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0.7. 魔法使いユーリエ・ローワン

スコーピオン・エール、それがこのエール工房の名前らしい。


荷馬車に、商品のエールの樽

そして、ばーちゃんのために救援物資も必要だろ?

と、親方が生活用品や食料も一緒に積んでくれた。


温かい親方の人柄が伺える。

・・・先ほどあげた高級護符のせいでは無いはずだ。


ユーリはここで仕事の時間である。

仕事道具の杖を取り出した。


二頭の馬には、護符を貼り

馬車全体に防御魔法と隠密魔法をかけた。

ついでにエールを美味しく運べる魔法もかけた。


これで、大概の魔物には目視でも

魔力の探知でも見つけることすらできない・・・

物理、魔力の攻撃も通らない

よっぽどでなければ・・・と思う。


ついでに、美味しいエールが届けられる。

このついでの方が

ユーリには自信があった。


そして移動の間は魔法が切れないように

気にかけている必要は、ある。


そうして、馬車はリーブラックポートへと出発した。


イーシュトライン都市の壁と結界の外に出て

ものの数分で

小鬼(ゴブリン)が徘徊しているのをユーリ達は目撃した。


本来は倒すべきなのだが

申し訳ないと思いつつ

今はリーブラックポートへ行くことを最優先に考え

それらを見送ることにした。


隣にいるエミルが、ここ最近の動向を教えてくれた。


雷のゴンゴルドの動向は、ここ数ヶ月、冒険者たちによって

ほぼ明るみになっていた。


ゴンゴルドは、瀕死の傷を負っておりほぼ昏睡状態であったとのこと


そこで、手下の小鬼たちが闇の帝王の命を受け

ゴンゴルドを蘇生しようとしていた。


その蘇生はもうまもなく完了するであろうこと


1ヶ月前リトル・ウイング村に

イーシュトライン侯爵直々のご依頼で

アルト・ルーベンと言う騎士を中心とした冒険者の一行が入ったこと。


「アルト・ルーベンって

以前ゴンゴルドに、その瀕死の傷を負わせた冒険者だよね。

また倒しに来たってこと?」


ユーリはエミルに質問した。


「うん、アルト・ルーベンは元々王立軍所属の騎士みたいで

以前ゴンゴルドを倒したのも

名を上げるための腕試しって感じだったみたい。

トドメを刺しにきたんだろうね。

アルト・ルーベン自体は

大人しそうでいかにも育ちの良さそうな人だったなあ・・・

でもお供のパーティの連中は

何やらすごく派手な人たちだったよ。

ゴンゴルドを倒す自信もあるみたいだった。」


あ、別にアルト・ルーベンの話をしたいわけじゃないんだと

エミルは話を切り替える。


「とにかく俺が言いたいのは、アルト・ルーベンは

ゴンゴルドを確実に倒す算段があったってこと!

ついでに、村人の避難指示は、雷が鳴ったってのより前のことだよ!

君のおばあさんには会ってないけど、

一昨日、リーブラックポートで会った

リトルウィングのいとこがそう言っていた。

そのおじさんが情報の時系列を間違えてるんだよ。

だから君のお婆さんは大丈夫だと思うわけ。」


「そっか・・・」


ユーリは少々気が軽くなるのを覚えるのと同時に


人の話など、どうにも当てにならない。

近いうちに、情報流通などもっと正確に

早く張り巡らせられないものかと

ユーリはふわふわと考えていた。


今はエミルの話を信じて

荷馬車でガタゴトと揺られることにした。


「ところで、あのエールを美味しく運ぶ魔法って何?

そんなの学校で習うの?」


ユーリは理屈を教える。


「エールが美味しく運べる魔法というか

魔法でエールに宿る酒の精霊が逃げにくい環境を作るんだよ。

エールの精霊の肝はあの炭酸ガスね。

樽の周りに対物理結界を張って

水温が低い方が炭酸ガスは水に溶けやすいから

温度を下げて、揺らして帰化を促すのを止められれば

結果的に炭酸ガスが水から抜けないでしょ?

樽周りにに氷結魔法の幕を作って

エールの樽と馬車の設置面の間に

緩衝材みたいなものを噛ませる魔法をかけて

そうするとエールの精霊が・・・」


一通り説明を終える。

これは学校ではなく、魔法道具店(元バイト先)で得た知識である。


エミルはちょっと難しいねと言って


「魔法ってそんな理屈っぽい感じなんだね。

こう、美味しくなーれ!的な物ではないんだね。」


美味しくなーれって・・・

フッと無意識に鼻から笑いが吹き抜けた。


「それも不可能ではないけど、効き目が悪そうな魔法だね、それ。」


「効かなそうなんだ・・・」


エミルにはその差がよく理解できなかった様であった。

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