表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/129

63. シュミレーション

その後一通りマリーン先生は

アイスフィッシュの釣りを楽しみ

ちゃっかり持参してきた横笛で

ユーリのツインコルダ、クラウド様のブズーキ

サムエルの舞踏とのセッションを楽しんでいた。


・・・イーシュトライン侯爵側近は

侯爵と違って、楽器を嗜まなかったので

見ているだけであったが。


「今度はゼミ生と合宿とか

私自身、籠って研究したいから

また相談させてくれ。」


帰る間際ニコニコと約束してくれ

満足げに帰っていった。

ユーリとしても

非常にありがたいお申し出であった。


それにしても

釣りの際に雪がちらついてきたので

「いいかい、対物理結界はこう言う時に使うんだよ。」

と言いながら

サクッと、テント状の対物理結界を出現させていたのは

かなり印象的であった。


本当に面白いお人である。


マリーン先生が帰った、数日後。

オーガの使節団は既に北の地を出発したと聞く。

ここへは高速馬車を使って後3日ほどで到着するとのことである。


あの後

例の時空遮絶結界の運用を護衛メンバーで

何度もシュミレーションした。


時空遮絶結界と

生態系生成装置(バイオドーム)による空間は

非常に特殊であった。


イーシュトライン一の魔法使い

クラウド様ですら


「噂には聞いてたけど、すごいなこれ。

魔除の大結界とは違って

建物ごと異世界に飛ばされて

この"場"から消えるんだな。

無いものは無いから

探知も出来ないし

外から破ることもできない。

攻撃もできない。

中は中で、術者を無視して結界を壊そうとすれば

そのまま異次元に取り残される可能性があるから

壊すのは得策じゃないとすぐに分かる。」


すごい、すごい・・・

と唸っている。


ヒーロにも話を聞いたところ

「外部とのやりとりが本当に一歳できないのですわ。

光も、音も、振動も何も感じなくなります。

初めての感覚です。」

と戸惑っていた。

そして、興味深いことに


「この小羽屋の建物自体が

一つの世界に凝縮された様に思いますわ。

その分、私の力が強くなる気がします・・・」


との見立てであった。

ここに思わぬ化学反応が起きたようだ。


ハチにも感想を聞いてみた。


「結界を破る事はできないが

行き来しろと言うことなら

・・・出来なくはないかもな。」


「そうなの?」

ユーリはまた驚いた。


「猫に限って言えばな。

それ以外の奴は知らねえ。

抜け道が見つかれば出来る。

だがそもそも、異次元を経由するんだろ?

その時点でリスクが高いな。

そんなこと

どんなに上等な飯が食えてもやらねえ。

猫はみんなそう思うはずだ。」


・・・猫って無敵なの?

と、ユーリは感心してしまった。


「じゃあ、後学のためにもさ

試しに行き来して見て欲しいんだけど・・・」


と頼んでみた。

単なる好奇心である。


しかし、ハチは聞こえなかったとでも言うように

その言動を無視して

本日のパトロールに出かけてしまった。


果たしてハチの言うことは本当なのだろうか。


しかし、ヒーロの方は言う通り。

何も外から供給がなくなる。

当然、温泉、水の供給もされなくなる。

一番の問題はそこであった。


温泉は該当の時間帯は諦めていただくにしろ

流石に宿泊施設として

お客様の滞在中断水しますなどということは出来ない。


そこはザイカが解決してくれることとなる。


「精霊達が外に出られなくなるみたいだ。

普通はそれだけで精霊達は段々と消えていくはずだけど

なんだろう、無理やり中で循環させられてるから消えないらしい。」


モメラスは興味深く周りを見渡す。

バイオドームのせいなのだろう。


「この場にいる精霊が限定されるから

オーガ達の様子を探るだけならやり易いかも。

その代わり水を生成する系の魔法はやめた方が良い。

予め中に水を溜めておいた方が早いね。」


とのことであった。


「貯水タンク作ろうか?1日分くらいなら賄えるよ。」

と言うのはザイカであった。


「できるの?」


「問題はタンクより配水と排水だよね。特に排水。

12時間くらいなら

しかも夜だし大丈夫かな・・・?」


「排水は大丈夫だよ。そう思って浄化槽まで結界の中に入れたから。」


・・・何か一つ仕組みを変えると

細かい問題がたくさん出てくる。

ユーリは小羽屋の運営を初めて

嫌と言うほど味わってきた。


指をパチン!と鳴らせば

ハイ!全部上手くいきました!

めでたしめでたし〜!


と言う魔法の様な魔法は

存在しない。


「もし、外で何かが起こった場合

15時間は中と干渉が出来ないと言うことになるのです。」

ユーリはまた気がついた。


サムエルと話をしていて気がついたことだ。


まず、実際この結界を発動させるのは

オーガたちがチェックインする予定の午後7時から

チェックアウト予定の午前7時

12時間である。

空間の中では、魔法を用いないアナログな時計であれば

正常に動くことがわかったので

ユーリが時間を見て発動と解除を行う。


ユーリとサムエルは結界を張った状態で

転移の鏡も試してみた。

結界が発動している時

サムエル自宅から小羽屋への転移が

一歳できなくなった。


「この結界の内と外だと転移系の魔法も一歳通じないだろうね。

結界の中の次元は、今ここの世界と理が違うんだ。

バイオドームの内側だけで

この世界と同じ仕組みの動きができるんだ。」


マリーン先生のこの二重構造の結界を

サムエルも酷く感心していた。


この時空遮絶魔法陣は

15時間経つと自然と解除される仕組みになっていた。

しかし、何かあった時のためには

それを待ってるのもいかがなものかと考えた。


「・・・誰か外で待機してた方が良さそうだね。

と言うか、こうなるとオーガたちが出てって

村人に悪さするのは不可能じゃないか。

ハチは結界を解除できないだろ。

中の安全のためにハチが中にいた方が良いくらいだ。」


サムエルは配置換えを提案した。

一同それに賛成であった。

結局のところサムエルとクラウド様は

周囲警戒のため外で待機することになった。

結界の中は、テイムした使役動物の意識も入らなくなるらしい。


この結界を外から解除する方法があるか

もう一度マリーン先生に問い合わせたところ


「条件を加えて、発動者を2人に設定すれば良い。」


とのことであった。

やはり何にでも解決策はあるものだ。


話し合いの結果、もう1人の発動者をサムエルとし

もし午前7時5分を過ぎても結界が解除されなかったら

サムエルが解除する、と言う事になった。


マリーン先生は言っていた。

"そこに名器の横笛があったとして、あなたにはそれを美しく奏でられるのか?”


ユーリも大枠はその意見に同意するが


特定の才能、技能が無いと出来ない

と言う物は、運用がしずらい。

この小羽屋で思い知ったことだ。


しかしながら

ああ言っていたマリーン先生でさえも

それを理解しているかの様に

この魔法陣は実未熟なユーリでも運用がしやすいものであった。


本当に複雑な先生である。


様々なことを反芻しながら

今ユーリは、小羽屋の控え室で1人。

様々なシチュエーションを想定していた。


中で全員が襲われた場合

・・・総力戦にするしかない。激化する前に一度結界を解除するべきであろう。


テロリストが予め潜伏していた場合

・・これは起こらない様に結界を張る前にヒーロとハチに綿密に巡回してもらおう。


情報が漏れていて村でテロがあった場合

・・・絶対に起こらない様にクラウド様が使い魔を使役して周囲警戒。

   起きてしまったら、転移の巻物でイーシュトライン侯爵が抱える

   機動隊が来る手筈になっている。


中で怪我人が現れた場合は

・・・回復ポーションを用意しまくろう。


加えて、夕食の準備だ。


その後皆で話し合って

酒宴は止めにして、夕食と朝食の提供のみ

と言うことになった。


様々な文字通りの、酒池肉林を

味わった事があるであろうオーガの皆様が


一体何を好むのかなどユーリは全く想像できないし

そもそも、凝った料理など到底作れない。


ただモメラスから

オーガは大食であるとう話は聞いた。


そして、ユーリは、少なくともリトルウイング独特の

新鮮な素材を集めることだけは出来た。


ルミナス牧場のフェリクス爺ちゃんが狩ってきた鹿肉と

様々な野菜

ブイヨン、赤ワイン、香辛料を煮込んだシチュー。


先の収穫祭にて提供したものだが

これを小さめの鍋に入れて

"ルミナス猟師風鹿肉の赤ワイン煮込み"

と名付けて提供する案を

サムエルは提案してくれた。


確かにこれが伝統料理ですと言われば

納得せざるを得ない気がしてきた。


これをオーガ5名分と

食事を共にする、イーシュトライン侯爵側近、クラウド、サムエル

合計8名分用意する。


大食のイメージもつかないので

とにかく多めに用意することにした。


何度も何度もあらゆる想定を行う。


ユーリは自身の脳内では


幾度となく


小羽屋がテロリストに爆破されかけ


自身がオーガに殺されかけ


誰か、仲間が死に


シチューが不味いと食が進まないオーガが現れたが


それを阻止するべく、何通りも

自分の行動パターンを想定した。

そういう夢すら見る様になってしまっていた。


そしていよいよ明日

オーガの使節団が

小羽屋にチェックインする日を迎える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ