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70. 招待状

「一週間後に人間国王主催の外交パーティー行くよ。」


サムエルは

オーガの御一行が王都に到着したとの報道があってから

約一週間ぶりに転移の鏡から現れた。


「大変ですね。お疲れ様です。」


ユーリは手を止めずに、いつもの定型分を述べる。

控え室で縫い物をしていたところだった。

使っていた髪留めの赤いリボンが

気がついた時には盛大に破けてしまったのである。


実の母からもらったもので

日々つけたり、つけなかったりしていたのだったが

これが思っていた以上にしっかりとした作りで

修復に手間取っていたのだった。


オーガの御一行様が停戦合意の書に調印されてから

彼らは様々な行事に参加され

シュンテン閣下のお美しさ

ザラストル閣下のお人柄の良さを

散々新聞で読んでいた。


例えば、小羽屋の後、オーガ様御一行は

イーシュトラン侯爵邸の昼食に招かれたらしく

その様子が新聞に掲載されていた。


・・・ということは、あの宴会はその直後だったというわけだ。


勇者、王立軍の騎士アルト・ルーベンも

何ならザラストルと

ニコニコ握手している様が新聞に出ていた。


全員、雷のゴンゴルドのことを

忘れているのでは無いか?と

また複雑な感情が芽生えるのを覚えた。


そして、サムエルもそれらの行事

また、その他の行事にも

とてつもなく関わっているのだろうと

ユーリは合点していたのだったが。


来週は人間国王主催パーティか。

大変ですね・・・っと。


「わかってる?君が行くんだよ!」


サムエルがグッとユーリに近づいた。


ユーリはようやく針を止め

サムエルをまじまじと見返した。


「はい?」

聞き間違いか?


ユーリのきょとんとした

何も分かっていない顔を認めると

サムエルはニヤッとして、ポケットから

白い封筒を態とらしい恭しさで渡してきた。


封筒の蝋印には人間王国の紋章

平和の象徴とされる麦の稲穂とハトが刻まれていた。


慎重に封筒を開け、中の手紙を見ると

また、目に飛び込んでくるのは

大きく、金箔で描かれた

人間王国の紋章。


その下に美しい手書きの文字が書いてあった。


_________________

国王皇后両陛下には来る12月x日

宮殿外苑において御催しの

冬のロイヤルオランジェリーパーティに

お招きになりますのでご案内申し上げます。

第7代ワイスモント侯爵


ユーリエ・ローワン殿

_________________


・・・何か変な文章だ。

国王陛下が何かするときは

尊敬語に謙遜語、また尊敬語を重ねて

こう表現せざるを得ないのだろうが。


冬のロイヤルオランジェリーパーティとは

毎年恒例行われている。

王都郊外にあるレイルロード宮殿

王室の皆様が冬に訪れる離宮であるのだが


ここの外苑にあるロイヤルオランジェリーに植えられた

オレンジやレモン、ザクロの木が一年中身を結び

その技術力の進歩を祝する会を開いたのが

始まりであるとされている。


結局はオランジェリーの様々な植物を愛でる

という趣旨のガーデンパーティであるが

諸国の外交官や、時の人々が集められ。

公式な外交の場になっている。


と言う話は有名である。


そして、ワイスモント侯爵

この方は国王陛下側近として有名な方である。


そして、その下の名前は・・・


「・・・ユーリエ・ローワン?」


「だから、君が行くんだよ!」


何度目を擦っても自分の名前が書いてある。

まさか、ご招待を受けているのは

私自身だと言うのか。


信じられない、と言う顔でサムエルを見る。


「あ、あの・・・今回の使節団の皆様については

極秘なんですよね?」


ユーリの出生や、地域住民の心情への配慮から

今回の滞在はそうなっているはずだ。


「でも、これだけの事を君はやったんだからさ

トップから認めてもらわなきゃ

割に合わないじゃないか!

今回は、正式な功績は周りには言えないけど

この招待状があるだけで相当価値があるからね。」


と言って、サムエルはものすごくドヤ顔をしてた。


ユーリは全くピンと来ていなかった。

ものすごく名誉なことだ。それは間違いが無い。

だからこれだけはまずサムエルに言わねばならない。


「あの、サムエル、本当にありがとうございます。

私ではどうしたって、こんな会に参加などできません。」


「でも君の今回の働きはそれに相当するからね!」


サムエルは当然だと言わんばかりにまたドヤ顔をする。


そして、ユーリは

今この王室主催のパーティに参加する

と言う現実を受け止めた今

最も気になる、目先の問題に気がついた。


「王都へは転移の鏡を使わせて頂けませんでしょうか、

あまりここを長く離れるわけにはいきませんし。」


なにしろ王都まで片道3日間もかかる。


「それは構わないけどさ・・・」


サムエルは何かが引っかかった顔をした。


「折角なんだから、ここは人に任せて

ちょっと長居して王都の空気味わいなよ。

宿の運営のヒントは、何も宿(うち)の中だけにあるわけじゃ無いんだからね。」


サムエルがまた偉そうな顔をする。

ユーリのサッと行ってサッと帰ってこよう。

という魂胆が見えたのかもしれない。


ユーリはまた考えこむ。


「後、あの、一つお伺いしたいのですが。」


「何?」


「・・・私、何着ていけば良いんですか?」


ユーリは招待状から目を話せずに聞いた。

リトルウィングが田舎すぎて

パーティーに行くと言う概念がなかった。

そして今ユーリはほとんど服を持っていなかった。

しかも一週間後と来ている。

何より今はそこが気になってしまった。


「まあ僕はエルフ国の装いがあるから・・・」


・・・ダメだこのエルフ。

ユーリは咄嗟に絶望した。

微妙に話が噛み合っていない。

何故今サムエルは自分の話をした?

私のことを聞いているのに。

と言うか、実はサムエルも分かってないのではないだろうか。


この一週間で諸々の手配をせねばなるまい。

ザイカに店番を任せて。


サムエルはどうやら当てにならないので

マナー本を買わねばならない。

・・・王室主催のパーティに招待された場合のマナー本なんて売ってるか?


そして、やはり一番しなければならないことは

パーティー用のドレスを買いに行くことである。


ユーリにまた新たな特大ミッションが課せられてしまった。

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