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71. 胸を張って

ユーリが王室主催のガーデンパーティーに出席する。


その知らせを聞いて喜んだのはまず、フィヨナお婆ちゃんであった。


「あなたはやっぱり、すごい子だわ・・・」

と言って、ユーリの頬を優しく撫でて

涙を浮かべていた。


フィヨナお婆ちゃんは大袈裟だとは思うが。

・・・悪い気はしなかった。


「きっと帽子着用よ。去年のガーデンパーティの記事がどこかにあったわ。

探してきてあげる。」


とてもありがたいアドバイスであった。


ザイカとモメラスにも店番のお願いをするに際し

これを伝えると

やはり二人とも自分のことのように喜んでくれた。


されど、今回のことは皆の功績なので

小羽屋代表として行くことを皆に約束した。


ハチも、すげえじゃねえか。

と一言、褒めてくれた。

・・・正直興味は無さそうだ。


ハチに聞いてみた。

「ケットシー王国にも王様がいるでしょ?どんな猫・・・様なの?」


ハチは、そうだな・・・と考え込む。


「デカくて強い、賢い。あと白いな。」


・・・確かに猫には重要な要素かもしれない。


サムエルはその日の晩も小羽屋に現れた。

そして、急に告げられた。


「僕は行けないよ?」


「・・・はい?」


「その日はエルフ本国の重要な会議があるんだよ。」


・・・はい?

それは諸々想定外であった。


一瞬で様々な事を思慮した。

まず、ユーリはこの様な

最上級も良いところのパーティに参加するのは初めてである。

しかも、何故そこに呼ばれたのか

功績は極秘で言うことができない。


そんな状況で、一人パーティーに参加しろと

このエルフは言っているのか?


サムエルの急展開はいつものことであるし

忙しい人であるのは知っている。

実際こんな時期だ

外交関係は、はちゃめちゃになっていると思う。

しかしだ・・・


「・・・あの、サムエル。」


ユーリはある考えに辿り着いた。


「そう言うことでしたら、私、参加を辞退したいです。」


サムエルは驚いた顔をした。

「え?どうして?」


少々言うことも阻まれるが

ここは素直に言うしかない。


「すみません、私が、そう言う場に慣れているとか

高貴な身分でしたら何の問題もないのですが。

しかも今回は何の根拠も提示出来ない状態です。

私一人で参加すると言うのは、ちょっと・・・」


ユーリは自分で言っていて

残念で情けない気持ちになってくる。


サムエルの顔を見ると

想像以上に、悩んでしまっていた。

珍しく、何と言って良いのか分からない

と言う顔をしていた。

頭をガシガシかきながら言う。


「いやでも、僕がいなくても出るべきだよ。」


サムエルは、さらに考えながら言う。


「このイベントコーディネーター

僕の知り合いだから、よく言っておくし。」


こう言う会にもイベントコーディネーターがいるのか。

ユーリはそこにも驚きを覚えるのだが

よく言っておく、とは

どう言うことなのか。

それが具体的に思い浮かばない。


サムエルは、なんとかするから!

と言って、その日は早々に

転移の鏡の向こう側へ行ってしまった。


ユーリはポツンと残された控え室で

更に情けない気持ちになっていた。


この世界では男女平等と言う風潮が盛んになり

かなりの時間が経っている。


今回の件は、聞く人が聞けば

男に連れてってもらわないと

そんな場にも行けないのかと

言う人がいる気がする。


しかし、ユーリとしてはそこに男とか女とか

そう言う問題は関係がなく


ただ、自身の様な芋人間が

そんなロイヤルな場所に

ほぼ何の根拠も無い状態で出てみようものなら

どうなるのか・・・


身分平等なんて、もうそれこそ

多種族連盟が結成されてすぐに

人間社会にも実施された。

男女平等より歴史は古いはずなのだが。


この得体の知れない不安は何だろう。


ユーリは宿の業務を全て閉め居住棟の方へ帰ってきた。

リビングの時計を見るとすでに23時になっていた。


いつも、宿の業務を終えて

サムエルと話をしているとこんな時間になる。

今日はまだ早い方だ。


しかし、今日はこの時間でも

フィヨナお婆ちゃんは起きていた。


お婆ちゃんは自らの膝のマッサージをしていた。

最近は立っているだけでも厳しいくらいの

膝の痛みに見舞われているらしい。


「あら、ユーリ、おかえりなさい。」


そう言うと、マッサージをやめて

何かを棚から取り出した。


「ユーリ、これ、ルミナス牧場のフェリクスさんが見つけてくれたのよ。

昨年のロイヤルオランジェリーガーデンパーティの写真!

この写真見て、やっぱり温室だから暖かそうね

でも皆、長袖のドレス着てるわよ。

やっぱり帽子も被ってるわ。

でも今の時代は・・・どうしたの?」


ユーリが浮かない顔をしているのに気がついたのだろう。


「うん、今回は辞退しようと思って・・・」


お婆ちゃんに全て自信の不安の種を話した。


作戦が極秘であったこと

サムエルは参加できないこと

自分にはこの高貴な場に参加できる身分も作法もないこと・・・


お婆ちゃんは静かにユーリの話を聞いていたが

全てを聴き終わった後

口を開いた。


「ごめんなさいね、私たちの身分については

もう、どう仕様も無いのだけれど。」


おばちゃんはユーリの手をとった。

ユーリはそこにフィヨナおばちゃんの

強い意志を感じた。


「それでも、行くべきです。

誰がなんと言うおうとも

誰が認めなくても

貴方は立派なことを成し遂げた。

これは、事実です。

あとね、本人は行けなくても

サムエルが作ってくれた機会なのよ。

それに行かないと言うのも

サムエルの顔を潰すことになるわ。」


ユーリもハッとした。

サムエルも、忙しい中で

無理やりセッテイングしてくれた事だったはずだ。

それを自身が恥をかきたく無い

と言う身勝手な理由で断るのは

非常に失礼だったと

ユーリも気がついた。


お婆ちゃんはまたにっこり笑って続けた。


「胸を張って行って。

いえ、行かなきゃダメですよ。」


と言って、ユーリの手を離し

徐に、奥の引き出しから

封筒を持ってきた。


それをユーリに手渡す。


中を見ると、ユーリも驚くくらいの

まとまった札束が入っているのである。


「・・・お婆ちゃん?これ何?」


「へそくりよ。」


へそくりなの・・・?


「これで、ちゃんとしたお洋服を買ってきなさい。

悲しいけれど、見た目は人の印象を100パーセント操作するわ。

9割じゃない、100パーセントよ。

中身が凄い人って分かっても

綺麗な凄い人か、綺麗じゃ無い凄い人に

また分かれるのよ。

だったらせめて綺麗な凄い人になれる可能性は

捨てては行けないわ!」


・・・極論すぎて!

ユーリもお婆ちゃんが本当にそう思っているのか

わからないのだが

先ほどまでの嫌な気持ちが消えて

笑いが込み上げてくるのが分かった。


ユーリは明日、サムエルに

ぜひ参加させていただきたいと言う、決意をした。


ありがたくも、お婆ちゃんのへそくりは

多分、このガーデンパーティに見合う様な

有名ブランドの

ドレス、帽子、靴、アクセサリー

一式が買える金額であった。

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