいつものサムエル自宅の
小さなウェイティングルーム。
そして、サムエルが待っていた。
ユーリは声をかける。
「転移の鏡を使わせていただき、ありがとうございます。」
「僕が行けることになったから。」
ユーリのお礼が聞こえなかったかのように話し始める。
それにしても・・・
「・・ん?」
「明日のガーデンパーティだよ!
僕がなんとか行けるようにしたよ。」
・・・また話が変わってきた。
「となると、クラウド様は?」
「来ない。」
ぶっきらぼうにそう言う。
正直のところ、クラウド様が来てくれると聞いた時は
非常に安心した。
・・・のだが、このサムエル。
エスコートの様なものができるのだろうか。
日頃のサムエルの行動を見ていて
ユーリにはとても想像がつかなかったので
一抹の不安を覚えるのだが・・・
しかしだ。
「お忙しいのに、お時間を合わせていただいて
ありがとうございます。」
これもまた本心である。最近のサムエルは
いつにも増して慌ただしく見えた。
実際かなり無理をして調節してくれたのだろう。
小羽屋のことでご招待を受けたのであれば
サムエルと一緒に行くのが一番である。
「それより、馬車呼んだから宿まで送っていくよ。」
サムエル自宅のウェイティングルームが開いた
ユーリはこの外の光景を初めて目の当たりにした。
よくある、王都の裏路地的な光景だ。
サムエルの住んでいる建物は
低層のマンションである。
よく見れば、さほど遠くない位置に
王都のランドマーク時計塔が見えた。
ユーリは、大体の場所を把握した。
超一等地である。
呼んだと言う馬車は、家の目の前に停まっていた。
よくある乗り合いの馬車とは比べ物にならないくらい
高級である。
こんな乗り合いの馬車は見たことがないが。
馬車に乗り込むとサムエルも付いてきた。
何故・・・と思いつつ
そこは突っ込まないことにした。
「この馬車は僕と、周辺に住んでる僕の友人何名かで所有してるんだ。」
なるほど、それでどうりで高級なわけだ。
内装も、絶対に乗り合いの馬車では無いことがわかる。
馬車が走り始めた。
程なくして大通りへと差し掛かる。
王都のビジネスの中心部、ミンティングストリートである。
緑の屋根の上に、創立者の何とか伯爵が騎馬し
剣を掲げている銅像がある建物がある。
これが、王立銀行本店である。
これに続き、老舗のオフィス、魔法道具店、装飾店、様々な有名飲食店・・・
それぞれの屋根や塔には黄金の紋章や輝く魔石が飾られ
商店のバルコニーには風に揺れる色鮮やかな旗が翻る。
店先のショーウィンドウの中には
宙に浮かぶ魔法具や、動く小型の魔獣、キラキラと輝く魔石のアクセサリーが展示され
通りすがる人々の目を引いてやまない。
行き交う人々は・・・
リトルウィングの収穫祭の人出など比べ物にならないほどに多い。
族種も多種多様である。
その中央を、馬車が多数に行き交う。
よく事故が起こらないものだとユーリも感心しながらそれを見る。
とはいえ、少々前のユーリからしてみれば
ごく当たり前の光景であった。
先ほどサムエルの家の前から見えた
王都ランドマークの時計塔が見えてきた。
大手の時計メーカーオフィス兼、時計である。
この下のカフェのプリン、えげつないほどに高価だが
美味しいんだよなー・・・などユーリが考えていると
サムエルが声をかけてきた。
「ほら、君の元内定先だ。」
外を指をさす。
その中でも目立って大きな店構えの古い建物
入り口の上には動くガーゴイルが設置され
入る人々に対し攻撃を・・・せず
にこやかにお辞儀をする、名物の光景であった。
”エドルド魔法道具店”
ユーリの元バイト先で、元内定先である。
「すっかり昔のことみたいです。」
今となっては、あのリトルウィングの長閑な雰囲気に慣れすぎて
この喧騒に戻って来られる気がしなかった。
「君はもう、リトルウィングの村民だからね。」
サムエルはふふッと笑った。
ユーリは、田舎者、と言われた気がして
少々ムッとしたが
ご最も過ぎて、言い返す言葉が思いつかなかった。
そこから30分ほど馬車を走らせると
徐々に建物の高さが低くなっていき
森のような公園が目立ってくる。
王都郊外に差し掛かっているのだ。
やがて広い森の中に
石造りの大きな建物があるのが見え始めた。
「レイルロード宮殿ですね。」
今回のガーデンパーティの会場であった。
ここは昔から、冬の保養所として重宝されてきた王家の宮殿である。
その後すぐに馬車は走りを止めた。
馬車を降りた前の建物には
"ガーデンイン・レイルロード"と言う看板が見える。
サムエルは会場のすぐ近くに宿を取ってくれた様である。
サムエルはユーリと荷物を降ろすと
明日の段取りを確認した。
「僕本当に明日からバタバタだからさ。
ちょっと時短気味になると思う。
明日は現地集合ね。10:45に中のロビーがあるからそこで。」
「承知しました。明日はよろしくお願いいたします。」
頭を下げる。
パーティーの開始時間が11時なのでかなりギリギリな時間だ。
ならご自身が無理に来なくてもクラウド様に・・・
と喉まで出かかったが
言うのは流石にやめた。
そもそも自分が最初に我儘を言ったのだ。
「君この後何かあるの?」
サムエルが突然聞く。
「この後、美容室に行きます、明日に備えて髪切ります。」
ユーリは伸ばしっぱなしの髪をなんとかするべく
美容室を探す必要があった。
サムエルは、フーンと一言。
聞いておいての、その態度。
それじゃ!と言いながら
足早に馬車へと戻ってしまった。
・・・今のは何の確認だったのだ。
よく分からないままに
ユーリは、チェックインをし
美容室探しに出かけることにした。
今日の夕食は途中で見かけた
露天のデリカテッセンの惣菜を
ホテルに持ち込んで食べようと
固く決意した。
ユーリが宿屋に戻る頃にはすっかり遅くなってしまった。
しかし、髪の毛は自分でも弄りやすい長さと毛量になったし
ドレスに合わせた化粧品も買えた。
あと、パーティに持って行けるようなハンカチを
持ってくるのを忘れたので
それも調達した。
・・・それにしても
あの血管と瞳の色で似合うカラーを判断される
あの黒魔術みたいな手法。
流行っているのだろうか。
また、あまり食べると明日に差し障るので
ワインのハーフボトルと少々の惣菜を調達する。
ユーリは外食よりもデリカテッセンが好きであった。
久々の都会感あるホクホクとした幸福感を味わいながら
宿屋の部屋に戻ろうとすると
フロントの男性から声をかけられた。
「ローワン様、ロビーの方でお客様がお待ちです。」
「・・・?」
ユーリは何事かとロビーの方に行く。
そこには見慣れた人影、いやエルフの影が座っていた。
サムエルであった。
「君遅くない?」
遅いって、何も約束もしてないのに
遅いも何もないじゃないか・・・
と突っ込みたいが何も言わない。
「すみません、いかがいたしましたか?」
「帰り道だったから寄った。
・・・ああ、でももう買ってるんだね。」
サムエルはデリカテッセンの袋を見る。
もしかしたらサムエルは
夕食に誘ってくれているのか。
それなら何故、馬車で別れた時に言ってくれなかったのか!
「すみません、サムエルがまさか
いらっしゃるとは思わなかったので。」
・・・では帰れ、とはとても言えない。
「もしよろしかったらご一緒に・・・
まだお店空いてるみたいですし
足りないと思うのでもっと買ってきましょうか?」
デリカの袋を見せた。
「買いに行くのめんどくさいからそれでいいよ。」
「そうですか、では。」
ユーリは足りない気がするのだが、仕方ないと
部屋に向かい始めた。
「え?どこ行くの?」
サムエルが驚く。
「どこって、部屋へ・・・」
サムエルが大きなため息をついた。
半ば呆れたような顔を見せた。
「君ねえ!!
まあ君のことだし・・・
深い意味はないと思うけど。
いつも小羽屋ではそうだからな。
・・・でも宿屋の部屋に二人でとか
ちょっとは考えなよ。」
サムエルが目を合わせずに言った。
サムエルの言う通り
小羽屋の控え室で二人で過ごすことも多かったし
宿泊の部屋でと言うことも多々あったので
ユーリは本当にごく自然な流れで部屋でと
考えてしまったが
よく考えたら、確かにマズイ。
・・・流石に失礼であった。
「申し訳ありません。いつもの癖でつい。
そんなつもりは毛頭ございません。」
ユーリは慌てて頭を下げた。
サムエルは、席を立ってユーリの方に近づいてくる。
すると、ユーリの下げた頭を拳で軽くゴンと叩く。
「それに君、これ
自分の所でやられてた時ブチギレてたじゃないか。」
・・・ユーリはハッとした。
通常宿屋の部屋は2名様分のキャパシティであることが多いのだが
1名で使うには広いことが多い。
だからと言って1名で予約をしたのに
2名で入って良いわけがない。
この間、1名で予約してきて
6名で入ろうとしたお客様に
低姿勢にブチギレた所であったのだ。
「申し訳ありません・・・あの、本当に悪気は無くて・・・」
ユーリはフロントの方に向けて誤った。
「悪気もなくそうしてしまうお客様が多いのですよ。」
フロントの方は笑ってそういった。
自分がお客様になってみないと
こう言う心理はわからない。
やはり何事も経験が必要である。
「やっぱり君もどんどん他の宿屋に泊まってみるべきだよ。
あと、ここの宿屋の経営者と
こちらのフロントさんは顔馴染みだからね。」
と言って、フロントの男性の肩をガシッと組んだ。
「はい、いつもありがとうございます。」
フロントの男性は柔和に微笑んだ。
・・・王都に家があるのによく利用するって
どう言うことだ。
ユーリはフツフツと疑問が芽生えていたが
これを洗い始めるとキリがなさそうだったので
その疑問にはそっと蓋をした。
サムエルは続ける。
「その量だと、君と僕じゃ足りないだろ。
今日はもう遅くなったし、僕はもう戻るよ。
明日、また会おう。よく寝ておくんだよ。」
それだけ言うと
さっさと足早に去って行ってしまった。
・・・本当に何なんだったんだ。
AIさんと作りました。
ミンティングストリートの光景。
最近AIさん
精度が爆上がりしてますね。




