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66. 結界の中

食後の歓談を終えた後

翌日も早いのでということで、食後はすぐに解散になった。

時間は午後8時過ぎである。


あと1時間で湯浴みができなくなると伝えたので

皆様早々に屋上の温泉に行かれたのでは無いかと思われる。


イーシュトライン侯爵側近と

サムエルは一歳口にしなかったが


オーガの皆様は、一人1本はワインを召し上がっていた。

しかも、少しも酔っている気配が無い。


オーガにとってワインは水

と言う噂は本当であったのだと

空き瓶をまとめている最中に実感した。


サムエルとユーリは厨房で

黙々と片付けをしていた。


お皿は一人でに動くスポンジによって

どんどん洗われていく。

ヒーロも姿は見えないが

掃除をしてくれているのだ。


モメラスとザイカには

賄いを食べてもらいつつ

休憩に入ってもらっている。


そこへ、ハチが

スッと厨房に入ってきた。

「皆様、間違いなく部屋に入った。」

時間は午後10:00であった。


サムエルとユーリは皿洗いをピタッと止めた。

ヒーロの皿洗いも止まった。


「それじゃあユーリ、確認ね。

まず、この厨房の勝手口の内と外で結界を張る。」

手を洗いながらサムエルは言う。


「結界を張ったら、まず各室にお客様が全員いらっしゃるのを確認します。

もし、誰か一人でもいらっしゃらなかったら

直ちに結界を解除し、サムエルに伝えます。」

ユーリは手をタオルで拭う。


共同で時空遮絶結界を張る段取り確認だ。


「そうだね」


「明日の朝7:00に君が結界を解除する。」


その手筈だ。


「朝7:05を過ぎても決壊が解除されなかったら僕が解除する。」


「はい」

何度もそういった練習をした。


「お互い緊急だと判断した場合は結界を解除する。

だから、君と僕はこの勝手口の警戒を怠らない。」


「はい。」


他に何かあったかな・・・と思慮するが

もう何も思い浮かばなかった。


いよいよ、時空遮絶結界を張る時だ。

この時のために何度ユーリは

鼻血を出したことか・・・

非常に感慨深かった。


そして

ユーリは小羽屋厨房の勝手口の内側

サムエルはその外側に立って


呪文詠唱を始めた。


魔法陣が発動し始めると

サムエルの顔がピントが合わなくなる様に歪み始め

やがてはその景色ごと何も見えなくなった。


呪文詠唱を終えると

周辺からは音も気配も何もしない。

"無"の中に入れられたような気分になる。


これでこの小羽屋の建物は

元いた世界とは全くの異次元にやってきたのである。


本当に幾度となく練習したので

これ自体は特に全く何も思わなくなってしまった。


さて、段取り通り行動せねば。

中に人がいるかの確認と言っても

見張のような言動をしては失礼だ。


一応、安眠に良いと言うお茶をお持ちしつつの訪問だ。


最初に、上階のシュンテン閣下の部屋を

扉をノックする。


はい、と扉が開くと

美しい、シュンテン閣下が

ふわふわとした白い部屋を見に纏い、登場した。


今回オーガのお客様を受け入れるとのことだったので

イーシュトラインの仕立て屋に行って

態々、特大サイズの部屋着を5着特注していたのだ。

しかも一応、王都でも好まれる

オーガニックコットンのブランドのものを選んだ。

サムエルの推薦ブランドでもあった。


想定よりシュンテン様が小柄であったので

オーバーサイズであったが

帰って、その可愛らしいお姿に

ユーリもクラクラしそうであった。


この人は本当にオーガなのだろうか・・・


「皆様の安全のために

結界を張らせていただいたことをお知らせします。

お外には出らませんので、ご注意ください。

こちら、ルミナス地方特産のクワンリリーティーです。

安眠効果もあるとのことですので

ぜひお召し上がりください。」


シュンテン閣下は、ニコリとし

ありがとう、頼みましたよ。

と言いながら、後ろから出てきた

夫のタミー様がお茶を受け取る。


「あの、支配人さん、わがままを聞いてくださるかしら?」

シュンテン閣下が言いずらそうに聞いてきた。


「はい、如何致しましたか?」


・・・何事か。


「私、とても疲れてしまって。

明日の出発を遅くできないかしら。

もし、よければ、朝食の時間を8時にして

9時に出発したいの。ダメ?」


と言って、ユーリの手をキュッととった。


はい、喜んでーー!!


ユーリは心の中で首をプルプル横に振った。


危ない

何も考えずにそう答えそうになる所だった。


・・・理性的に考えれば、要相談事項だ。


「承知しました。一度警備の者に確認します。

また、改めてお伺いします。」


「お願いね。」


と、シュンテン閣下はニコッと笑うと

部屋に引っ込んだ。


・・・ユーリはしばし思考した。

結界の解除時間もあるので

一度決壊を解除し、サムエルに伝えたほうが良い。

イーシュトライン侯爵側近にもその旨了解を得て


ユーリは勝手口を開ける。

その向こうは暗黒物質(ダークマター)が広がっている。


決壊解除の呪文詠唱をする。

するとだんだんピントが合ってくるかの様に

元の小羽屋の景色が現れ始め

臨戦体制で身構えているサムエルが現れた。


サムエルは酷く驚いた顔をした。


「何かあった!?」


「・・・あ、そこまでの問題ではありません。

ずっとそこにいたんですか?」


「そりゃそうだよ!」


外は寒いだろうに。

この時期は0℃近く冷える。


「シュンテン閣下が、出発の時間を遅らせたいとおっしゃってます。

酷くお疲れみたいです。

午後9時にこの結界を解除します。

それが確認できなければ

その5分後に、結界の解除をお願いできますか?」


サムエルはそれを聞くと、気の抜けた顔をした


「わかった、良いと思うよ。

各自そう伝える。ダメだったら

また僕が解除して伝えるから。」


少々お待ちくださいと

ユーリは、また物理結界を軽くテントの形に貼り

部屋の奥から毛布と火鉢を持ってきた。


「まだこの炭使えますから、お体温めてくださいね。」

炭を火鉢に移しながらユーリはいう。


サムエルはその火鉢をじっと見つめていた。


「・・・ありがと。それじゃまた結界の張り直しだ。

君、回復ポーション大丈夫だね?」


「はい!」

まだたんとあるし

自分の限界回数もまだまだ余裕がある。

最近では、鍛えられたとさえ思っていて

最初はポーション7本目で限界が来ていたが

今は10本分は行ける様になったのだ。


また改めて結界が張り直された。


チェックアウトが遅くなる旨をそれぞれに伝え

お茶も全員に配り終え

なんとかここに、ある意味オーガの皆様を

閉じ込めることに成功したことがわかった。


ユーリはフーッと息をつき

また改めて

カウンターの椅子に腰掛けた。


イーシュトライン侯爵側近、ザイカ、モメラスは

空室で待機してくれているはずだ。

ハチは廊下をパトロールしてくれているだろうか。


ヒーロも、どことなく周回してくれているはずだ。


ユーリはしばらく座っていると

疲労と若干の安堵感からか

とてつも無い眠気を覚えた。

ここは、絶対に寝るわけには行かないので

不眠のポーションを一気飲みした。


回復ポーションに、不眠ポーション

こりゃ、宿屋も商売あがったりですわ・・・

などと不毛な一人ツッコミをした直後


宿泊棟に続く廊下に大きな人影を見た。

一瞬モメラスか?と思ったが

明らかにモメラスよりも大きな影である。


アーチ上になった廊下部分を潜るようにして


それは姿を現した。


小羽屋の食堂の天井が4mある。

それよりは少々ゆとりのある身長・・・3メートルくらいありそうだ。

筋肉質なゴリゴリの体つき

全体的にどす赤い肌色

顔の堀は深く、パーツパーツがとても大きい。

特に目は、独特の輝きを放っており

口からは立派な犬歯が見える。

艶の無いマットな黒髪は肩まで伸びている。

そして、頭の両脇から

水牛の様に生えた二本の角。


・・・絵に描いたような人喰い鬼(オーガ)

目の前に現れたのである。

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